活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

アメリカの印刷産業、さて、日本は

2016-02-21 16:21:53 | 活版印刷のふるさと紀行

  たまには少し硬いお勉強といきましょう。といっても、先週の印刷図書館クラブの例会席上、メンバーの竹原 悟さんがレクチュアーされたアメリカPIAのR・H・デイビス博士の『最新の経済と印刷産業の展望』と題する論文を基調にしてのものとご承知してください。

 昨年、2015年アメリカの印刷産業の年間成長率は2.2%で向かい風の経済の中ではまあまあだったようです。それでは今年はどうかというと、減速経済下にあっても着実な成長は見られるという予測でした。

 ここで面白かったのは、博士の論文に「印刷は景気後退に先行し、回復には遅行する」とあったことに出席者全員から日本でも全く同じだと期せずして声が上がったことです。それにしては?日本はよくないぞ。

 2015年のアメリカの印刷業は製造業の18業種の中で・出荷額の成長性・新規受注・生産の成長性・雇用の成長性という4つの成長分野でトップだったとあります。また、印刷物の輸出が第2位だったとも。

 どうやらその原因はアメリカではGDPに追随するロジスティック用、パゥケージ用印刷物、ラベル、包装紙などが好調でデジタルメディアとの競合にさらされているとはいえ商業印刷物も書籍さえも元喜を取り戻しつつあるのがトップの座におさまることができた理由のようです。また、印刷の好調の理由の一つにアメリカ経済が成熟した回復期にり、印刷産業の成長率がGDPを超える時期、Sweetspotに当たっているからだというのでした。

 さて、ひるがえって日本の印刷業ですが、アメリカほど集約された統計がありません。したがって日米の対比はむずかしいのですが、少なくとも製造業の成長分野でトップを誇るような数字にはなりません。先日発表された日本のGDPは残念な数字でした。GDPに追随しているのでしょうか。

 竹原さんのレクチュアのまとめは・結果だけを追うな ・前提条件がことなれば、結果は違ってくる ・考え方を学ぶ ・日本でIT/ICT/IOT時代の経済と印刷産業出荷額との相関を探す研究が必要とありました。



  

 



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

南蛮船のガレオンとナウ

2016-02-20 10:04:02 | 活版印刷のふるさと紀行

 私が「たばこと塩の博物館」で出会った思いがけない展示物というのは南蛮船の模型でした。

 フランシスコ会の修道士ヘロニモ・デ・ヘススが病床の徳川家康にたばこやたばこの種を贈ったのが1601年と記録されていますし、日本への渡来は別にしてもスペインやポルトガルの「南蛮船」が」たばこの流通をになった関係から「たばこと塩の博物館」に「南蛮船」が展示されているのは何の不思議もありません。

 模型はスペインのガレオン船でした。大航海時代から19世紀の鉄製の蒸気船の出現まで大活躍したのがガレオン船で、日本でも徳川家康の命でウィリアム・アダムスが遭難したフィリピン総督帰国用に造ったのがガレオン船でしたし、伊達政宗が派遣した慶長遣欧使節の乗り組んだのも仙台製のガレオン船でした。

 しかし、私は個人的にはガレオンよりも先輩格のナウ船に親しみを持っています。これはキャラック船とかカラック船とも呼ばれていますが、天正少年使節が1582年にローマめざして旅立ったのも、1590年活版印刷機をリスボンから積み込んで日本に向かったのもナウ船でした。長い航海中、彼らの喜怒哀楽がナウ船のなかでどのように繰り広げられたのかを想像するのが執筆時の楽しみでした。

 ヴァスコ・ダ・ガーマのインド航路開拓もコロンブスの新大陸発見もビクトリア号の世界一周も日本に宣教師や南蛮文化をもたらしたのもナウ船でした。ところで、いま、はやりのクイズの設問を思いつきました。織田信長・豊臣秀吉・徳川家康は「喫煙者」だったでしょうか?。おそらく、三人ともNOでしょう。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

晩冬のスカイツリーの下、「たばこと塩の博物館」の話

2016-02-19 17:27:47 | 活版印刷のふるさと紀行

 今月の神田川大曲塾の見学会は墨田区横川の「たばこと塩の博物館」だった。それこそ、スカイツリーの足もとも足もと。雲ひとつない青空にスカイツリーのシルバー塗装が映えて東京タワー派の私もしばしウットリ。

 学芸員の茨木 愛さんのレクチュアーを受けながら特別展のー隅田川をめぐる文化と産業ー浮世絵と写真でみる江戸・東京を拝観した次第です。数年前、江戸東京博物館で特別展「隅田川」を見ましたが、今回の広重や国芳や豊国の作品は「たばこと塩の博物館」所蔵のものだから興味深かった。

 それにしても隅田川が大川と呼ばれて江戸市民はもちろん、どれだけ多くの浮世絵作家の創作欲をかきたてたことかと改めて感じ入ったのでした。それと驚いたことに塾生のみなさんが浮世絵を見ながら、しきりにこれは隅田川を西から描いたものとか、これは東から描いたものとかカンカンガクガクやっているのを聞くのもおもしろかった。

 当方はというと両国橋の上から花火を見上げる群衆のひとりひとりを「どうして、こんなに丹念に描けるものか」と感心しているのだから情けなかった。この特別展は3月21日まで。

 渋谷にあった「たばこと塩の博物館」がここへ移転したのは昨年2015年の4月ということですのでまだ、1年も経っていませんが、スペースが広くなり、館内がきれいで、常設展の方の塩やたばこのブースの充実ぶりもすばらしいので、ぜひ、一度おでかけあれとお勧めする次第。そのたばこブースで思わぬ展示物に出くわしたことは次回。

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

page2016を見る

2016-02-07 12:47:00 | 活版印刷のふるさと紀行

 2月5日、サンシャインシティ 文化会館のpage2016の最終日にかけこみました。

今年のテーマは「未来を創る」とあり、メディアビジネスの可能性を拡げるとありました。いずれもアタマに「印刷ビジネスの」を付け加えて主催者の真意をくみとるべきでしょうが正直いって「はたして?」と半信半疑で帰ってきたというのが正直なところです。

 たしか昨年のテーマが「変わるニーズ、変わるビジネス」でしたから印刷ビジネスで未来を創るためにはの処方箋を狙っているのでありましょう。会場は満員、どのブースでも熱心な質疑が交わされておりました。いつまでも活版印刷文化の郷愁にひたり、DTP時代の揺籃期に印刷ビジネスと縁がなくなった私には理解しがたいブースがたくさんありましたが、わかる範囲でいうならば今年もますます多様なフォント(文字書体)に接することができたのは収穫でした。

 もっともそれがwebフォントやデジタルパブリッシングをねらったものであったり、いろいろな業界での使用を考えたライセンンスものであったりするのが私にはさみしいのです。先日の日比谷の祖父江展で見たコズフィッシュの場合のような紙の上のフォント展開だとうれしくなるような旧印刷人では未来は創れそうにありません。やはり、怠けていないでJAGATのカンファレンス・セミナーをきくべきだったと反省しきりでした。


 


 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

二木 隆さんの漢詩の本、羽田野麻吏さんのルリユール

2016-02-06 12:08:52 | 活版印刷のふるさと紀行

 このところ東京も雪が降るとか降らないとか予報が大揺れですが、暦の方は「立春」、店頭でフキノトウや菜の花を見つけてつい、うれしくなって手を出してしまいました。

 うれしくなったといえばこんなことがありました。

 ひとつは学士会館で先週行われた二木 隆さんの『漢詩と花と』の出版記念のパーティ、集まった方は二木さんがドクターだからほとんどが医療関係者。その方々がこぞっていわれていたように、『漢詩と花と』は素人ばなれした見事な本でした。

 まず、造本、A4判布クロースに署名が金箔押し、それに無地のソフトケース入り。最近ではなかなか見られない本格的な上製本、その堂々たる風格に脱帽しました。そして、肝心な中身が、また類例がないほどの凝りようでした。見開きの右ページ上段に隷書で漢詩が一編、そして下段にカラーの花の日本画。いずれも著者が丹精込め、集中して制作した力作。そして左ページ上段に右ページの漢詩を日本語の読み下し文にして著者がこれまた、流麗な漢字で配し、

その下段には漢詩に関連した随想が組んであるという構成。             

 隷書で書かれた漢詩の迫力、その下の日本画の花の可憐な美しさと色合い、添えられている随のも著者の漢詩はもちろんご自身の人生感をしみじみ伝えてくれるようで心打たれます。編集者でも思いつかないような実に心憎い本作りに敬意を抱きました。「やられたー」です。さらに驚いたのは、その翌々日、同じ二木さんの8回目のテノール独唱会に招かれたことです。

 週刊誌に日本の名医として登場するお医者さんでありながらこの才能のほとばしり、それを目の当たりにして「こんな方もいるのだ」と、つい、うれしくなってしまいました。

 もうひとつ、うれしかったのは恵比寿のLIBRAIRIE6で観た羽田野麻吏さんの「サトゥルヌスの書物」展であろました。

 展覧会のメイン、羽田野さんならではのルリユール(工芸製本)作品の見事はさは別にして、私がうれしかったのは、書名にちなんだ鉛活字をこっそり内部にひそめた、ルリユールには関係はありそうではありますが、いわばお遊びの出品作のあれこれでした。実物をご覧いただかなくてはわかりませんが、そのユニークさ、洒脱さ、エスプリにこれまた、脱帽でした。

 そうそう、フキノトウはちょっぴり苦くとも「春近し」うれしい味でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする