現役最年長棋士、杉内寿子八段(91)が、溝上九段に勝利した碁です。
杉内八段の白番です。
白は、黒7のツケに手抜きで左上をハサミました。左上の状況によって、右下の打ち方を
決めようという戦術ですが、こうした様子見的な打ち方は、AIがよくする打ち方です。
参考図1
左上がこうした定石になれば、白は6と押さえてゆっくり打ちます。コミがかり作戦です。
参考図2
左上がこのような変化なら、ナダレていって、下辺・左辺を重視する打ち方をするのでしょう。
参考図3
黒は9と背後からせまりました。これは、白にピッタリした手はないでしょう、とする意地悪な手です。
さえぎるのは、2に受けるとなると、黒から6のカケがきます。このカケがあるので、黒は態度を大きく
することが出来るのです。
参考図4
白はツケノビを選び、黒を渡らせることにしました。ちなみに黒はツケで渡ることはできません。参考図4
スベリでも黒が渡ったのでは、黒良しかと思っていたのですが、実は薄くて、白はそれを狙っていました。
実戦図1
この割り打ちは、地は黒が多いので、戦いにならなければ黒がいいです、という手です。
実戦図2
局面は進んで、黒が利かしにいったところです。
実戦図3
しかし白は反発。2と入らせて大丈夫か?とアマチュアは思うところです。
参考図5
黒が下辺を守った後、白はツケコシ(参考図5の黒1の上)を決行。1とさえぎると、2の両ヅケを打たれます。
これは上側の黒が丸取られでいけません。実戦のように譲歩するしかなさそうですが、白はこの手を狙っていました。
ここが黒薄いので、白は反発出来たのです。
その後、白60と黒の薄みを突き、62・64とゴリゴリとやっていき、66と突き抜くことになりました。
突き抜いては、LeelaZeroの勝率も10%近く上昇するくらい優勢になりました。
86からの攻めは圧巻です。
この碁を並べてみると、碁が若いです。
病は気から、といいますが、若さも気から、と思わせる内容でした。