今回の話は『間違いだらけの物理概念』丸善(1993)の「質量概念の落とし穴」を参考にしています。以下、ベクトル量は太字で表し、スカラー量は通常の文字で表します。
まず運動量を次の式で定義します。このベクトルはローレンツ変換でxと同じように変換します。
p=m(dx/dτ) --- 式1a
=m(dx/dt)γ --- 式1b)
ただし、mは運動する質点の質量、tは静止系での時間、xは静止系での位置ベクトル、τは固有時です。
dτ=γdt --- 式2)
また、γは簡略化のための次定義の量です。
γ={1-(v/c)2}-1/2 --- 式3)
運動方程式はfを力として次のようになります。
f=dp/dt --- 式4)
pを代入して、α=(dx/dt)とfとの関係式を求めると、次の2式が得られます*1)。
f=mγ{(α)+{(v/c)*(α/c)}vγ2} --- 式5)
α=(1/mγ){f-(f*(v/c))(v/c)} --- 式6)
この2式のどちらからでもfとαの方向は一般には一致しないことがわかりますが、fがvに平行な場合と垂直な場合にはその方向はαと一致します*2)。
平行な場合は、
f=mγ3{(α) --- 式7)
垂直な場合は、
f=mγ(α) --- 式8)
ここでニュートン力学での運動方程式にならってfとαとの比例係数を"質量"と考えると、この"質量"はfがvに対して縦の場合と横の場合で異なることになります。実際に初期の相対性理論では縦質量と横質量という概念が使われていたそうです。また、m=p/v=E/c2、で定義される量は相対論的質量と呼ばれています。
現在でも多くの書物で相対論的質量を単に"質量"と呼び、速度ゼロの時の相対論的質量、すなわち本来の質量のことを"静止質量"と呼んでいますが、現在の物理学ではこの用法は誤りと見なされます。つまり「速度が大きくなると質量が増加する」という表現は現在では誤りであり、「速度が大きくなると運動量が式1に従って変化する」という表現にすべきなのです。現在の用法では単に"質量"といえば速度では変化しない本来の質量、すなわち式1におけるmのことだけを指します。
なぜかと言えば、上記のように3種類もの質量がでてきたのでは混乱するから、というのが最も納得しやすい理由ではないでしょうか。もう少しまともに言うと、保存量という観点から次のように各種の量がすっきりと整理できるという理由があります。
質量;ローレンツ変換で保存される物体固有のスカラー量
位置と時刻(空間距離と時間);4元位置ベクトルの空間軸成分と時間軸成分であり、このベクトルの大きさはローレンツ変換で保存される
運動量とエネルギー;4元運動量ベクトルの空間軸成分と時間軸成分であり、このベクトルの大きさはローレンツ変換で保存される
---------
*1) 式5は微分公式からわりと簡単に求まるが、式6の誘導には少し技巧を要する。またベクトル演算の性質に注意する必要もある。参考文献では「容易にわかるように」として式1と式4からいきなり式6だけを示しているが、そう容易でもないので後日示しておくつもりである。むろん人によっては容易であろう。
*2) 垂直な場合は式6の第2項がゼロになることから容易に誘導できる。平行な場合は、f=kvとおけば、次のように誘導できる。
α=(1/mγ){f-(kv*(v/c))(f/ck)}
=(1/mγ){f-(v2/c2))f}
=(1/mγ)(1-(v/c)2)f
=(1/mγ3)f
まず運動量を次の式で定義します。このベクトルはローレンツ変換でxと同じように変換します。
p=m(dx/dτ) --- 式1a
=m(dx/dt)γ --- 式1b)
ただし、mは運動する質点の質量、tは静止系での時間、xは静止系での位置ベクトル、τは固有時です。
dτ=γdt --- 式2)
また、γは簡略化のための次定義の量です。
γ={1-(v/c)2}-1/2 --- 式3)
運動方程式はfを力として次のようになります。
f=dp/dt --- 式4)
pを代入して、α=(dx/dt)とfとの関係式を求めると、次の2式が得られます*1)。
f=mγ{(α)+{(v/c)*(α/c)}vγ2} --- 式5)
α=(1/mγ){f-(f*(v/c))(v/c)} --- 式6)
この2式のどちらからでもfとαの方向は一般には一致しないことがわかりますが、fがvに平行な場合と垂直な場合にはその方向はαと一致します*2)。
平行な場合は、
f=mγ3{(α) --- 式7)
垂直な場合は、
f=mγ(α) --- 式8)
ここでニュートン力学での運動方程式にならってfとαとの比例係数を"質量"と考えると、この"質量"はfがvに対して縦の場合と横の場合で異なることになります。実際に初期の相対性理論では縦質量と横質量という概念が使われていたそうです。また、m=p/v=E/c2、で定義される量は相対論的質量と呼ばれています。
現在でも多くの書物で相対論的質量を単に"質量"と呼び、速度ゼロの時の相対論的質量、すなわち本来の質量のことを"静止質量"と呼んでいますが、現在の物理学ではこの用法は誤りと見なされます。つまり「速度が大きくなると質量が増加する」という表現は現在では誤りであり、「速度が大きくなると運動量が式1に従って変化する」という表現にすべきなのです。現在の用法では単に"質量"といえば速度では変化しない本来の質量、すなわち式1におけるmのことだけを指します。
なぜかと言えば、上記のように3種類もの質量がでてきたのでは混乱するから、というのが最も納得しやすい理由ではないでしょうか。もう少しまともに言うと、保存量という観点から次のように各種の量がすっきりと整理できるという理由があります。
質量;ローレンツ変換で保存される物体固有のスカラー量
位置と時刻(空間距離と時間);4元位置ベクトルの空間軸成分と時間軸成分であり、このベクトルの大きさはローレンツ変換で保存される
運動量とエネルギー;4元運動量ベクトルの空間軸成分と時間軸成分であり、このベクトルの大きさはローレンツ変換で保存される
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*1) 式5は微分公式からわりと簡単に求まるが、式6の誘導には少し技巧を要する。またベクトル演算の性質に注意する必要もある。参考文献では「容易にわかるように」として式1と式4からいきなり式6だけを示しているが、そう容易でもないので後日示しておくつもりである。むろん人によっては容易であろう。
*2) 垂直な場合は式6の第2項がゼロになることから容易に誘導できる。平行な場合は、f=kvとおけば、次のように誘導できる。
α=(1/mγ){f-(kv*(v/c))(f/ck)}
=(1/mγ){f-(v2/c2))f}
=(1/mγ)(1-(v/c)2)f
=(1/mγ3)f
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