入れ墨、転入届け不受理など

an_accused様からいただいた入れ墨等のコメントについて



入れ墨禁止という風呂屋の掲示が、人権擁護法でいう差別にかかるかどうかという、7月20日のエントリー『人権擁護法案について』に、an_accused様からコメントをいただきました。まず、『「対案」に期待できるのか』というan_accused様のエントリーをご覧ください。それから、an_accused様からいただいた、次のコメントをご覧ください。


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公衆浴場等における「入れ墨お断り」について (an_accused)
2005-07-21 06:18:12

 初めまして。an_accusedと申します。
 拙ブログ内の2005年6月2日付エントリー「対案に期待できるのか」における、入れ墨に関する記述について、

「彫物は暴力団組織に加入している(た)ことを示すものではないと思いますが、そのへんはどうでしょうか?」

と疑問をお示しになっておられるようですので、説明を試みさせていただきます。
 まず第159回 参議院内閣委員会(平成16年4月20日)における近石康宏政府参考人(警察庁刑事局組織犯罪対策部長)の答弁で

 「警察庁といたしましては、そもそも入れ墨や指詰めの強要等につきましては、事件検挙や暴対法に基づく中止命令の発出などによりましてその未然防止を図っているところでありますが、これをした人、その人が暴力団を離脱するという機会には、この入れ墨や指詰めが委員御指摘のように社会復帰を阻害する要因というふうになっていると思われます。」

 と述べられておりますように、入れ墨が暴力団組織加入者に積極的に施されていること、また暴力団組織からの離脱を阻害する要因として入れ墨が機能していることは公式に認められた社会的事実です。だからこそ現在、「指定暴力団員が少年に対して入れ墨を受けることを強要、勧誘する行為等」が規制の対象となっているわけです(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第24条)。

 次に、第126回 参議院行政委員会(平成5年4月6日)における廣瀬權政府委員(警察庁刑事局暴力団対策部長)の答弁で

「例えばある暴力団の幹部だけでございますけれども、指詰め率を見ますと四一・八%、入れ墨率を見ますと六二・五%というように、大変高率な指詰め、入れ墨が行われている。」

と述べられておりますように、暴力団組織加入者のうちかなりの割合が入れ墨を施していることは明らかです。

 従って現在の日本においては、「入れ墨は暴力団組織に加入している(た)ことを示すもの」であると考えることには一定の合理性があるといって差し支えないかと思われます。

 また、入れ墨は単なる趣味嗜好ではなく、「入れ墨を見せる行為それ自体」が自らの背後に暴力団組織が存在することを相手方に強く推認させ、相手方を畏怖困惑させるための一手段として用いられていることは、複数の裁判例において認定されているところです(最三小判昭和46年11月16日、神戸地判平成15年3月12日、神戸地判平成14年7月22日など)。

 以上のような理由から、「現在、公衆浴場等における『入れ墨お断り』と表示することは一概に不当な差別であるとは言えない」と結論付けた次第です。

 なお、卑見において「一概に~いうことはできない」と留保をつけているのは、ファッションとしてのごく小さな入れ墨(いわゆるタトゥーの類)などまで一律に排除することが許容されるかという点については議論の余地があるだろうと考えているためです。

 以上、拙エントリーの補足説明をさせていただきました。

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an_accused様のご指摘をまとめると、以下のようになると思います。1と2が理由で、3が結論という形です。

1 『警察の調査により、暴力団組織加入者のうちかなりの割合が入れ墨を施し
   ていることは明らか』

2 『入れ墨を見せる行為それ自体」が自らの背後に暴力団組織が存在することを
   相手方に強く推認させ、相手方を畏怖困惑させるための一手段として用いら
   れていることは、複数の裁判例において認定されている』

3 『現在、公衆浴場等における『入れ墨お断り』と表示することは一概に不当な
   差別であるとは言えない』

この件については、もう少し考えてからエントリーで書きたいと思います。



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7月21日に書いたチラシの裏日記にも、an_accused様からコメントをいただきました。そのコメントは次の通りです。

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転入届不受理について (an_accused)
2005-07-21 06:52:13

 宗教団体アレフ(宗教法人オウム真理教の解散後、同教の信者によって構成されていた宗教団体オウム真理教が改称したもの)の信者に対する転入届不受理処分については、人権擁護法が成立していない現在においても違法とされています(名古屋高判平成14年10月23日、大阪地判平成14年11月7日、さいたま地判平成15年1月22日など多数)。

 ですから、「オウム真理教信者の住民票を受理しない公務員が、本法案で違法者となる」というご見解は誤りです。

 テロ対策法やスパイ防止法の必要性について異論を唱えるつもりはありませんが(その中身にもよりますし)、人権擁護法案と絡めてご議論なさるのであればもう少し論証が必要ではないかと思われます。

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この件についても、もう少し考えてみます。
詳しくご指摘いただきましたan_accused様にお礼申し上げます。今後ともよろしくお願い致します。




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はじめまして (えど)
2005-07-22 03:30:16
若隠居さんのところで一生懸命書いたんですがブログ閉鎖されたみたいですね。少々残念です。



私がコメント等を見て感じたのが、一方の差別しか見られてないなぁということです。

差別は良くない、裁判しても負けるでしょうと。

残念ながら、現状で法に不公平があるから大家さんの擁護論が発生しているのだと思います。



国籍とは別なのですが、状況は似ていると思う例でいきます。

精神障害者Aさんからとある被害を受けても「心神喪失を理由に無罪・不起訴」っていうのありますよね。

国籍と精神病を同じにするな!という意見もあるでしょうけど、被害者が泣き寝入り状態と言うのが同じだと思うのです。

その被害者が、別の精神障害者Bさんが隣に引っ越してきた場合、障害者が入居するときに精神病を理由に反対することも差別でしょう。

裁判になったら、この場合被害者は勝訴できるのかな?

どちらにしてもBさんにとっては言われもない差別ですね。



外国人でも障害者でも差別を受けるのはしかたないとは言いたくありませんが、被害を与えたことに対する保障やある種の優遇の廃止等を行っていかない限り、こういうことが続けば、法で差別だ!といって無理を通しても差別はなくならないません。逆に陰鬱としたものが発生するのではないかと思います。



木を見て森を見ずという言葉をよく目にしますが、森を見ているつもりが林を見ていて森を見ていないということもあるのではないでしょうか。



私の文章はだらだら長くなってしまうようで申し訳ありません。
 
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