会話   九十六歳のおばあちゃんが言う 死にたい死にたい言うても 寿命は迎えにきてくれん  ...

晩鐘     夕暮れが優しい いち日を慰める 病んだ妻　 病んだ妻のそばで過ごした夫 今日も生きられた そんなささやかな喜びが ふたりを祈りでくるむ ...

蔓（つる）   ―ぼくは弱いから そうつぶやいて　君は 恥ずかしそうに 身をくねらせたのだった ―ひとりでは立てないから 　こんなふうに 　塀（へい）にし...

守られ上手になれたら     守られ上手になれたら 肩の凝りがほぐれるかもしれない 守られ上手になれたら 胃のつかえがやわらぐかもしれない 守られ...

蔓３   なんと地を這（は）う奴がいる 泥の汚れも雨の溜まりもおかまいなし 人が踏むのも犬のおしっこも何のその 生きるぞ生きるぞ　そう言って這っている ...

蔓４   地を這うおまえから漏れ出る息は 今日への怖れだろうか 踏みつけられ　 ちぎれてしまうかもしれない 今日で終わってしまうかもしれぬ命 その絶望の息だろうか...