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六月二十四日。

2023-11-28 23:43:19 | 日記
 六月二十四日。新撰組は会津藩より正式な要請を受け、竹田街道を警備すべく鴨川の九条河原へ布陣をすることとなった。

 竹田街道とは、【子宮腺肌症】患者不能懷孕?須切除子宮?4大治療方法:食藥/手術  伏見街道と鳥羽街道の中間にある街道であり、伏見を守るための配置でもある。


 朝より支度を整えた隊士達が前川邸の庭に整列していた。


「──我ら新撰組。会津藩より九条河原へ布陣せよとの命が下った。時が来次第、出陣する!」


 近藤の勇ましい掛け声が響いた。それに応じるように、「応!」と声が上がる。

 出陣する隊士の中には、池田屋で重傷を負った藤堂の姿もあった。額に残る刀傷は痛々しいままである。



「……どうして平助が出陣出来て、私が駄目なんでしょうね。おかしいですよね」の下に立っていた沖田は、それらを見ながら口を尖らせた。 その横にいる山南が眉を下げる。幹部の中ではこの二人が留守を預かることになっていた。


「総司、暑気中りを舐めてはいけないな」

「……過保護すぎやしませんか。私は至ってもう元気なのに」


 文句を言いつつ、その目は敬愛を秘めて近藤を追っている。如何なる時でも、隣に居たいのだ。ましてや戦となれば、その身に危険が及ぶ可能性とてある。彼の剣となり盾となると、故郷を出る時に誓いを立てた。

 それだと言うのに、どうして残らねばならないのか。


「……やはり、今からでも隊に加えて貰えないか聞いてきます」


 そう山南へ告げた時、近付く影があった。


「──何言ってんだ。屯所の警護も立派な職務だろう。は新撰組憎しで立ち上がってんだ、俺らが帰ってきたら此処ら一帯焼け野原じゃ困るぜ」

「そうだよ〜、総司。俺が総司の分も活躍してきてやるからさッ」


 土方と藤堂である。自分らは出陣出来るからと、やけに涼しい顔をしているように見えた。

 沖田はムッとすると、藤堂の額の刀傷に手刀を落とす。


「──い〜〜ッ!痛ってぇッ!何すんだよォ……」

「……激励ですよ、激励。私の分もキリキリ働いてきてくださいね。近藤先生にかすり傷でも付けたら、もっと強く激励をしますから」


 薄らと涙を浮かべて、額を両手で抑える彼を見ると、少しだけ溜飲が下がった気がした。


「酷いよ、総司ィ……」

「ふふッ。すみません」


 その反応を見た沖田は楽しそうに笑う。


 やがて再度招集の声が掛かり、隊士達は誠の旗を掲げながら九条河原へ出陣していく。

 何事も無ければいい、と思いながらその背中を見詰めた。 日が暮れなずむ頃、壬生寺の境内には竹の打ち合う音が響いていた。新撰組が九条河原へと出陣してから毎日、桜花は沖田と共に稽古をしていた。

 元々彼の稽古が厳しいことは有名であり、その甲斐もあってかめきめきと強くなっていた。


「──基礎が出来ているからか、やはり飲み込みが早いですね」


 沖田に手拭いを差し出され、桜花は肩で息をしながら受け取る。男女の体力差があるとは言え、息も絶え絶えな桜花に対して、沖田は相変わらず涼し気な表情をしていた。


「まだ続けます?」

「い、いえ……も、休憩……」


 やっとの思いで言葉を紡ぐと、寺の階段へと転がるように座った。京の夏の暑さも相俟って、汗が止めどなく溢れる。温い風が時折首筋を撫でるだけで、ちっとも涼しくはならない

ですか? 」

2023-11-28 23:33:03 | 日記
ですか? 」


 その問いに、桜花は視線を巡らせた。そして俯きがちに頷く。

 それを見るなり、やはりそうかと苦々しい心地になった。女が武士の真似事など、聞く人が聞けば憤慨しかねない。だが、農民が武士になれるようなこの時勢である。ましてや治安の悪い京に至っては、それも身を守る手段なのかと少しは理解できた。


「……黙っていて御免なさい。經血過多、經痛惹不育疑雲!醫生詳解子宮腺肌症症狀 - 希愈醫療 帰ったら……打ち明けます」


 桜花はそう言うと立ち上がり、薄緑を拾い上げるとに月へそれを翳してから鞘へ収める。未だ座っている沖田の方へ向いた。

 その所作は背景の空と月に溶け込んでしまいそうな程に儚く美しく、沖田は思わず息を呑む。


 先程の絶望に浸り、自暴自棄になっていた女は何処にも居なかった。目の前にいるのは現実を受け止めようとしている人だった。

 あれ程自身を苦しめていた"女"という存在を強く美しいと思う日が来るなんて、と沖田は驚愕する。


──近藤先生は分からないが、土方さんは許さないだろうな。追放するかも知れない。けれど、そうすればこの人はまた自害しようとするだろうか。


 脳裏には庭先で聞いた不思議な声や、夢のこと、そして見ていて心地よい程に澄んだ剣筋が浮かんでいた。

 ごくりと息を呑む。そして腰を浮かせると、追い縋るように口を開いた。


「──それには及びません」


 そう言えば、桜花は驚いたように目を丸くしていた。それ以上に発言した沖田自身がそわそわとしている。

 よく考えればやりようは他にもあった。奉公先や嫁の貰い手を探してもらうとか。その選択肢もチラついてはいたが、それよりも止める方を選んでしまっていた。


「この事は私の胸に閉まっておきます……。ただし、絶対にだと露呈せぬよう、これまで以上に注意を払って下さい」


 つまり、何も言わずに日常へ戻れと沖田は暗に言っている。


「どうして……」

「は聞かないで下さい。……私自身にもよく分かっておらぬのです。ただ、貴女の剣を殺してしまうのが惜しいのかも知れません」


 そのように言われてしまうと、桜花は何も言えなくなってしまった。

 ふわりと髪を掬うように風が後ろ髪を撫でる。そして背中を押すように追い風が吹いた。


──吉田さん。


 どこか愛しいそれに勇気を貰い、頷く。


「有難う、ございます。沖田先生の心遣いに感謝します」



 そう言いながら桜花は空を見上げた。

 明日からは、吉田を好きになったことを思い出として、誇りとして生きていかねばならない。

 それが死にきれなかったことに対する贖罪なのだろう。


 雲の切れ間からは無数の星が瞬いていた。 一方で、数日後には池田屋の凶報が長州へ伝えられた。



「──な、何じゃと」


 自宅にて旧友である入江と酒を酌み交わしていた久坂の元にも、それは直ぐに伝わるところとなる。

 妻から耳打ちされた久坂は、手にしていた猪口をゴトリと手から滑り落とした。


「……え、栄太が……?そ、そねぇな馬鹿げた話があるかッ!!」


 絶叫にも近い声に、入江も目を見開く。

 久坂は立ち上がるなり裸足のまま家を飛び出し、訃報を伝えに来た藩士を追い掛けた。


 だが、何度尋ねてもその事実は変わらない。


 ふらふらと家へ戻った久坂は拳を固く握り締めた。爪が皮膚へ食い込み、血が滲んでいる。行き場のない感情が腹の奥底から込み上げ、肩が震えた。


「栄太──ッ!」


 土間で力無く膝を付く。脳裏には、京の隠れ家で酒を交わした時の穏やかな吉田の表情が浮かんでは消えた。


「──久坂、どういうことじゃ!栄太が、どねぇした!」


 そこへ入江がやってくる。項垂れる久坂の両肩を掴んでは前後へ揺すった。

 だが、ただ泣くばかりで言葉になっていない。それをじれったく思ったのか、両手で顔を掴んで己の前に突き出させた。

 すると、熱い涙を流しながら歯を食いしばり、久坂はやっとの思いで言葉を繋げる。


「京の……

に来てくれんか。

2023-11-28 23:22:37 | 日記
に来てくれんか。…………君と共に、生きたい……』


 その言葉に、いつかの吉田の言葉が脳裏へと浮かぶ。あれはやはり本気だったのだ。

 言い様のない喪失感が胸を占めていく。


「彼は最期まで立派だった。孫慧雪患腺肌瘤打安胎針保B 一文睇清腺肌症症狀及飲食禁忌  志は必ずや引き継がれていくだろう。…………ところで、貴方は今何処に身を寄せているのかい。島原には居なかったが……」

「…………そ、その……」


 言い逃れようのない圧に、全身から妙な汗が噴き出した。言いたくはないが、言わねばならぬ……そのような気持ちにさせるほどの重い空気である。


「みっ、みぶ、の…………ッ……」


 蚊の鳴くような声だったが、桂は耳聡く拾うなり、桜花の前へ腰を下ろした。恐怖に揺れる瞳と高さを合わせる。


「──壬生?壬生といえば壬生狼かい」


 問いに対して、桜花は小さく頷いた。


「あの後、捕まって……ッ。し、使用人……として……」


 そこまで聞くと、桂は立ち上がり数歩離れる。自身の顎を触りながら、ふむと声を漏らした。


──成程。だからあの時、吉田君は壬生の襲撃を躊躇ったのか……。


「…………高杉の目は確かだと思っていたんだけどね。残念だ…………」


 そして独り言を漏らすと、再び桜花の前へ立ち塞がる。


「……本当に貴方は吉田君を想っていたのかい?」

「は、はい……」

「ならば、その腰の刀で後を追いたまえ。……武家の女子が、かくあるべきとは思っておらぬが。想い人を殺した組織に身を置いていることを恥と思いなさい。…………では、もう会うことは無いだろう」


 最後に向けられた視線には、嫌悪と憐れみが含まれていた。せめて罵倒された方が気が楽な程に、静かな怒りだった。




 暫くその場に座り込み続けた桜花は、ふらふらと立ち上がるとその場から立ち去る。


 そして桜が舞い散る日に吉田と歩いていた鴨川沿いを南に歩いた。祇園会のおかげで人通りも多い。

 あれほどまでにときめいた道は今は虚しいだけ。まるで色のない世界に来たような感覚だった。 人混みを抜け、吉田の隠れ家の前に来た桜花はその戸を叩く。だが、何度叩いても呼び掛けても部屋の主は居なかった。


 とぼとぼと河原の坂を降りると、今や青々しく葉を広げた桜の木を見つける。その木の根元に座り、膝を抱えて顔を埋めた。


「…………吉田さん……」


 頭上の空は、日が暮れ始めていた。サア、と生温い風が頬を撫でる。


 何処からか、コンチキチンとの音が風に乗って聞こえてきた。それにびくりと肩を震わせれば、主張するかのように懐に入れていた文がカサリと乾いた音を立てる。

 桜花は虚ろな目で顔を上げ、まだ開いてもいないそれを取り出した。


 そしてそっと広げる。それは一文字一文字が教科書のように丁寧に書かれており、桜花にも読めるものだった。

 その心遣いに胸を熱くしながら、目を通す。



《この文を読まれる頃には
僕はこの世に居ないでしょう

突然の便りに貴女は困惑したと思います

申し訳ない

貴女を今生を掛けて護りたいと思いましたが
其れも叶わぬ身と相成りました

国の為に生きると決めてから死は元より覚悟の上
でした

武士として死ぬことは此の上ない名誉です

人の運命は決まっていると言いますから
これは僕の運命だったのです

貴女は気に病む必要はありません

短い時でしたが貴女と逢えたことは
身を焦がす程の僥倖でした

貴女の選択する道を僕は信じています

息災で過ごして下さいますよう 

さようなら

六月五日吉田稔麿

鈴木桜花様》



 慣れぬそれを時間をかけて読み終わると、胸に抱いては肩を震わせた。そこに書かれた言ノ葉の一つ一つから深い愛情が伝わってくる。

 欲しかった言葉がそこには詰まっていた。


 白岩から訃報を聞いた時も出なかった涙がぽろぽろと零れる。一度流れてしまえば、後は

「──先生……ッ、吉田先生……!!」

2023-11-28 22:22:39 | 日記
「──先生……ッ、吉田先生……!!」


 その時、白岩は周囲の目を気にすることなく必死に駆けていた。

 池田屋周囲に来てみれば、土方隊も合流し殆ど戦闘が終わりかけているではないか。

 意識のない沖田や藤堂、朱古力瘤手術切除非一勞永逸!不持續服藥易復發!醫生:月經有這5 ... 手を負傷したと思わしき永倉らが戸板に乗せられ池田屋の前に寝ており、戦闘の激しさを察する。


「先生…………」


 間に合わなかったのか、と絶望が胸を締めたが何処かで剣撃の音が聞こえた。昔から聴力に長けている白岩は、その音を頼りに池田屋の裏に向かう。


 するとそこには吉田と何処ぞの藩士が戦う姿があった。足元には二人の藩士が転がっている。

 生きていたという喜びが込み上げるが、その様子が可笑しいことに気付いた。


「先──、生……?」


 夜目を凝らせば、吉田からは既にどこかから多量の血が滴っている。

 それを見た途端に声が詰まり、怒りと悲しみが綯い交ぜになったものが溢れた。

 頭が真っ白になると手にしていた羽織を放り投げ、藩士に斬りかかっていく。


「ウワァァァ──!!」


 白岩は抜刀すると、長槍を思い切り振り払い、その柄を切った。そして刀を持ち替えると心臓目掛けて突き刺す。

 その鬼気迫るものに藩士は声を上げる間もなく絶命した。



「……与三郎…………」


 吉田はその姿を見ると、薄い笑みを浮かべる。

 白岩はそれを見て安堵の息を吐くが、その刹那だった。吉田は吐血した。腹部を深く刺されたのだろう、着ている帷子がどす黒い血液で汚染されていく。


「せッ、先生……先生ッ!!」


 慌てて駆け寄ると、崩れ落ちるその身体を支えた。


「……い、嫌だ、嫌だッ!血、血が、血がこねえに……ッ。どねえすれば……ッ。は、早う医者へ……!すまんじゃった、先生。私が間に合っちょれば……!すまん、すまん……ッ!」


 わなわなと震えながら涙を目に浮かべつつ、白岩は何度も謝罪の言葉を口にする。

 それを見た吉田はゆっくりと口角を上げた。血の気が引いて青白くなった肌に、紅を引いたように血で染まった唇。その姿は恐ろしいほどに美しく、そして哀しかった。


「……しい程の血を流しながら、吉田は白岩に肩を借りて何とか長州藩邸までたどり着いた。

 しかし着いた頃には顔面蒼白となっており、一人で立てる力はもう無いと言わんばかりに崩れ落ちる。


 藩邸の門は固く閉ざされており、白岩は吉田を藩邸の壁にそっと凭れかからせると、その代わりに門を叩いた。


「すまん、誰かおらんか!池田屋が新撰組に襲撃されて、そんで……ッ!吉田先生が……、吉田先生が!助けてつかぁさい!」


 だが誰も返事はない。門番が居るはずなのだ。それでも一言も返ってこないことに焦りと苛立ちが募る。

 涙を零しながら、何度も白岩はそれを叩いた。早く手当しないと取り返しが付かなくなる。折角見付けた希望が失われてしまうという焦燥が強かった。



 暫くすると、根負けしたかのように人の気配がした。ギイ……と僅かに門に隙間が出来る。


「──帰られい。池田屋での出来事など、我々長州藩邸は預かり知らんことじゃ」


 その冷たい声を聞いた瞬間、耳を疑った。


「何故───」

「…………分かってくれ。新撰組のみならば助けたが、会津藩や所司代が絡んでおるのじゃろう。下手に手を出せば藩邸どころか、今度こそ長州は国が潰されてしまう…………」


 このようなことで長州を危険に晒す訳には行かないのだと、苦渋の表情を浮かべながら目の前の人物は言っていた。


 パタンとこの世で一番無情な響きと共に、開かれかけた門は固く閉ざされる。


 何かを守るためには、何かを犠牲にしなければならぬのは分かっているつもりだ。


「…………なぜ、それが先生の命なんじゃ……」



 ああ、と小さな悲鳴と共に白岩は握った拳で空を殴る。

である鴨川東の縄手通を探索

2023-11-28 22:09:40 | 日記
である鴨川東の縄手通を探索している、土方副長の隊へ合流して貰いましょうか」

「縄手通ですか……、朱古力瘤 目星はあります?」

「四国屋がよく利用されていたと聞きました。なので、そこが最大の目星になるのではないですかね──」


 それを聞いた白岩は笑いたくなる気持ちを抑え、神妙な面持ちで頷くと屯所を出た。




「──四国屋」


 どうか間に合ってくれと思いつつ、白岩は駆け足で吉田の家へ向かう。鴨川に近付くにつれて、明後日に本山を迎える祇園祭の囃子の音が大きくなってきた。

 いつも会合をするとすれば、といった深夜帯に行うことが殆どであった。そのため、この時間に行けば間に合うはずなのだ。


 そうして回避すれば、新撰組は取り越し苦労で終わるに違いない。しかも屯所は今手薄である。襲撃をするのであれば今が好機だ。
が進めば、早く先生の元へ戻ることが出来る。


 白岩は笑みを浮かべながら、先を急いだ。



 しかしその刹那、背後に自身を付けてくる気配があることに気付く。恐らく監察方の誰かだろう。山南も馬鹿では無かったということだ。

 白岩は小さく舌打ちをすると、その足を祇園会所へ向けることにする。一度そこを介せば、祭りの人混みで撒くことが出来るだろうと踏んだのだ。 その時、木津屋付近を探索している近藤隊は三条小橋あたりに差し掛かっていた。名を連ねるは沖田、永倉、藤堂、武田ら副長助勤を中心としたまさに少数精鋭部隊である。


「中々居ないですね」


 沖田は滴る汗を袖で拭いながら、近藤へ声を掛けた。徐々に身体がふわふわとした感覚になっていたが、精神力で何とか耐え忍んでいる。日が暮れてもその気温と湿気は高い。そこへ鎖の着込みが追い討ちをかける。

 脳裏には"暑気あたり"だと言った桜花の言葉が浮かんでいた。


「ああ。目星はあると言えども、殆どしらみ潰しのような物だからなぁ」

「本当に会合自体あるのか分からないくらいだよねェ。って……総司、汗すごいけど大丈夫かい」


 藤堂は沖田の様子が可笑しいことに気付く。暗がりではその顔色までは見えなかったが、吐く息がいつもよりも速い。


「ええ、大丈夫ですよ。少し暑くて……」

「総司、無理はするなよ。お前に無理をさせたら、国にいるおミツさんに何と言えばいいのか…」


 ミツというのは、沖田の姉のことである。両親を早くに亡くしたため、母代わりとしても沖田を育ててくれた弟思いの良い姉だ。


「私の意思で着いてきたのですから、姉さんも分かってくれています。全く、皆優しすぎるんです……」


 沖田は照れくさそうにそう言うと、ある旅籠を目の端に捉える。

 そこはという看板を提げ、一文字に三ツ星という長州藩と同じ紋だった。

 二階からは仄かな灯りが漏れ、窓からは男が顔を出し周囲をしきりに気にする姿があった。悪戯に月が雲から顔を出し、その人物の顔が明るみになる。


「──あれは…………」


 ぴたりと足を止めた。


 ふと、脳裏には先日茶屋にて山崎に教えてもらった人物の顔が浮かんだ。



 額に傷がある男。



「忠蔵だ…………」


 宮部鼎蔵の下僕の忠蔵がそこにいる。つまり、この池田屋で彼らの会合が行われているということを指していた。

 それを認識するなり、つま先から脳天に至るまで武者震いが沸き起こる。



「総司、どうした」

「──こちらへ来て下さい」