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まるで宝物を触るように丁

2023-11-29 19:05:46 | 日記
まるで宝物を触るように丁寧なそれに、桜司郎はくすぐったさを感じながらふわりと微笑んだ。


「労を、ねぎらいなさいと。私がまだ下働きだと思ってのことですよ。沖田先生、来て下さって有難うございます」

「あの人は手癖が悪いから…。腺肌症 困ったものですね…。私が必ず守りますから、遠慮なく呼んでください」


沖田は優しい笑みを浮かべる。すると、奥から近藤が近付いてきた。その後ろには土方もいる。


「おおい、総司。いきなり走り出してどうしたってんだい」

「近藤局長。お帰りなさいませ」


桜司郎は慌てて頭を下げた。すると近藤は厳つい顔を緩める。

「やあ。歳と総司から聞いたよ。入隊したという話しじゃないか。とても嬉しいよ」

弾んだ声が頭上から聞こえた。それを聞いて、桜司郎は口角を上げる。


「名も改めたそうじゃないか。桜司郎君、だったかな」

「はい。沖田先生に名付けて頂きました」


桜司郎の言葉に近藤は腕を組むと、うんうんと頷きながら微笑んだ。身内よりも大切にしている一番弟子が名付け親になることが、余程嬉しかったのだろう。

当の沖田は気恥ずかしそうに耳を赤くしている。

「桜司郎…。まるで総司の幼名と似ていて懐かしいよ」

「こ、近藤先生…!それは…」


沖田はギョッとして近藤の口を手で塞いだ。その事実を桜司郎へ伝えるにはあまりにも恥ずかしかったのである。

そして自分の幼名に似た名前を付けられるなんて、不快ではないか。そう思いながら、沖田はちらりと桜司郎の顔を盗み見た。


すると、桜司郎はほんのりと頬を染め恥ずかしそうに、はにかんでいる。
それにつられるように、沖田も更に顔を赤く染めた。

「沖田先生の御幼名…なんと言うのですか?」

「え…っと…。宗次郎、です」


その睦まじいやり取りを近藤は微笑ましそうに見ていたが、土方は苦笑いを浮かべる。

「おだ?そう言うのは他所でやってくれよ」

「な…ッ、め、夫婦なんて!」



「な反応が返ってきたことに土方は面食らった。


「ははは、そりゃあ良いな。鈴木君が女子であれば、総司の──」

「近藤先生ッ、お疲れでしょうから早く着替えましょう!ねっ!?」


それに便乗しようとすれば、沖田は食い気味に近藤の背中を押して前川邸の母屋へ誘う。

「分かった、押すなよ総司」

近藤は声を上げて笑いながら、それに身を任せて向かっていった。


桜司郎はポカンと呆けながら、その背を見送る。そしてじわじわと熱くなる頬に片手を当てた。


そこへ足音が近付いてくる。土方と桜司郎はそれに反応してそちらへ顔を向けた。

「やあ、初めまして。取り込み中失礼しますよ。貴殿が副長の土方殿ですかな。は伊東甲子太郎と申します。どうぞ良しなに」


そこには品のある笑みを浮かべ、伊東が立っていた。後ろには興味の無さそうにそっぽを向く三木の姿もある。

「…如何にも。副長の土方だ。後ろの弟君は宜しくする気が無さそうですな」


土方は涼し気な笑みを浮かべた。何処か挑戦的なそれに桜司郎は冷や汗を流す。


「これは…失礼。まだ世間知らずの子どもで申し訳無い。学はある故、御役には立てるかと思いますよ。では、我々も装束を解いて参ります」

それを軽く流した伊東は用意された離れの部屋へ、三木を連れて向かっていった。


土方の、燃え盛る重い炎のような重厚感とピリッとした緊張感を感じさせる印象を持つとしたら。
伊東はしなやかに棚引く青柳のような柔らかさを感じさせる一方で、友好的な笑みの奥に冷酷さを秘めた印象である。

二人はまさに対称的だと桜司郎は思った。


土方は小さく舌打ちをすると、桜司郎の方を見遣る。そしてこう発言した。

「…鈴木、伊東さんが使う

伊東大蔵、改名して。

2023-11-29 19:02:12 | 日記
伊東大蔵、改名して。常陸国志筑の出身であり、齢三十。文武両道に加えて美丈夫だった。
婿養子にて入った深川に位置する、北辰一刀流を修める伊東道場は大繁盛している。


「何だ、山南さんも知ってんのか」

「勿論です。孫慧雪拍片分享治療腺肌症經歷 尋遍醫生無成果 打停經針歷更年期 藤堂君が試衛館に来る前の道場の先生ですよ。彼は本当に良く出来た男です」


近藤も伊東の事を誉めそやしていた。文面にも武面にも卓越した伊東の存在は、"兵は東国に限る"という信条の近藤の目には何よりも眩しく、魅力的に映ったのだろう。

土方は未だ会ってはいないが、この伊東という男のことを好きになれそうにないと思った。


「博識な猛者って奴か」

何処か呆れたような、興味の無さそうなその声色に山南はクスリと笑う。


「土方君は苦手そうですね」

「そういう訳じゃねえ。ただ、良いところの坊ちゃんが新撰組で刀を振るえんのかって思ってよ。道場の剣と実戦は違ぇしな」

「まあ…それは来てみないことには何とも。少なくとも、近藤局長の考えと一致したから来て下さるのでしょうし。良い人ですから大丈夫ですよ」


山南はそう言うとニコリと微笑んだ。

土方は昔からこの笑顔に弱い。嫌なことでも、その通りにやらなきゃいけないと思えてしまうのだ。


「…そうだな」日増しに秋の色が濃くなりつつある、昼過ぎの事。
赤蜻蛉の群れが、悠々と空を泳いでいた。


沖田と斎藤を師範として、壬生寺では厳しい稽古がなされている。今は沖田が止めていいと言うまで素振りを延々と行っていた。


「まだまだッ!手を休めるなッ。そこ、脇が甘い!」

沖田の声が境内に響く。彼は剣術のことになると人が変わったように激しい性格になる。
普段は柔和だからこそ、その変わり身に隊士は皆驚かされていた。


「止めッ。次は二人一組になって打ち合いッ」

桜司郎は額の汗を拭うと、誰と組もうかと近くを見る。山野の姿を探していると、目の前に馬越が現れた。


「あ、あのう。宜しければ私と如何ですか」

白い肌に上気した頬、焦げ茶色の瞳は何処か潤んでおり、女子のような色香を存分に放っている。
周りの隊士達は馬越に吸い付けられるように視線を送っていた。


「あ…。宜しくお願いします」

可愛いなと思いつつ、桜司郎はその申し出を受ける。
ちらりと山野の方を見ると、口を尖らせていた。
ごめんと手を合わせ、馬越と向き合う。


木刀を何度も交えていると、斎藤が見回りに向かってきた。

「鈴木、もっと肩の力を抜け。筋を痛めるぞ」

「はいッ」


やがて、休憩と声が掛かる。馬越を見やると、淡い青色の美しい手拭いを取り出していた。彼の持ち物は全て洒落ており、その美意識の高さが分かる。


「あの、馬越さん。この前…と言うには日が経ってしまいましたが、武田先生のこと有難うございました」

「え…。あ、いえ。本当は私が助けられたら良かったのですが…。意気地がなくて済みません…」


馬越は瞳を伏せた。武田には顔を合わせる度に言い寄られている為、桜司郎の気持ちは分かるつもりだ。
何とか貞操を守っているものの、武田が本気を出せば上司の権利で無体を強いられても可笑しくはない。

江戸行きだと聞いて、心底ホッとした。

「そんな事は無いですよ。本当に助かりました」

その最もな物言いに

2023-11-29 18:51:07 | 日記
その最もな物言いに、桜花と山野は顔を見合わせた。

「な…何て呼べば良いんですか?」

「せやなァ、忠さんっちゅうんはどや?」

桜花の問いかけに対して、松原は顎に手を当ててそう返答する。忠さん、と桜花は呟いた。


「ハァ、分かりましたよ。避孕 隊務の時は敬語と先生呼びしますけど、非番の日はその呼び方で行きましょう」

山野は頷くと、同意を求めるよう桜花を見る。視線を受けて、桜花も大きく頷いた。


「おお!おおきに。今度酒でも飲みに行こや」

「応ッ!…って、桜花!副長に呼ばれていたんだった!」


山野はハッとすると桜花の腕を掴んで副長室へ向かう。松原はきょとんとするとその後を着いていった。「土方副長、鈴木です」

「…入れ」

障子を開けると、そこには土方と山南、沖田の姿があった。桜花の後ろに山野と松原がいることに、二人は苦笑を浮かべる。

「…何だ、お揃えやがって。気になるんなら入れ」

土方の促しに、松原と山野は顔を見合わせると頷き桜花の後に続いた。


「フフ…、桜花君はすっかり馴染んだようで良かったです。ねえ、総司」

山南は穏やかな笑みを浮かべると、沖田を見遣る。沖田は目を細めて柔らかい表情で桜花を見た。


「はい。…少し寂しいですけど。でも近藤局長も喜びますね、育てていた人が隊士になっているって」

「せやなァ。ワシも聞いた時は驚いたわ」


副長室にはな空気が流れる。新撰組の中でも気性が穏やかな面々が集ったからだろう。
土方は眉に皺を寄せると、溜め息を吐いた。


「何、のんびり談笑してやがるんだ…。まあ良い…本題に入る。鈴木、名前を改める気は無いか」


その問い掛けに桜花は驚きの表情を浮かべる。それを見た山南は肩を竦めた。

「土方君は些か…前置きを省略する癖が有りますよね」


土方はバツが悪そうに頭を搔くと、山南に説明を任せると言わんばかりにそっぽを向く。
沖田はそれを見てクスクスと笑った。


「桜花君、今近藤局長と藤堂君達が江戸へ隊士募集に向かっているのは知っていますね」

「はい」

「今朝方、局長より文が届きましてね。中々大勢の隊士が来てくれそうなんです。…元々の隊士達は貴方の腕前を知っていますが、新人はそれを知らない為に、外見と名前で女子だと勘違いする可能性があると思いまして」


実際に女なのだけど、と桜花は心の中で冷や汗をかきつつ、沖田をこっそり垣間見る。
視線に気付いた沖田は薄く笑みを浮かべた。


「成程、それで改名と云う訳ですね。…私はそれで構いません」

「そうか、好きに付けると良い。…候補はあるのか?」


土方の言葉に、桜花は考え込む。名前を変えるなんて思いもしなかったため、そう簡単には浮かばなかった。

「いきなり言われても思い付きませんよね。誰かに決めてもらうのも有りですよ」

山南にそう言われ、桜花は直ぐに沖田の顔を見る。それに釣られ、全員が沖田へ視線を向けた。
沖田は慌てながら自身に指を差す。


「わ…私がどうしましたか?」

「私、宜しければ沖田先生に決めて頂きたいです。沖田先生は私の恩人ですから」


その言葉に土方はニヤリと笑った。弟分が名付け親になることに感慨深さすら感じる。

「…だそうだ。折角の御指名だ、気張って考えろよ」

「ええええ!?」


驚きの声を上げると、桜花は落ち込むように瞳を伏せた。それを見た沖田はぐ、と声を詰まらせる。

「わ…分かりました。精一杯努めて考えます…」


そして観念して承諾した。

そのやり取りで折れたのは

2023-11-29 18:38:52 | 日記
そのやり取りで折れたのは源之丞だった。
何を言っても信念を曲げることはないのだろうと思ったのである。


深々と頭を下げて桜花が去った後で、子宮腺肌症致劇烈經痛 患者難成孕?醫生:治療關鍵為長期控制 (cosmopolitan.com.hk) 源之丞は深い溜め息と共に小窓から庭を眺めた。

「…どうしたモンやろか」

源之丞の横顔は何処かスッキリしたような、感慨深いようなもので。まさは浮かない表情でそれを見上げ、小首を傾げる。

「が武士なんて、何処の御伽草子やと思っとったが…。あの眼と言葉に、こう…胸が打たれるような感覚がしたんや。…あの子は大成する、そう思うで」

まさは未だ何処か納得していなかったが、夫の源之丞がそう言うのであれば、もう反対することは出来なかった。

源之丞が部屋を出ていくのを見送った後、まさは俯く。

「桜花はん……」


口にこそ出さなかったが、あの悟りきった表情に違和感があった。
人の変化に敏感なのは女である。また、女の変化に気付くのも女である。
恐らくは"女としての幸せ"を捨てようと思ったがあったに違いない、そう思った。

だが、それを知ったところで何も出来ないのも分かっている。
むしろ傷を抉ることになるのであれば、触れないで見守ろう。まさはそう決心した。



一方、桜花はその足で前川邸へ向かう。その門からこっそりと顔を覗かせた。

すると、巡察へ行く支度をしている沖田と目が合う。目当ての人物と早々に会えたことで、桜花は表情を明るくした。

沖田はそんな心情を知ってか知らずか、桜花の元へ近寄ってくる。

「やあ、お早うございます。誰かお探しですか」

「丁度沖田先生を探そうとしていました。あの、今日…何処かでお時間頂けますか」


そう言う桜花の表情は神妙かつ真剣そのものだった。改まって言う程の物があるのか、と沖田は顔を強ばらせる。

「…分かりました。巡察から帰って来たらお聞きします。八木邸まで参りますね」


沖田がそう言えば、桜花は一礼して八木邸へ戻って行った。

やがて空が焼けるような色に染まる頃、沖田は八木邸の門を潜る。

「御免下さい」

沖田は母屋に向かって声を掛けた。すると、まさが厨から顔を出す。
何時もは朗らかに笑みを浮かべてくれるのだが、今日は何処か険しい顔で見てきた。

「あの…、桜花さんは居ますか」

「…もう直に戻ってきはると思いますえ。なあ、沖田はん。一つ聞いてもええどすか」

まさは前掛けを取ると、沖田に向き合う。
赤とんぼが沖田の背後を通った。

「はい。どうされましたか」

「桜花はんは…として大成されるやろか」

突然の質問に沖田はきょとんとする。恐らく、毎日のように稽古を共にしているため、その腕前を聞いているのだろうと解釈した。

「ええ。あの人の腕前は…剣客として食べていける程のものですね。実戦経験は殆ど無いにしろ、真剣を前にしても応じない度胸があります」


沖田のその返答に、まさは何処かホッとしたような表情を浮かべる。新撰組でも随一の腕前を誇ると言われている沖田のお墨付きがあるのであれば、そうやたらと命を落とすようなことは無いだろうと思ったのだ。


「そう、どすか…。余計な話しかも知れへんけど…、桜花はんの事。よろしゅうお頼み申します。記憶が無い中でも泣き言一つ漏らさず、健気に気張ってきた子や。目ェ掛けてやっておくれやす…」

まさはそう言うと、頭を下げる。それを見た沖田は何事かと慌てた。
そこへ門の方から足音が近付いてくる。

まさは視界の端に桜花を認めると、そそくさと厨へ戻って行った。


「沖田先生…!すみません、お遣いへ行っていて…。お待ち下さい」

桜花は厨へ入り、まさへ醤油の入った瓶を手渡すと沖田の元へ戻る。

すると沖田は腕を組み、地面を見ていた。視線の先を見てみると、

はそないなことせんでもええ…」

2023-11-29 15:57:39 | 日記
はそないなことせんでもええ…」


桜花の着物の袖を引き、心の底から心配しているその様子に、胸の奥が温かくなるのを感じる。
その手を握ると、桜花は微笑んだ。

「おまささん、Visanne 本当に有難うございます…。でも、私は…この刀と好きだった人に恥じない生き方をしなくてはならないんです」


以前であれば、その声に従っていただろう。戦火に飛び込むなんて恐ろしいことは出来ないと。
しかし、吉田を初めとする長州志士との出逢いや新撰組の背中を見ていると、動かなければならないと思うようになってきていた。

出来ることを精一杯やらねばならないと。


「…気張りやす。絶対戻って来るんえ」

その言葉に微笑むと、桜花は駆け出した。新撰組が御所へ到着したのは、長州藩の敗北が濃厚になった昼頃だった。

「…何だい、この有様は」

近藤は御所を見上げては、呆然とそう呟く。

あれ程までに威厳的で周囲を通るだけでも緊張させた御所を囲む塀や門は、戦の舞台となってしまったからか、ボロボロだった。
特に鷹司邸からの出火は北東の風に釣られるようにして、堺町御門を焼いている。


「こりゃ酷いよ……」

藤堂は悔しそうに拳を握った。

そこへ、情報収集へ向かっていた監察方の山崎が戻ってくる。


「申し上げます。御所での戦闘は大方終焉を迎えたとのことですわ。長州軍の残党は天王山へ向こうたという情報あり」

その言葉に幹部はザワついた。天王山と言えば、まさに先程まで自分達が待機していた伏見方面である。

「俺たちの行動が全て後手に回っているようだな…。局長、副長、如何されますか」

斎藤は悔しそうに眉を顰めた。


「追討するには会津藩と話す必要がある。その間、鎮火の手伝いと残党兵の捜索に当たれッ。指揮権は斎藤に預ける」

土方はそう言うと、会津藩の上層部と話すべく近藤と共に向かった。

そもそも、会津藩の主力は蛤御門を防衛しており、九条河原を防衛する会津藩は言わば予備兵のようなものである。

まだまだ自分達の力が認められていないことを痛感した瞬間だった。


斎藤の指揮で、新撰組の半分は公家屋敷に潜伏する残党兵を襲撃し、邸では原田と永倉が軽傷を負ったという。
「沖田先生、お待たせしましたッ」

前川邸に飛び込むと山南が浅葱の羽織を手にし、待っていた。

「市中へ行くと総司から聞きましたよ。これを着てください。貴方は隊士では無いけれども、これなら目立つからはぐれることは無いでしょう」


山南の奥にいる沖田と目が合う。すると、沖田は笑みを浮かべて頷いた。

「あ、有難うございます」


羽織に恐る恐る手を通す。新撰組の覚悟の色の象徴であるそれは、着心地が良くともずっしりと重く感じた。

「お似合いですよ。さあ、屯所は私に任せて。怪我をしないように行ってらっしゃい」

山南に見送られ、沖田率いる小隊は市中へ向かう。



「それにしても、これは酷いですね…。近付く度に被害の大きさが分かります。しかも、風が強い上に北東から吹いてきているから最悪ですよ」

沖田は御所の方を向きながら、忌々しげに目を細めた。