自由帳~子供の心で~

南保大樹が日々思ったことや稽古状況など、舞台創りを綴ります。

20周年目によせて 朗読劇『月光の夏』

2023年08月19日 | 芝居道
今年も朗読劇『月光の夏』を上演する。

今年で20周年目となる。

初演は2003年2月22日の神奈川県橋本の杜のホールで開幕した。

キャストは南保大樹・森良之・岸並万里子・古田美奈子。

演出は鈴木完一郎氏。

稽古期間は約3週間くらいで、台本の大幅な変更や、動きや立ち位置など、急ピッチに進め、

稽古場は三軒茶屋や大橋など各地を転々としながら主に劇団3F稽古場で行い、

完一郎さんの激しい稽古場は熾烈を極めた。

ピアニストの植田伸子さんも合流すると、音楽好きの完一郎さんは嬉しそうにコラボレーションを創り上げ、この作品の醍醐味となる。

改めて完一郎さんの台本構成と、ピアノ音楽の使い方は凄いなと感じる。

稽古の始めから、黒を基調とした舞台で、ピアノ演奏は「月光」の曲だけを使い、動きや立ち位置などイメージにあり、

衣裳も一緒に買いに行った。

この作品は完一郎さん自身の戦争に対する嫌悪を、私達がこの作品に向き合う姿勢によって表現したのだ。


そして2003年2月26・27日に北沢タウンホールで東京公演初演。

第一声、台本を持つ手が震えたのを覚えている。

その時の私はまだ20代。

戦争というものに本気で立ち向かった気がする。

生前の古田美奈子に当時のことを聞くと「こんちくしょーの毎日だった」と言っていた。

ダメ出しは厳しく、セリフも他の人に割り振られたりと悔しい想い出があるのだろう。

でも初演メンバーでこれでもかと模索しながら稽古した日々は貴重な思い出だ。


東京初演を終えて、すぐに宮崎県三股町での地方公演が決まった。

嬉しく、とても安堵したのを覚えている。

そして夏から冬にかけて地方を駆け巡った。

この作品を私たちの手で次へ繋げられた、そんな想いだった。

終演後ホテルに戻り、部屋でみんなで芝居の反省をしたりして、

演出の完一郎さんが仰った「この作品は皆のライフワークにしたらいい」との想いで、

それから20年間、毎年夏の公演を続け、全国へ200ステージを超える拡がりをみせ、劇団の代表作となった。


今まで様々なメンバーが参加し、

演出の鈴木完一郎さんはお亡くなりになり、原田一樹さんが引き継ぎ、さらなる新たな形を創り上げ、

初演メンバーの古田美奈子と照明の鵜飼守、そして初期メンバーでもある山田珠真子も天国へ旅立ち、とてもとても寂しいのだが、

今年も幕を上げる。

そう戦争と向き合うライフワークとして。

初演メンバーは南保大樹と岸並万里子しかいなくなってしまったが、

ゼロから創り上げたあの稽古の日々は色褪せない。

南保大樹



2003/12/5 知覧特攻平和会館前の「劇団東演石灯籠」にて

鹿児島県 知覧中学校体育館公演


知覧の宿泊先「さくら館」前
初演キャスト&ピアニスト&スタッフ全メンバー
撮影者 制作横川






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