「心ある母さんの会」~Cuore通信~

長野県飯田・下伊那で活動する「心ある母さんの会」です。会の活動やお産・子育てのことなど情報やアドバイスなど更新中。

新たな出生前診断 問題点は

2012-10-25 | 出生前診断
胎児のダウン症 妊婦の血液で

 胎児がダウン症かどうか妊婦の血液でほぼ確実に診断できる、米国で開発された新しい出生前診断が、臨床研究として昭和大(東京)などの一部の施設で、近く実施される。出生前診断は、結果によっては妊娠中絶にもつながるため、以前から倫理面の問題が指摘されてきた。今回の検査にはどんな問題があるのだろうか。

 出生前診断にはさまざまな種類があるが、ダウン症を例に取ると、既存の検査は「安全だが確率しか分からないもの」と「流産リスクが若干ある確定診断」に大別できる。前者の代表は、妊婦の血液中の物質を調べる「母体血清マーカー検査」。後者で多いのは、妊婦の腹部に針を刺して羊水中の胎児由来の細胞を調べる「羊水検査」だ。
 新しい検査の臨床研究を計画した佐合治彦・国立成育医療研究センター周産期センター長らの調査では、既存のこれら2検査法の年間実施数は、いずれも1万件台。近年増加傾向だが、100万人超の出生数に比べればごくわずかといえる。将来胎盤になる絨毛を採取する検査はさらに少ない。確定診断に流産のリスクがあることが、一つの歯止めになっていた面がありそうだ。
 これに対し新検査は、妊婦の血液に混じる胎児のDNAを使い、確定診断に近い99%の検出率があるとされる。「簡単な検査で分かるなら」と、受ける人が急拡大する可能性があるという。染色体異常の頻度が上がる、35歳以上の高齢出産の増加もある。
 出生前診断に詳しい医師らが心配するのは、「軽い気持ちで検査し、予想外の重い結果に衝撃を受け、悩む人が出かねない」(平原史樹・横浜市立大産婦人科教授)ということだ。「混乱の中で中絶など早まった決断をしてしまい、後々それを悔やむ可能性もある」と指摘する医師もいる。
 国内では、悩みを抱えた妊婦を支え、相談に乗る「遺伝カウンセリング」の態勢が極めて貧弱だ。臨床遺伝専門医の資格を持つ現役の産婦人科医は全国で約140人。全くいない県もある。
 一方で技術は進歩する。今回の新検査の前にも、超音波で「NT」と呼ばれる胎児の首の後ろのむくみの厚さを測り、ダウン症の確立を判定する検査が海外で登場。経験が浅い国内の医師から不用意に「異常がsるかも」などと告げられた妊婦が「中絶を」と思い詰めた事例などが、関係者の間で問題になっていた。
 昭和大産婦人科の市塚清健講師は「いったんマイナスイメージが強く植えつけられると、後ろからの修正は難しいことも多い。妊婦さんが最初に遺伝カウンセリングで正しい情報を聞くことが最も大切」と強調する。
 今回の新検査には限界もある。分かるのはダウン症など3種の染色体異常のみで、赤ちゃんの異常の原因としてはごく一部だ。
 こうした現状から、日本ダウン症協会岡山支部会長の上地玲子さん(45)は「検査できるという理由でダウン症だけがクローズアップされることに疑問を感じる」と話す。上地さんは、大学教員をしながら7歳のダウン症の娘を育てている。自らは「授かった命は大事にしよう」と出生前診断を受けなかったが、簡単な検査の登場で、世間の意識が「検査して当然」に変わっていくのが心配という。
 今回の臨床研究は対象者を限定して行われる。では、いま妊娠中や妊娠予定の人ができることは何だろう。出生前診断を検討するなら「受けるかどうか」の段階から遺伝カウンセリングが可能な施設を探したい。例えば、臨床遺伝専門医制度委員会のホームページには、生殖医療に関する遺伝カウンセリング相談受け入れ可能な臨床遺伝専門医と施設が掲載されている(トップページで「臨床遺伝専門医制度について)を選択、「全国専門医・専門歯科医・指導医一覧」ファイルの名簿右端「*」印)。それによると、10月10日現在で、県内では信大医学部(松本市)と県立こども病院(安曇野市)に該当の資格を持つ医師がそれぞれ1名いる。
 日本ダウン症協会は、出生前診断について相談に応じている
 (03-5287-6418、月曜~金曜日の午前10時~午後3時)。
 同協会ホームページには、ダウン症や子育てについて豊富な情報がある。

2012年10月19日 信濃毎日新聞より

産後の母親 広がる支援

2012-10-07 | 情報サイト
核家族化・晩産化で実家頼れず

 核家族に晩産化、さまざまな要因の影響で、出産後間もない最も助けが必要な時期にも、親を頼れない母親が増えている。そうした女性らを支える産後ケア事業が広がりを見せる一方、正しい知識で親身に世話を焼く、新しい産後サポート専門職の養成も始まった。

宿泊型ケア施設人気
サポート職養成も

 東京都世田谷区の三浦理香子さん(40)は、2年前に初めて長男を出産した際、体の弱い実母に遠慮して産後すぐから家事や育児を頑張った。1時間半ごとの授乳でほとんど眠れず、食事は夫が買ってきた弁当や出前で済ませる日々。「体も心も相当疲れていました」
 その経験から、今年5月に長女を出産した10日後、区内の「武蔵野台付属産後ケアセンター桜新町」を3泊4日で利用した。「夜は助産師さんに娘を預け、しっかり眠れた。利用者同士の話で不安もなくなり、みるみる自分が元気になるのが分かった」と三浦さん。
 同センターは、産後4ヶ月未満の母子を対象に助産師が24時間態勢で授乳などの助言をしながら見守る日本発の宿泊型子育て支援専門施設。利用料は1泊64000円と高額だが、区民は区の補助で自己負担は1割で済む。2008年の開設以来、利用者は年々増え11年度は743人。半数は35歳以上の高齢出産で、9割が核家族だ。
 萩原玲子センター長は「赤ちゃんの反応は首が据わる生後3~4ヶ月までは少なく、母親は充実感を得にくい。この時期の支援は特に重要」と話す。構成労働省の調査でも、03年~10年に虐待で死亡した子どもの役3割が生後3ヶ月以下だ。
 自治体が助産所などに委託する形式の産後ケア事業は新潟市や石川県白山市、鹿児島市なども取り組む。出産時だけ里帰りしたくても、仕事や祖父母の介護などで忙しい親が増え、娘の世話をしきれない事情もあるという。
 そんな中、新たな専門職育成の動きがある。今年3月、東京都助産師会の後援で一般社団法人「ドゥーラ協会」が発足した。「ほかの女性を支援する、経験豊かな女性」というギリシャ語が語源のドゥーラは、米国で助産師とは別に確立した職業。赤ちゃんのケアや家事に援助に加え、行政や専門家への橋渡しもする。
 協会は、友人ら身近な人の出産前後の世話をする「ホームドゥーラ」養成講座を5月にスタート。今後は認定者の中から個人事業主として働く「産後ドゥーラ」を養成、産婦人科や助産院と連携して妊産婦を支援する体制づくりにつなげたいという。協会への問い合わせはホームページ(http://doulajapan.com)


県内自治体でも取り組み

 長野県内でも「産後ケア」などの取り組みが各地で始まっている。長野市では、産後の体調不良などで病院や助産所に入院する市内在住の女性に対し、料金の半額を補助する「産後ケア事業」を実施。市が指定する市内10ヶ所の病院や助産所が対象で、夜間は助産所などに赤ん坊を預けたり、授乳のアドバイスを受けたりして過ごす。
 ただ、市内の指定病院でこの事業を利用した受け入れ件数は昨年度は0件。担当者は「長野市内では育児をサポートしてくれる親などは身近にいる人が多いからではないか」と話す。
 松本市は、核家族などのため産後の育児の手助けを得られない家庭を対象に、助産師やヘルパーを派遣する「市育児ママヘルプサービス」を実施。1時間800円で、助産師が育児の相談に乗ったり、ヘルパーが洗濯や調理を手伝ったりする。岡谷市や伊那市も有料でヘルパーなどを派遣し、おむつ交換や掃除などを手伝うサービスを実施している。

2012年8月18日(土)信濃毎日新聞夕刊より

 

新出生前診断で指針作り

2012-10-03 | 出生前診断
 妊婦の血液を使った新しい出生前診断の臨床研究が昭和大病院など複数の医療機関で始まることを受け、日本産婦人科学会は2日、外部の専門家を交えた検討委員会を開き、検査の対象やカウンセリングのあり方について学会指針を12月までにまとめる方針を決めた。
 11月中に公開シンポジウムを開催し、12月の同学会理事会に報告する。小西郁生理事長は「妊娠出産や周産期医療のあり方に深く影響を及ぼす重大な事項。さまざまな方の意見を採り入れながら慎重に進んでいきたい」と話した。
 新しい検査は妊婦の血液だけで、胎児がダウン症かどうかをほぼ確実に検査できる。このため、「産婦人科だけの問題ではない」として、検討委には小児科や遺伝学、生命倫理などの分野の専門家の先生も参加した。
 臨床研究を予定している国立育成医療研究センターの左合治彦周産期センター長もオブザーバーとして出席した



2012年10月3日 信濃毎日新聞より