「心ある母さんの会」~Cuore通信~

長野県飯田・下伊那で活動する「心ある母さんの会」です。会の活動やお産・子育てのことなど情報やアドバイスなど更新中。

不育症ふたたび  杉浦真弓

2012-07-05 | Weblog
紙つぶて

 流産を繰り返す不育症の原因に、免疫異常である抗リン脂質抗体症候群、子宮奇形、夫婦染色体異常があります。患者の約30%に明らかな原因が見つかりますが、約50%は夫婦に問題はなく、胎児染色体異常を繰り返す症例です。検査が普及していないため「原因不明」となりますが、“良い卵”に当れば出産に至ります。真の原因不明は、残りの約20%です。
 原因のうち、抗リン脂質抗体症候群は唯一、治療の有効性が証明されており、若年性脳梗塞や心筋梗塞も起こす難病です。外部の委託検査では不十分なので、うちの大学では、国際基準を考慮して1993年に私が確立した検査方法で、自ら測定しています。治療には副作用や費用負担があり、過剰な治療を避けるため、測定法を標準化するのが最重要の研究課題です。
 「原因不明」の不育症に対して、有効性が確立されていないのに、多くの患者さんが薬物療法や受精卵診断を希望します。何もしないと不安だからです。国主導で全国に相談窓口が開設されました。ただ、臨床経験の乏しい病院での実施も多く、担当者は知識の習得の努力が必要です。
 名古屋市では、先月から「豆芝ダイヤル」が始まりました。安産の象徴とされる犬にあやかって名付けたこの電話相談。心理士さんが不安にお答えします。治療できる流産は限られ、ゼロにはできません。それでも出産を望む人が流産を乗り越えられるように。
(名古屋市立大婦人科教授)

2012年6月19日 中日新聞より