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言の葉辞典 『祭』

2023-09-08 21:00:00 | 言の葉/慣用句

 ■『祭』

 《意味》

 祭りとは、神仏や祖先の霊に祈願、感謝する儀式。

 《語源・由来》

  祭りは、動詞「祭る」の連用形の名詞化。
 神仏に物を献上したり、差し上げることが祭りの原義と見られるため、謙譲語「たてまつる」と同じ意味の「奉る(まつる)」と同源と考えられる。
 「待つ」を語源とする説もあるが、アクセントや意味から考えて不自然である。

 祭(まつり)とは、感謝や祈り、慰霊のために神仏および祖先をまつる行為(儀式)である。
 供物そのほかが捧げられる。 祭祀(さいし)、祭礼(さいれい)、祭儀(さいぎ)。
 また、まつりの漢字の表記(祀り・祭り・奉り・政りなど)によって、用途や意味合いが異なる。

 《概要》

 ▼原初的形態

 祭祀・祭礼の形は、世界各地で多様な形を示す。そして、原初の祭は、一つの信仰に基づいていたと考えられる。
 すなわち、豊穣への感謝・祈りであり、ジェームズ・フレイザーの『金枝篇』では、生命の死・再生を通して考察された。
 農耕社会においては、収穫祭が古いものであるが、その他にも祭壇に動物の生贄を捧げる形式があり、ともに命によって豊穣を得られる信仰が窺える。
 『金枝篇』に載せられている例でいえば、ヨーロッパのキリスト教以前の色を濃く留めている風習の一つで、収穫した穀物を使い人形状のパンまたはクッキー(人体の象徴)を作り、分割する祭礼があり、聖餐との類似が指摘できる。
 キリスト教・仏教などの世界宗教にも祭礼がみられるが、教義より儀式・慣習によるところが大きい点で、祭の要素は、本質的に民族宗教に顕著であるともいえる。
 狩猟民族でも、獲物を捧げ豊猟を祈願する儀礼がみられる(熊送りなど)。
 また、先にも述べたが、キリスト教の復活祭やボロブドゥール遺跡で行われているワイシャックのように、キリスト教・仏教などの世界宗教に基づく祭りもある。
 一方、アングロ・サクソン諸国のハロウィーンなどのように、世界宗教以前の信仰に基づくものや世界宗教が伝来した各地で習合した形で伝わっている事例もある。

 《日本語の「まつり」の語源と原義》

 「まつり」という言葉は「祀る」の名詞形で、本来は神を祀ること、またはその儀式を指すものである。
 この意味では、個人がそういった儀式に参加することも「まつり」であり、現在でも地鎮祭、祈願祭などの祭がそれにあたる。
 日本は古代において、祭祀を司る者と政治を司る者が一致した祭政一致の体制であったため、政治のことを政(まつりごと)とも呼ぶ。
 「まつり」や「まつる」という古語が先であり、その後、漢字の流入により「祭り」・「奉り」・「祀り」・「政り」・「纏り」などの文字が充てられた。
 現在は「祭りと祀り」が同義で「祀りと奉り」が同義ともいわれるが、漢字の由来とともに意味も分かれているので下記に記す。
 「祀り」は、神・尊(みこと)に祈ること、またはその儀式を指すものである。
 これは祀りが、祈りに通じることから神職やそれに順ずる者(福男・福娘や弓矢の神事の矢取り)などが行う「祈祷」や「神との交信の結果としての占い」などであり、いわゆる「神社神道」の本質としての祀りでもある。
 この祀りは神楽(かぐら)などの巫女の舞や太神楽などの曲芸や獅子舞などであり、広く親しまれるものとして恵比寿講などがある。
 その起源は古神道などの日本の民間信仰にもあり、古くは神和ぎ(かんなぎ)といい「そこに宿る魂や命が、荒ぶる神にならぬよう」にと祈ることであり、それらが、道祖神や地蔵や祠や塚や供養塔としての建立や、手を合わせ日々の感謝を祈ることであり、また神社神道の神社にて祈願祈念することも同様である。

 「祭り」は命・魂・霊・御霊(みたま)を慰めるもの(慰霊)である。「祭」は、漢字の本来の意味において葬儀のことであり、現在の日本と中国では祭りは正反対の意味と捉えられているが、慰霊という点に着眼すれば本質的な部分では同じ意味でもある。
 古神道の本質の一つでもある先祖崇拝が、仏教と習合(神仏習合)して現在に伝わるものとして、お盆(純粋な仏教行事としては釈迦を奉る盂蘭盆があり、同時期におこなわれる)があり、辞書の説明では先祖崇拝の祭りと記載されている。
 鯨祭りといわれる祭りが、日本各地の津々浦々で行われているが、それらは、鯨突き(捕鯨)によって命を落としたクジラを慰霊するための祭りである。

 「奉り」は、奉る(たてまつる)とも読む。
 献上や召し上げる・上に見るなどの意味もあり、一般的な捉え方として、日本神話の人格神(人の肖像と人と同じような心を持つ日本創世の神々)や朝廷や公家に対する行為をさし、これは、神社神道の賽神の多くが人格神でもあるが、皇室神道に本質がある「尊(みこと)」に対する謙譲の精神を内包した「まつり」である。
 その起源は、自然崇拝である古神道にまで遡り、日本神話の海幸彦と山幸彦にあるように釣針(古くは銛も釣針も一つの概念であった)や弓矢は、幸(さち)といい神に供物(海の幸山の幸)を「奉げる」神聖な漁り(いさり)・狩り(かり)の得物(えもの・道具や神聖な武器)であった。
 古くから漁師や猟師は、獲物(えもの)を獲る(える)と神々の取り分として、大地や海にその収穫の一部を還した。
 このような行いは、漁師や猟師だけに限らず、その他の農林水産に係わる生業(なりわい)から、現在の醸造や酒造など職業としての神事や、各地域の「おまつり」にもあり、地鎮祭や上棟式でも御神酒(おみき)や御米(おこめ)が大地に還される。

 「政り」については、日本は古代からの信仰や社会である、いわゆる古神道おいて、祭祀を司る者(まつり)と政治を司る者(まつり)は、同じ意味であり、この二つの「まつり」が一致した祭政一致といわれるものであったため、政治のことを政(まつりごと)とも呼んだ。
 古くは卑弥呼なども祭礼を司る巫女や祈祷師であり、祈祷や占いによって執政したといわれ、平安時代には神職が道教の陰陽五行思想を取り込み陰陽道と陰陽師という思想と役職を得て官僚として大きな勢力を持ち執政した。
 またこうした政と祭りに一致は中央政府に限らず、地方や町や集落でも、その年の吉凶を占う祭りや、普請としての祭りが行われ、「自治としての政」に対し資金調達や、吉凶の結果による社会基盤の実施の時期の決定や執政の指針とした。
 なお、日本の祭について英語で紹介する場合、「フェスティバル」・「リチュアル」・「セレモニー」がそれぞれ内容に応じて訳語として用いられる。

 ▼祭祀と祭礼

 祭祀と祭礼に厳密な区分はなく、便宜的な区分である。
 「まつり」は、超自然的存在への様式化された行為である。祈願、感謝、謝罪、崇敬、帰依、服従の意思を伝え、意義を確認するために行われた(祭祀の段階)。
 祭祀は定期的に行われるとは限らないが、年中行事や通過儀礼と関連して定期的に行われるものが多い。
 このことによって、「まつり」は、日常生活のサイクルと深く結びつき、民俗学でいう「ハレとケ」のサイクルのなかの「ハレ(非日常性)」の空間・時間を象徴するものとなった。
 社会的に見れば、共同体全体によって行われ、共同体統合の儀礼として機能した(祭礼の第一段階)。
 共同体が崩壊し、都市が出現すると、都市民の統合の儀礼としての機能を強め、宗教的意味は建前となり、山車の曳行や芸能の披露といった娯楽性が追求されるようになった。
 「まつり」を行う者と、「まつり」を鑑賞する者の分化が生じた(祭礼の第二段階)。
 大衆統合としての機能と娯楽性のさらなる追求の結果、元来の宗教的意味は、忘却され、あるいは機能を喪失し、世俗的な催事としての「まつり」が登場した。

 例えば大相撲も本来は神道としての奉納の祭りであり、神事でもあるが、宗教への関心の薄れなどから、大相撲のように「神事や祭礼としての祭りである」ことが忘れられたり、祭祀に伴う賑やかな行事の方のみについて「祭」と認識される場合もあり、元から祭祀と関係なく行われる賑やかなイベントについて「祭」と呼ばれることもある。
 規模が大きく、地域を挙げて行われているような行事の全体を指して「祭」と呼ぶこともある。

 ▼建築祭礼

 1981年(昭和56年)に番匠保存会が設立され、現在も京都、奈良において番匠(位の高い大工)による秘儀、建築祭礼の秘伝の伝承、継承は続いており、現在でも春日大社、興福寺などの造営では、番匠棟上槌打という建築祭礼、建築儀式が行われている。
 朝廷や幾内を中心とする社寺に属した技術者が陰陽道の知識を深く保持し、特に法隆寺や四天王寺などに属した大工は、流派を形成し、その技術と知識は秘伝として口伝にて継承していたと建築史学者内藤昌が文献に記載している。
 陰陽道として、神道、仏道、道教と深く関わっており、建築儀礼、及び祭祀において、建物やその住まい手の繁栄を祈願する儀式、祭祀がおこなわれてきた。

 《季語》

 季語としての祭(まつり)は、夏の季語(三夏の季語)である。
 分類は行事/人事。
 季語「祭」の初出は、野々口立圃によって寛永13年(1636年)に刊行された俳諧論書『はなひ草』(「花火草」「嚔草」とも記す)においてであった。
 すなわち、江戸時代初期の、史上初めて印刷公刊された俳諧の式目・作法の書に記載された。
 季語・季題の世界で、単に「祭」といえば、江戸・京都・大坂などといった都市部の神社で執り行われる夏祭を指す。
 古来、夏は疫病が発生しやすく、それをもたらす元凶と信じられていた怨霊を鎮めたり祓ったりすることは人々の切実な願いであり、
 その思いを籠めて行うのが夏祭であった。
 災禍を遠ざけてくれる神様が降臨するのは夜と考えられていたため、祭はたいてい宵宮から始められる。
 このような習俗を背景として、夏は祭の季節、夏の祭は夜行われるもの、そしてまた「祭」といえば第一に夏祭を指すようになった。
 俳諧・俳句の世界でもそれに伴い、「祭」は「夏祭」を意味する季語となり、一方で、春の祭は「春祭」、秋の祭は「秋祭」と、季節名を冠することで季語として用いられるようになった。
 なお、現代の夏祭には悪疫退散を祈念するところの全く見られない単なる“夏の催事(サマーイベント)”も数多く見られるが、そういったものに季語「祭」および「夏祭」を当てたとしても、間違いとまでは言えない。あるいはまた、依って立つ文化が日本古来の祭と全く異なる日本国外の祭を対象として季語「祭」を用いることも、これを認めないという考え方は、少なくとも一般的でない。

 ▼「祭」を親季語とする子季語

 ・夏祭(なつまつり)
 ・神輿(みこし)
 ・渡御(とぎょ。意:祭礼の際の、神輿のお出まし。神輿が進むこと)
 ・山車(だし)
 ・祭太鼓(まつりたいこ)
 ・祭笛(まつりぶえ)
 ・宵宮(よいみや、よみや。歴史的仮名遣:よひみや、よみや。意:本祭の前夜に行う祭)
 ・宵祭(よいまつり。歴史的仮名遣:よひまつり。意:宵宮と同義)
 ・陰祭(かげまつり。意:本祭が隔年で行われる場合の、例祭の無い年に行われる簡略な祭)
 ・本祭(ほんまつり。意:宵祭・陰祭に対して、本式に行う祭。例祭のこと)
 ・樽神輿(たるみこし。意:神酒の空き樽を神輿に仕立てたもの)
 ・祭囃子(まつりばやし)
 ・祭提燈(まつりじょうちん)
 ・祭衣(まつりごろも。意:祭りの装束)
 ・祭舟(まつりぶね。意:祭りで使う舟)。

 ※関連季語として春祭(はるまつり)と秋祭(あきまつり)が考えられるものの、歳時記には関連季語として記載されていない。
 なお、冬祭(ふゆまつり)は季語になっていない。

 関連項目 ー 縁日(フェスティバル等) ー

 縁日(えんにち)とは、神仏の降誕、降臨、示現、誓願などの縁(ゆかり)のある日、すなわち有縁(うえん)の日のことである。

 《概要》

 ▼縁日

 縁日には祭祀や供養が行われ、この日に参詣すると普段以上の御利益があると信じられた。
 特に、年の最初(または月の最初)の縁日を初(はつ)○○(初天神、初観音、初不動など。干支を縁日とする場合は初午、初巳など)と称し、年の最後の縁日を納め(おさめ)の○○または終い(しまい)○○と称される。
 近代以降では祭りが催され、露店などが多く出る。
 明治期には縁日欄が新聞に掲載された。

 ▼フェスティバル

 フェスティバル(festival, fest(s))・フェスタ(festa, Festa)、フェスト(fest, Fest)、フェス(fes)は、英語などで(宗教的な)祭礼・祭典・祝祭や祝祭日のこと。
 転じて、世俗的な催事のこと。

 ▼カーニバル

 《意味》

 謝肉祭のこと。
 仮装したパレードが行なわれたりする、カトリックなど西方教会の文化圏で四旬節の前に見られる通俗的な祝祭。

 仮装したパレードや菓子や花を投げる行事などが行われてきたことから、現代では宗教的な背景のない単なる祝祭をもカーニバルと称することが多い。

 《語源》

 カーニバルの語源は、俗ラテン語 carnem(肉を)levare(取り除く)に由来する。
 元々は四旬節が始まる灰の水曜日の前夜に開かれた、肉に別れを告げる宴のことを指した。
 ドイツ語のファストナハトなどもここに由来し、「断食の前夜」の意で、四旬節の断食(大斎)の前に行われる祭りであることを意味する。
 別の説には、謝肉祭は古いゲルマン人の春の到来を喜ぶ祭りに由来し、キリスト教の中に入って、一週間教会の内外で羽目を外した祝祭を繰り返し、その最後に自分たちの狼藉ぶりの責任を大きな藁人形に転嫁して、それを火あぶりにして祭りは閉幕するというのがその原初的なかたちであったという。
 カーニバルの語源は、この農耕祭で船を仮装した山車carrus navalis(車・船の意)を由来とする説もあるが、断食の前という意味の方が古いという研究者もいる。

 《日本としての種類と目的》

 ・新年祭
  新しい年を迎えて、この1年間の家庭の無事(家内安全)や会社の事業繁栄、安全を祈る。
 ・祈年祭
  春の耕作始めにあたり、五穀豊穣を祈るお祭り。
 ・収穫祭
  作物の無事の収穫を祝うため農村で行われる祭祀行事。
 ・大漁祭
  大漁と海の安全を祈願したお祭り。
 ・厄祓い
  その年に当たっては、神様の御加護により災厄から身を護るため、神社に参詣をして災厄を祓う厄祓い、やくばらいの儀(厄除け)がおこなわれる。
 ・祈願祭
  事故やお祭り、また工事などの安全を祈願すること。
 ・地鎮祭
  土木工事や建築などで工事を始める前に行う、その土地の守護神(鎮守神)を祀り、土地を利用させてもらうことの許しを得る。
 ・慰霊祭
  亡くなった人の心に寄り添い、その功績や徳を偲び、御魂を慰めるために行う儀式のこと。
 ・謝肉祭
 ・産業祭
  社業の繁栄・操業の安全を祈願する。
 ・体育祭
 ・文化祭

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  「祭のあと」作詞 岡本おさみ

 祭りのあとの淋しさが
 いやでもやってくるのなら
 祭りのあとの淋しさは
 たとえば女でまぎらわし

 もう帰ろう、もう帰ってしまおう
 寝静まった街を抜けて

 人を怨むも恥しく
 人をほめるも恥しく
 なんのために憎むのか
 なんの怨みで憎むのか

 もう眠ろう、もう眠ってしまおう
 臥待月の出るまでは

 日々を慰安が吹き荒れて
 帰ってゆける場所がない
 日々を慰安が吹きぬけて
 死んでしまうに早すぎる

 もう笑おう、もう笑ってしまおう
 昨日の夢は冗談だったんだよと

 祭りのあとの淋しさは
 死んだ女にくれてやろ
 祭りのあとの淋しさは
 死んだ男にくれてやろ

 もう怨むまい、もう怨むのはよそう
 今宵の酒に酔いしれて

 もう怨むまい、もう裏むねはよそう
 今宵の酒に酔いしれて

 〔情報元 : Uta-net〕




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