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❖ 地獄八景亡者戯 ⑴ ❖
桂 米朝
恐ろしく古風な「地獄八景亡者戯(じごくばっけぇもぉじゃのたわむれ)」 といぅ噺を聞ぃていただきます。
あの世へご案内しょ~といぅわけで、どっ ち道まぁ人間いっぺんは行かないかんところでっさかいな、まぁホンマに行 くより前に、落語でいっぺん知っといてもらおかといぅわけで。
え~、ここにございましたのが我々同様といぅ、いたってもぉ気楽な男で、よそから大きなサバをもらいまして、手料理でこいつをアテにして一杯呑んだところぉが、それに当たったんですかなぁ、ゴロッと横になって寝ますと、夢ともなく現(うつつ)ともなく、空々寂々として暗ぁ~い所へ出てまいりま した。
前へ行く者、あとから来る者、銘々(めぇめぇ)角帽子(すんぼぉし)といぅ三角の布(きれ)を額に当てまして、首からは頭陀袋(ずだぶくろ)、麻幹(おが ら)の杖を手について、糸より細ぉい声を上げ「お~~いッ」
●もぉし、そこへお出かけになんのは伊勢屋のご隠居と違いますか?
あぁ、 やっぱりそぉや。
伊勢屋のご隠居!
■おぉ、こら誰やと思たら喜ぃさんやないか。えらいとこで会ぉたなぁ。
●えらいとこでお目にかかりましたなぁ、まぁ まぁ、ご機嫌よろしゅ~。
■あんまりご機嫌えぇことないでこれわ、こんなとこで会ぉてんねや。
●あぁホンに、お変わりも……、ありすぎるしなぁ、どない言ぅて挨拶してえぇねや分からん。
■まぁまぁ、挨拶なんかどぉでもえぇが、ホンマにえらいとこで会ぉた。
●わて、あんたのお葬式、手伝い(てったい)に行きましたんやで。
■来てくれてた なぁ。
●分かってますか?
■分かったぁるがな、わしゃ棺桶の隙間から見てたんやズ~ッと「あぁ、あいつも来てくれてる、誰それも来てくれてるなぁ」 と思て。
●さよか。立派なお葬式でしたなぁ、金々もぉもぉとしたお飾りがし てあって、お供えが山のよぉで、香典かてぎょ~さん集まってましたで。
え~、ここにございましたのが我々同様といぅ、いたってもぉ気楽な男で、
よそから大きなサバをもらいまして、手料理でこいつをアテにして一杯呑んだところぉが、それに当たったんですかなぁ、ゴロッと横になって寝ますと、夢ともなく現(うつつ)ともなく、空々寂々として暗ぁ~い所へ出てまいりました。
前へ行く者、あとから来る者、銘々(めぇめぇ)角帽子(すんぼぉし)といぅ、三角の布(きれ)を額に当てまして、首からは頭陀袋(ずだぶくろ)、麻幹(おが ら)の杖を手について、糸より細ぉい声を上げ「お~~いッ」
●もぉし、そこへお出かけになんのは伊勢屋のご隠居と違いますか? あぁ、やっぱりそぉや。伊勢屋のご隠居!
■おぉ、こら誰やと思たら喜ぃさんやないか。
えらいとこで会ぉたなぁ。
●えらいとこでお目にかかりましたなぁ、まぁ まぁ、ご機嫌よろしゅ~。
■あんまりご機嫌えぇことないでこれわ、こんなとこで会ぉてんねや。
●あぁホンに、お変わりも……、ありすぎるしなぁ、どない言ぅて挨拶してえぇねや分からん。
■まぁまぁ、挨拶なんかどぉでもえぇが、ホンマにえらいとこで会ぉた。
●わて、あんたのお葬式、手伝い(てったい)に行きましたんやで。
■来てくれてたなぁ。
●分かってますか?
■分かったぁるがな、わしゃ棺桶の隙間から見てた んやズ~ッと「あぁ、あいつも来てくれてる、誰それも来てくれてるなぁ」 と思て。
●さよか。
立派なお葬式でしたなぁ、金々もぉもぉとしたお飾りがしてあって、お供えが山のよぉで、香典かてぎょ~さん集まってましたで。
■あの香典の中から、おまはん千円誤魔化したやろ。
●そんなん分かってますか?
■分かったぁるがな。
何であんなことをすんねん?
●いや、誤魔化したわけやないんです。
帳場あずかってたんが煙草屋の大将でな、お金を勘定してはソロバンを入れて「千円余る」またソロバン入れ直して金勘定して「千円余る……」あんまり気の毒なさかい、ちょっと千円誤魔化したら「あぁ、 ちょ~ど合ぉた」ちゅうて……
■そら何をすんねやいな。
まぁしかし、わしの葬式に来てくれたおまはんが、何でこんなところへ?
●さぁ、人間といぅのは分からんもんでんなぁ、あれから四、五日あとにな、こんな大ぉきなサバ、よそからもろたんだ。
わたい サバが好きで、手料理でこいつを二枚に下ろして、骨付きのほぉ戸棚へなおして、片身はあんた刺し身にしてそれで一杯呑んだら、当たったんですなぁ。
そんなりス~ッとこんなとこへ来てしもた。
■そらえらい災難やったなぁ。
●しかし、人間死んでみるといろいろ心残りなことがおまんなぁ。
■そらそぉや、誰しも心残りのない者はないわい。
おまはんの心残り、当ててみよか?
●分かりますか?
■分かるがな。一緒んなってまだ二年にもならん嫁はん、 可愛ぃ女房か?
●いやいや、一年も経ったらもぉえぇ加減なもんで。
■そんな 薄情なこと言ぃないな……。
お腹に子どもでもできてて、顔を見ずに死んだのが?
●いやいや、子どもは気(け)も無い。
■ほんなら、お金に?
●金なんかあるわけおまへんがな。
■ほな、何に気(き)が残ってんねや?
●わたいが残念なと言ぅのはなぁ、心残り、戸棚へなおしといた片身のサバねぇ、あれ、おんなじ死ぬのんやったらみな喰て死んだらよかったと思たら、悔しぃて……
■よぉそんな気楽なこと言ぅてる、こぉいぅところへ来る人はみんな大きな心残りを持ったはんねや。
●そらそぉでっしゃろなぁ、で、わたいらこれから どこ行きまんねやろなぁ?
■さぁさぁさぁ、まぁ地獄か極楽か、閻魔はんの お裁きを受けなしゃ~ない。
●相なるべくは、その極楽といぅところへ行きたいもんでやすが……、しかし、あんた、わたいよりだいぶ早よ死んでんのに、 一緒になったのはどぉいぅわけでんねん?
■争われんもんや、わしゃ足がリューマチやったやろがな、どぉしても道が はかどらんねん。
何やったら先行ってもろたらえぇで。
●いやいや、これこそ ホンマに急がん旅や、昔話しながら行きまひょいな。
二人(ふたぁり)が話をしながら道をとって行く、そのあとへ出てまいりましたひと塊、こら陽気な連中で娑婆の大金持の若旦那「もぉ遊びたいことも、したいことも何にもみなし尽くしてしもた。
もぉこのうえはあの世へでもひとつ遊びに行こやないか」といぅことを考えましてな、そぉするとそれを聞ぃた馴染みの芸者、舞妓、太鼓持ちやとか女将さん連中が「若旦那があの世へ行かはんねやてぇ、是非お供を」「ほな、あの世ツアーちゅうやつを組もか」てなことなりまして「どぉして行こ? 今まで当たるのが恐いためにフグは美味しぃもんやそぉなけど、 恐おぉてよぉ食べなんだ、フグに当たって死のぉやないか」ちゅうわけで、 衆議一決いたしまして、フグにフグを買いにやりましてな、フグに料理して フグに食べて、フグに当たってフグに冥土へ来てしもた。
そんなんでっさかい出で立ちからして変わってますなぁ、男は黒羽二重にフグの五つ紋がボンボンボンッと付いたぁる。
女のほぉもフグの紋付きに裾 のほぉにこの根深やとか水菜やとか糸コンニャクやとか豆腐やとか、裾模様 に付いてるといぅややこしぃ格好で、喧しぃ言ぅてやってまいります。
その道中の陽ぉ気なこと……♪
♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫
▲早よ来いよ、早よ来いよ。
★ちょっと待っとくなはれな、男はんはえぇわいな。
わてらそんな早よ歩かれしまへんがな。みな早よおいでや。
●そんなこと 言われたかて、そな早よ歩かれへん(これ、舞子はんのビラビラの簪でんね ん……)。
▲早よ来い、早よ来い……、ちょっと若旦那、待ったんなはれな。
女ご連中そない早よ歩かれしまへんがな。
何であんたそない急ぎ足でトット コトットコ歩いてなはんねん?
◆いや、ちょっと考えごとしてたもんやさかい、えらいすまなんだ。
▲考えごとやなんて、あんたうつむいて陰気な顔してトットトット急ぎ足で、何ぞ心配なこと、そんなこと忘れて、派手に陽気に賑やかにワァ~ッと死んで来てまんねやないか、その陰気な顔おきなはれ、もちょっと陽気なこと考えよ。
あの世行たらな、賽の河原かどっかでバ~ッと地所買占めてそこへレジャー センターか何かバ~ッと……
◆相変わらず気楽な男やなぁ、そこへ行くまで に一つ心配なことがあんねん。
▲何がでんねん?
◆わしゃ娑婆にいてる時分に地獄極楽の絵といぅのを見た ことがあるなぁ。
そぉすると、三途の川とか葬頭(そぉず)の川とかいぅ川が あってやな、そこにこの柳の木ぃみたいな木が立ってんねん。
ショ~ズカの 婆といぅ恐い顔をしたお婆んがおってやな、亡者の着物を剥ぎ取ってはこの 木の枝へ引っ掛けてる。
まぁ男はしょがないが、女連中裸にされんのは可哀 相なさかい。
地獄の沙汰も金次第といぅことがあるで、そこはまぁ裸になら ずに金で話付く工夫はないかいなぁ、と思て思案してるねん。
▲ほななんでやすかいな、金でそのお婆んを「うん」と言わしたらよろしぃ のんかいな。この一八(いっぱち)を忘れてもろたら困るなぁ。
◆何でや?
▲何でやて、金でお婆んをウンと言わすのん、わての十八番だっしゃないか。
前、あんたミナミに深い馴染みのこれがあるんやがな、せやのにおんなじミナ ミでほかの芸妓に手ぇ出しなはったがな。
これのお母んが承知するかいな、怒って来てな「手切れ」ちゅう話になった時に、向こぉがどぉしても五百万円出せぇといぅのを四百万円で話を付けた、あの時の腕を忘れてもろては困るなぁ。
◆ちょっと待ちぃな、あの時わしやっぱり五百万出したで。
▲あッ
◆「あッ」やあらへんがな。
ほなあの時、仲に立ってお前百万もいてたんかいな。
▲こん なとこでバレるとわ……
◆悪いやっちゃなぁ、こいつ。
しかしまぁまぁ、お前ここで言ぅてしもてよかったんやで、改めてあの百万は上げるさかいに、それで帳消しや。
閻魔はんの前でこれがバレたらえらいことになるがな。
▲何ででんねん?
◆ほかの者はみな極楽へ通る、お前はその罪で地獄へ送ら れるねん。
▲言ぅてしもたらよろしのん?
◆懺悔と言ぅて、しゃべってしまうとその身の罪は滅びるとしたぁる。
▲さよか。もひとつあんのん言ぅてしまお か知らん。
◆まだ何ぞあんのんかいな?
▲箱根行た時にねぇ、あんたのあの上 等の時計が見えんよぉなった言ぅてた、あれわたいや。
◆何やいなこの男わ。一緒になって探し回りやがって、こんな悪いやつない でホンマに……。
ほな、改めてあの時計もおまはんに上げる。
▲おっき、あり がとぉ。
それから熱海行た時……
◆ちょっと待て、おい。何やいな?
▲あの 時のダイヤの指輪もわたいや。
◆盗人連れて歩いてたんや。
ほなもぉあれも上 げるわ。
▲それから……
◆もぉえぇっちゅうのに、何ぼあってもな、わしからやった やつはみな帳消しにしたげる。
よそでやったんは知らんで。
▲よそではしてし まへん。
もぉ、し易い人に決めてたさかい……
◆どついても音のせんやっちゃなぁ、そんなら財布を預けとくさかいな、ひとつその、話付けてきて。
▲へっ、 ちょっとお待ちを……
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
▲えぇ~ッと、これが三途の川らしぃが……、柳みたいな木ぃっちゅうのが これやな。
お婆んなんかどこにもおれへんがな……、あぁ、あんなとこに茶 店があるわ……
▲ちょっとお尋んねします。
●はい、どぉぞまぁお掛け。
▲あのぉ~、これが三途の川っちゅうやつでんなぁ。
●はぁ、これがあの有名な三途の川でございます。
▲で、あの木があそこに立ってまんなぁ、あの下にショ~ズカの婆といぅ恐わぁいアバラ見せたお婆さんがおってでんなぁ、こんな頭の。
亡者の着物 剥ぎ取って木の枝に引っ掛けたりするといぅ話を聞ぃてんまんねんけど、今日は見当たりまへんが、お婆ん今日は休みですか?
●いや、休みといぅわけやございません。
あのお婆さんについてはいろんな 話がございますが、まぁお掛けやす、お茶でも入れまっさかい。
まぁあんた も古いことおっしゃるけどな、もぉショ~ズカの婆が「奪衣婆(だつえば)」 ちゅうてな、あんなことやってたん、そらもぉよっぽど昔の話だっせ。
▲あぁ、あら昔の話。
●はぁ、そんなことあらしまへんねん。終戦からこっち、 地獄もよっぽど変わりましてな「あぁいぅことはもぉやめて、もっと民主的 にせないかん」いぅて、あぁいぅのはみな廃止になりましてん。
▲あぁ、さよかぁ。
●あのお婆さんのうちゃ先祖代々、家の権利とか格式とかいぅやつで、 ズ~ッと亡者の着物剥ぎ取るのん商売にしてはったんやけども「それはいかん」ちゅうことなってな。
▲お婆ん、困りましたやろなぁ。
●まぁその当座は失業保険なんかもろてやったはりましたけど、それでは困るいぅて閻魔はんのところへ相談に行かはったん。
ほな閻魔はんも「お前とこはズッと代々あれを家業にしてきたんやさかい困るやろ」いぅて、相談に乗ってやってるうちにな、お婆さんちょっと器量がえぇもんやさかい、そこ へ閻魔はん目ぇつけて、ショ~ズカのお婆さん二号さんにしはりましてな。
▲閻魔も物好きやなぁまた、ショ~ズカの婆二号さんにせんかて、ほかにありそぉなもんや。
●いえ「婆」といぅのはまぁ役の名前で、お婆さんなかなか婀娜(あだ)な年増でっせ。
で、閻魔はんのお世話んなって囲いもんなってましてんけど、退屈なさかいな「何か商売がしたい、バーでも開こか」ちゅうて。
▲よぉあるやつでんなぁ。
●で、バー「ババ」ちゅう店持ちはりました。
せやけどまぁ、閻魔はんも忙しぃさかい、月にいっぺん来るやら二へん来るやら分からん、お婆さんも退屈なもんやさかいちょっとヨロめかはったんでっせ。
▲ヨロめく?
●あぁ、あのバーテンさんのな赤い衆が。
▲赤い衆?
●赤鬼やさかい。
若い衆と違う、こっちでは「赤い衆」とこない言ぃます。
これがちょっと鬼前がえぇもんやさかい、閻魔はんの目ぇ盗んで間鬼しはって。
▲ちょ、ちょっと待っとくなはれ、間男を間鬼とこぉなりまんのんかいな。
●この人なかなか若いさかいなぁ、学生アルバイトで。
▲ちょいちょい分からんことが出てくんなぁ……、こっちにも学生アルバイト? やっぱ 大学やなんかありまんのか?
●ありますがな、この人は獄大の学生さんでな。
▲獄大?
●地獄大学いぅて、これが一番の名門でんねん。
なかなか入られしまへんねやで。
▲へぇ、ほなこっ ちもやっぱり入試難やなんかおますのん?
●当たり前でんがな。
あら、こっ ちが本場でんがな「受験地獄」言ぅさかいな。
▲受験地獄はこちらが本場で、 娑婆が真似してる?
●そぉでんがな。
もぉいろんなことがありましたんやけどな、お婆さんが一 緒になったもんやさかい、閻魔はんにバレてなぁ。
▲怒ったやろなぁ?
●いぃ えぇ、閻魔はんさばけたお方「まぁわしが忙しさかい無理もない、好き合ぉ てんねやったら夫婦になったらえぇがな」
▲おぉ、閻魔んに解決したな。
●あ んたもシャレ言ぅてなはるなぁ……、せやけども、目の前でウロウロされる と困るさかいいぅて、地獄追放になりましてなぁ。
▲へぇ、困ったやろなぁ?
●ところが、お婆さんの遠縁に当たるのが、雷の五郎八っつぁんでな、ここ頼って行きはりました。
で、その学生さん赤い衆がな、夕立の水汲みに雇われて行きはった、秋になって暇んなったら、慣れ ん仕事やったもんやさかい体傷めてなぁ、もぉズッと寝たきりなってしもて、 お婆さんはさぁ、医者には見せんならんわ、薬代は要るわ、食べてはいかんならんわ、困った挙句とぉとぉコールガールにならはりましてな。
▲お婆んも落ちぶれたもんやなぁ、ショ~ズカの婆がコールガール?
●へぇ、 お婆さんサービスがえぇいぅて、なかなか評判よかったんですけどな、どん なお客にも出てたもんやさかい、娑婆から来たての亡者に悪い病気もらいましてなぁ。
可哀相ぉに毛ぇは抜けるわ、皮膚はガサガサになるわ、学生さんは逃げてしまうわ、体ガタガタになってしもて、気の毒にとぉとぉ六道の辻 で「野垂れ生き」しはりましたんや。
▲ノタレイキ……、はぁはぁ、野垂れ死ぬんやのぉて野垂れ生きまんのか、ほな娑婆へ?
●はぁ、娑婆へ出てな、なんでも今までの罪滅ぼしやいぅて、 四国のほぉお遍路さんで回ったはりました。
そぉいぅ噂は聞ぃてたんやけど、 いつの間にやらまたこっち舞い戻って来はってな、ほで「我が半生を語る」ちゅて『週刊地獄』ちゅうやつにズッと連載するわ、これが評判になって単行本がベストセラーになるやら、映画になるやら、テレビに出るやら、お婆さんえらい時の人でんねやがな。
▲オモロイ話聞ぃたなぁ~。
ほなもぉ裸にされる心配はないんでんな?
●ま、そぉいぅ心配はあれしまへん。
鬼の船頭が渡し舟で渡してくれまんねん。
▲こ ら面白いなぁ、えらいどぉもありがとぉございました……。ほな、ちょっと ここへ茶代置いときま。
●まぁまぁ、こんなご心配に及ばしまへんのに、あの 右手のほぉへとって行ってもらいましたら渡船場がございますよって。
▲ありがとぉさんで。
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
▲若旦那、お待っとはん。
◆いやいや、話はここで聞ぃてたが、裸にならいでもえぇんやそぉなな。
▲へぇ、その心配はございません。
皆安心をしてお出ましを……
ゾロゾロぞろぞろゾロゾロぞろぞろ、川岸ぃ行きますといぅと、大きな棒 杭に「三途川渡船場」と書いてある。
★亡者の衆かぁ~、ウォ~ッ。
さぁ、みな乗り込め、乗り込め。
ドンドンド ンドン歩みを渡れ。乗り込め、乗り込め。
おいッ、舟ん中で立ってるやつがあるかい、しゃがめ、しゃがめ、しゃがめ。
乗り前が決まったところで鬼の船頭、ズ~ッとみんなに渡し賃を集めて回ります。
これが死に方と病で値が違うといぅケッタイな渡し賃で、それをすっ くり集めてしまうと錨をガラガラと巻き上げます。
今度は長い長い櫓をザブ~ ンッ放り込んでガチャリと櫓臍(ろべそ)にかまします。
パッと肌脱ぎになりますと鬼の船頭、赤松を割ったよぉな腕、よりを掛けて漕ぎ出した。
★や、うんとしょいッ……♪ こら、ウロチョロすなよ。
船端へ身ぃ乗り出したら危ないぞ、はまったら生きるぞ!
▲なんや勘が狂いまんなぁやっぱり、鬼の船頭「はまったら生きる」言ぅてまっせ……。
わしちょっとまだ娑婆に未練がおまんねん、はまったろか知らん。
★こらこら、おかしな真似すなよお前。
向こぉへ着いてから帳簿と人数が合わなんだら、また始末書かんならん。
ややこし真似すんねやないで。
向こぉ岸まで舟が着きます。
ゾロゾロゾロゾロ一同が陸(おか)へ上がります。
〔情報元 : 世紀末亭〕
http://kamigata.fan.coocan.jp/
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