「閉店でーす」
この言葉、苦手やのよ。
こないだの金曜日、夕方閉店やったやん?
でも閉めたい時間にお客様がいらしゃったんよ。
ありがたいことに、お客様同士、仲良くお話しててね、
大盛り上がり。
初対面の方もいらっしゃるのに。
そんな中、
「時間なので帰ってください。私、帰りたいので」
なんて言えんよなぁ…
モジモジしとったんよ、ずっと。
モジモジモジモジ
モジモジモジモジ
モジモジモジモジ
モジモジモジモジ
モジモジ…
このままじゃあかん。
間に合わんくなる!
私は店主。
意を決した。
自然に、何気なく、そして、堂々と言おう。
はい、イメージトレーニング。
さっと近づいていって、
「すいません、閉店です」
ほぅら、これだけでいいねん。
お客様も大人なんやから、これだけ言えば伝わるんよ。
なにをモジモジしとったんやら。
さ、本番や。
「…ぁ、あのぅ…すみません…閉店な…」
「え?もう閉店か?すまんすまん、いつもこの時間か?」
「…い!いいえ…いつもはもうちょっと遅い…」
「なんや話に花咲いてもてなぁ」
「あぁ…はぁ…」
なに?
このモジモジ。
やっぱり苦手やわぁ。
お客様が帰られた後、カウンターからなにやら笑い声。
green…
「プッ!クスクスクスクス...」
「『…ぁ、あのぅ…すみません…閉店な…』」
「『…い!いいえ…いつもはもうちょっと遅い…』」
「『…ぁ、あのぅ…すみません…閉店な…』」
「『…い!いいえ…いつもはもうちょっと遅い…』」
「いつものcoyaらしくない!あたしにやったら『帰れ』ってゆうくせに!」
「『…ぁ、あのぅ…すみません…閉店な…』」
「『…い!いいえ…いつもはもうちょっと遅い…』」
「『…ぁ、あのぅ…すみません…閉店な』やって!プッ!クスクスクス...」
キーッ!!