日々楼(にちにちろう)

古今東西・森羅万象の幾何(いくばく)かを、苫屋の住人が勝手御免で綴ろうとする思考の粉骨砕身記です。

慶應MCC 講座“複合連鎖危機とニッポンの改革” 第三回

2012年04月22日 | 日記

テーマ1: 電力供給体制の課題
テーマ2: 災害時の消費者行動 (このテーマは日を改めて取り上げさせていただきます)。

モデレーター : 竹中平蔵先生
講師 テーマ1: 八田達夫先生(学習院大学特別客員教授)
    テーマ2: 袖川芳之先生

A.電力供給体制の課題

八田先生のお話されたこと (抜粋)。
内容は、竹中平蔵・船橋洋一編著 『日本大災害の教訓 複合危機とリスク管理』(東洋経済新報社)の第7章を担当された八田先生の文章からも少し補っています。

1.電力の問題は、3.11(昨年の東日本大震災)を契機にパンドラの箱を開けたようにすべての問題が出てきた。

2.関西電力・大飯(おおい)原発
  どう対応するか⇒元来「どうあるべき」であった⇒再稼働より、電力制限した方が良い。

3.大阪府市戦略会議
  ア.大阪府と市は関電の株主⇒株主としては関電の長期利益を守ること⇒もし、原発事故が起これば東電のようになってしまう⇒保険をかける⇒100億円程度で良い⇒ベントフィルターがない状態で保険できる筈がない。

4.保険
  イ.保険はキャットボンド(大型台風の風速、大地震の震度などの基準を定め、期限内にそれを上回る大災害がなければ、投資家は元本と高い金利を受け取る―デジタル大辞泉)がよい⇒原発本来の高コストが表(おもて)に出る。⇒事故は起きるか起きないか分からない⇒投資家が判断⇒アメリカではマーク・ワン(福島第一原発1号機と同型炉)は危険であるという指摘は既にされていた⇒安全なものは保険料を算定できる⇒(原発)反対・賛成の接点を保険で見つける。

5.停電
  停電は、送電線の事故、発電能力と需要の不一致で起きる⇒日本の電力契約は、電力会社が需要に対応できる発電設備を持つため、設備は過大となる。

6.ヨーロッパ式のリアルタイム市場の導入
  ア.給電指令所
   a.需給ギャップ(周波数変化)の監視⇒供給<需要⇒α)追加発電を指示、β)契約需要家のブレーカーOFF⇒需給バランスの回復。
  イ.リアルタイム市場
   a.前日: 大口需要家・発電者は 翌日の需要計画・発電計画を給電指令所に提出。
   b.当日: 需給ギャップを埋める調整電力の入札実施。
   ウ.調整電力入札制度
   a.大口需要家: 供給<需要のとき、自家設備の電気を止められても良いという価格を、給電指令所に入札。
   b.給電指令所: 供給<需要 のとき、上記の入札価格の低い需要家から、需給がバランスするまで電気を止めていく(需要家は電気を売ったことになる)。
                 〃    のとき、追加発電費用の安い順に追加発電を要請。
              このときの、給電指令所が電気を買い取る価格をリアルタイム価格という。
  エ.リアルタイム価格
  a.調整電力の限界費用を価格とする。
  b.限界費用  α)発電: 追加の1単位を増やすために必要となる費用。
            β)発電能力が一杯のとき: 需要家が1単位の需要量の減少によって被(こうむ)る便益の減少額=社会的限界費用。 
  オ.リアルタイム清算
  a.当日何らかの要因で、需給が逼迫(ひっぱく)すれば、リアルタイム価格は高騰する。このとき、需要家には節電して電気を売ろうというインセンティブが働き、発電者には給電して儲(もう)けようというインセンティブが働き、逼迫した需給をバランスさせることになる。
  カ.補助金
  a.需要家の昨年実績より今年実績が下回った場合は補助金を支払う。(地方公共団体)⇒節電へのインセンティブとなる。

7.発送電分離
  ア.発電と送電の分離⇒発電は発電会社が行い自由に価格をつけ、送電は独占が行い価格は規制する⇒給電指令所は送電会社が運営する。

8.PPS: Power Producer and Supplier 電力販売業者

9.同時同量制の改革
  ア.日本の同時同量制: 電力販売業者=PPSが顧客需要家の電力使用量と絶えず等しくなるように発電すること。オーバー分は電力会社が無償で没収。不足するとペナルティとなる。
  イ.同時同量制の改革: PPSの発電量と顧客需要家と電力使用量とのズレを電力会社の調整電力の限界費用で清算するように改める。
  

10.株主の責任

11.森ビルの東京電力への電力の融通

12.エネット: NTTファシリティーズ、東京ガス、大阪ガスが合弁で設立した電力小売事業者

感想

1.八田先生が、“竹中ニッポンの改革”でお話いただいた内容のレジメ(要約)は、既述の“大阪府市戦略会議”で使用されたものをそのまま用いられたようで、橋下氏のエネルギー政策は“脱原発依存”ですから、そこの所は押さえておく必要があります。

2.日本の長期にわたるエネルギー政策を考えた場合、太陽や気象の変動によって地球環境に変化があっても、それに耐え得る核融合エネルギーを持っておくことは、現在を生きる者が子孫に残すべき責務です。

3.現在、スマートグリッド、スマートネットワークシステムと、自然エネルギーを活用したプランが動き出しています。良いことです。こういうシステムができると良いと思いますし、大賛成です。同時に、今回の東日本大震災クラスの地震と津波にも耐えうると判定され、認められるものは更に安全度を高めて再稼働させ、それ以外のものは、廃炉を選ぶというのが賢明だと思います。

4.知られている通り、生産と電力は比例関係にあります。日本全体が過疎化しないためにも、さまざまなエネルギーシステムを構築する必要があります。タイの洪水で経験しましたように、日本を脱出した企業も結局はまた日本に戻ってくるようになるでしょう。

5.森ビルの六本木ヒルズの発電システムはたまたま見る機会があり、現代の箱舟だと思ったものです。本講座にはガス屋さんも参加されており、伺いましたらそのお話から、燃料供給は電気と同じように、ループ回路となっていると判断しました。ループ回路とはひとつの回路が切断されても他の回路を使用して電気を供給するシステムです。

6.八田先生のお話は、「他人の庭はよく見える」式の学者噺(ばなし)で終わらないためにも、基幹の原子力を入れ、同時に都市プランも構想しながら、設計して行かないと、成り行き経済となり、それも小さくなってしまうのではないかという危惧も抱きました。日本のシステムに良いものはありませんか?

7.竹中先生が、「日本のエネルギー需要の話には価格の話がない」と、仰(おっしゃ)っていました。モデル価格、モデル都市A・B・C・Dを考え、産業や人口・生活水準を考慮しながら、よりベターなものを慎重に選択して行く必要があるように思います。


御報告と御礼

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深く感謝申し上げます。
これからも心を尽くして書いて行く所存でございます。
変らぬ御支援を今後も賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

                             前田子六 拝

 

 

 

 





                 

                            丸の内から皇居方向を望む


                 

                            明かりに照らされた東京駅

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