JR西日本は11月29日、大阪市内のホテルで豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風」の運行開始に向けた詳細を発表した。旅行商品の価格はロイヤルツインで1人あたり27万円(2名利用時)から、最高額のザ・スイートは1人あたり125万円(2名利用時)など。2017年6月17日に決まった運行開始日に向けて期待は高まるばかりだが、この日、瑞風に勝るとも劣らないニュースを来島達夫社長が発表した。

なんとJR西日本が「新たな長距離列車」を開発するというのだ。

「気軽に利用できる長距離列車を」

瑞風は最高級の車内設備に加え、最高級のサービス、食事、観光を売り物にしているが、それだけに価格も「最高級」だ。2015年に運行終了した寝台特急「トワイライトエクスプレス」やJR東日本の「北斗星」は乗ることを楽しみにした豪華寝台列車のはしりであったが、価格はトワイライトエクスプレスの最高級個室「スイート」でも大阪−札幌間で46090円と、一般の人にも十分手が届く価格だった。

新たに開発する長距離列車はこの辺を十分に意識し、「瑞風よりも気軽にご利用いただける列車にしたい」と来島社長は言う。「ようやく検討をスタートさせた」という段階であり、いつ頃運行開始するか、どのルートを走るかといった概要はまだ決まっていない。

「まずは電車タイプにするか、あるいは瑞風のようなハイブリッドタイプにするかを決めたい。それによって、行き先やどの線区を走るかが決まってくる」(来島社長)。車両の内装をどうするか、食堂車を設置するかどうかも含めて、どのようなサービスを提供するかはその後の話だ。

注目したいのは、新たな長距離列車が寝台列車になるかどうかまだ決まっていない、という点である。ただ「サンライズ出雲のノビノビ座席のようなカーペット式の設備にする可能性もある」と来島社長は語っており、昼行ではなく、夜行列車を想定しているようだ。「瑞風と合わせて、別の形で旅をお楽しみいただきたい」と来島社長は言う。

「普通の寝台列車」の需要は高い

JR九州の「ななつ星in九州」、JR東日本の「トランスイート四季島」そして、トワイライトエクスプレス瑞風。これらの豪華列車は話題性こそ抜群だが、一般の人がおいそれと利用できる価格ではない。

が、トワイライトエクスプレスや北斗星の人気でわかるとおり、一般的な価格帯での寝台列車のニーズは確実に存在する。ななつ星、四季島、瑞風がピラミッドの頂点だとすれば、頂点を支える裾野の役割を果たす列車の存在があってもいいだろう。

JR西日本がこれから開発する長距離列車はまさに裾野の役割といえる。新たな長距離列車で鉄道旅の楽しみを覚えた人々が「いずれは瑞風やななつ星に乗りたい」という夢を持つ可能性もある。

かつて全国各地を結んでいた寝台列車は近年廃止が相次ぎ、2009年には首都圏と九州を結んでいた「ブルートレイン」が全廃。トワイライトエクスプレスと北斗星の廃止によって、国内で定期的に運行している寝台列車は、東京−出雲市・高松間を結ぶ「サンライズ出雲・瀬戸」のみとなっている。一方で、夜行高速バスの運行は活発化し、豪華シートなどを売り物にした便も登場している。

こうした中、JR東日本やJR九州にも気軽に利用できる長距離列車の開発が望まれる。バブリーな方向に向かうよりもはるかに日本の鉄道文化の育成につながるはずだ。


瑞風に四季島、ななつ星…って、夜行列車の旅は庶民には手の届かないものになってしまったと嘆いていたら、とても楽しみなニュースが!