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未来組

宝塚の舞台、DVD、SKYSTAGEを観た感想と、最近はカメラに凝ってます。

「白昼の稲妻」「テンプテーション」

2007年09月30日 | DVD、スカイ・ステージ(宙組)
白昼の稲妻」(柴田侑宏作/荻田浩一演出)03年宙組公演。

柴田侑宏つながりで「白昼の稲妻」を見ました。
舞台は19世紀前半のパリ。
主役は(はっきり言って)伯爵令嬢ヴィヴィアンヌ(花總まり)。
現政権と対立していた父親と兄を殺され、母親とロンドンに亡命していたヴィヴィアンヌ。
母親を亡くし、父親の死の真相を知ろうと再びパリに戻ってきた。
男爵家の二男で詩人アルベール(和央ようか)はヴィヴィアンヌの幼なじみ。
時折暗い表情を見せ、ひとりで謎の行動をとるヴィヴィアンヌを気にかけている。
ヴィヴィアンヌの帰国の理由、そして暗殺の首謀者が分かった時に、
自分はどうなってもいいから復讐を果たしたいという彼女に、
違う方法で仇を討とうと説得する。

芝居の中に挿入されるセリフなしのシーン、感覚的で幻想的な演出が印象的。
プロローグ、父親と兄が殺される回想シーン、
群衆の中でアルベールとヴィヴィアンヌがすれ違うシーン、
もちろん後半のクライマックス、劇中劇の「オセロ」も。

「オセロ」(「白昼の稲妻」と改題したオリジナル劇という設定)の
セリフや歌は録音されたものを使っています。
有名な劇でいちいち説明しなくてもわかる、
あるいは前半で「オセロ」について説明しているので省略するということでしょうか、
誰のどんなセリフなのかはっきりはわかりません。雰囲気重視で作っています。
音楽はビートが利いて乗りがよくてダンスミュージックのようで、
演出はファッションショーのフィナーレのよう。これがまたなかなか格好いい。

嫉妬にかられ、オセロに嘘を吹き込み、妻を殺させ、破滅に追い込んだイアーゴーに
例えられたランブルーズ侯爵(水夏希)だけが血のように赤い照明の中に浮かび上がり、
心の中の毒をぶちまけるように絶叫し、群衆にもまれて消えていく。

冷静に考えると、ランブルーズ本人が劇の中に出てきてはいけない。
しかし、水夏希のひげ面と熱演に免じて、よしとしましょう!
あそこであの絶叫がなかったら、インパクトが出ません。

柴田侑宏の芝居でありながら、これらは明らかに荻田浩一のショー作品。
人間関係など骨格がしっかりしているから幻想的な演出が冴えるのでしょう。
柴田侑宏の芝居部分よりも荻田浩一のショー部分が印象に残る、というのも
皮肉なものですが。

テーマはヴィヴィアンヌの復讐劇
親を殺された仇討ちは、どんな合法的な手段にのっとっても、要は殺人。
バレンシアの熱い花」では、革命と一体化した復讐は成功しますが、
誰一人幸せにはなっていません。(そこが柴田作品らしい)
今回、復讐心に燃える主人公は女性。女性の場合はどうするか? 
こんな解決策と結末も作ってみたかったのでしょうか。

アルベール(和央ようか)はお金持ちのお坊ちゃまで茫洋としているから、
作りすぎないあれで正解でしょう。
背が高くスタイルがいいので何を着ても貴公子然として似合っていました。
同期、初風緑との絡みは息が合っている。
「危ないねぇ、その考え方!」と茶化すところなんかは、普段でも言いそうです。

アルベールの友人オーギュスト(初風緑)。
オーギュストの演技では素顔の人の良さを感じさせ、劇中劇でイアーゴーを演じる時は
危険人物になりきっている。
前半の、イアーゴーの練習をしているオーギュストの大げさで田舎くさい演技が
うまい。体を揺らして腕を振り回してギッコンバッタン。
TCAスペシャルのコントが難なくできる訳ですよね。
「三枚目のできない二枚目はいない」って轟悠の言葉を思い出します。

ランブルーズ伯爵を演じたのは水夏希
本人が最近、「あれはホント、ひどい人だった」と言うくらいの悪役。
安蘭けいは弱さ、劣等感を軸に役作りをしたそうですが
水夏希は言い訳なしの悪役ぶりでした。
あの、紫色の鰐皮のベストと懐中時計は、なかなか着こなせる人、いないのでは?

公爵未亡人のギャランティーヌ役貴柳みどり
髪型、首の長さ、ドレス、立ち居振る舞いも見栄えがして、
せりふ回しもお上手でした。

柴田作品は、ドレスが華やかで、センスがいい。セットもよくできている。
当時の空気感、温度や湿り気まで伝わってきそう。
時代考証がしっかりできているのだと思うし、それを表現するためのスタッフも
予算もしっかりとれているのだと思う。これだけでも観る価値があると常々思います。
ランブルーズとヴェルネ(美郷真也)が8年前ブーローニューの森での出来事を
話し合っているシーンがあります。
白昼の稲光の中、馬車の中で息をひそめてあの場面を見守っていた、と。
二人の背景にブーローニューの森や稲妻が浮かび上がったらどんなにきれいだっただろう。
その絵面を見てみたかったです。


冒頭から時代の説明のためにマリー・アントワネット、ロベスピエール、ナポレオン、
ジョセフィーヌなどが出てきます。
市民革命が成功し、自由と平和に湧き上がる市民たち。
これから権力の中枢に座るのは貴族ではなく、資産家、実業家だという説明も。
あれだけ多くの人物を登場させていながら破綻していない、
セリフでしっかり説明しているのはたいしたものですが、
サービス精神発揮し過ぎというか、いささか幕の内弁当風。
貴族側の復讐劇と(ほぼ)能天気な市民の描写が乖離していて、
全体からうける印象を曖昧なものにしてしまった気がします。


テンプテーション」岡田敬二作・演出

インドシナ」は1本の芝居を観るよう。
こういうエンディングにロマンを感じるのは男の身勝手だとは思いますが、
(女性には辛い再会です)
完成された世界観に酔いしれ、何度も見てしまいます。
インドシナ(ベトナム)が舞台というのはとても珍しく、エキゾティックで抒情的。
ヨーロッパよりもアジアを舞台にした芝居、ショーの方がノスタルジーを感じるのが
不思議なものです。
男役さん勢ぞろい、黒燕尾服のフィナーレナンバーは緊張感があって格好いい。
そのあとの和央ようか、花總まりのデュエットダンスは有名なシーンですよね。
ゴールデンコンビと言われた二人。密着度が高いです。

初風緑はなにをやってもうまい。
大和悠河がラテンフィーバー女で出てきたり、キャスティングに意外性があって面白い。
アイドル的な人気の理由がわかった気がしました。


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