ティム・バートン

ティム・バートン(Tim Burton/映画監督)に関する情報・感想をつづるブログ [シネストック別館]

「ヴィンセント」 解説

2006-07-01 00:01:00 | 「ヴィンセント」
ティム・バートンが監督デビューを果たした、約5分間のストップモーション・アニメ。当時、旧態依然としたディズニーの体質にウンザリしていた彼に対して、同社執行部のプロデューサーが6万ドルを与え、製作させた作品である。このようなケースは、ディズニー社内では異例中の異例であり、バートンの才能が突出していたことを物語っている。主人公は7歳の少年、ヴィンセント・マロイ。心優しき素直な少年……なのはいいが、怪奇俳優ヴィンセント・プライスに憧れ、エドガー・アラン・ポーを愛読するゴスっぷりが、他の“普通の”子どもたちとは大きく違う。叔母を蝋人形にしたり、愛犬をゾンビ犬に改造したりと、良からぬ妄想が、常に頭の中にめぐりめぐっているのだ。そんな息子の姿に、母親は「いい天気なんだから、外で遊びなさい」と叱るばかり。
 細長い顔に、ボサボサの髪型。憧れるのは、ヴィンセント・プライス……ヴィンセント少年の姿は、まさに100%ティム・バートンである。当の本人は、そんな解釈を嫌うだろうが、「暗黒に酔い、暗黒に彷徨う」とでもいうべきヴィンセントの甘美な苦痛は、幼少期のバートン自身の心象風景そのものであるはずだ。映像技術よりもデザインを重視する点は、10年の時を経て結実する『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』に通じるポリシーである。ナレーターを務めたのは、なんとヴィンセント・プライス本人。憧れの“アイドル”を起用できたことが、バートンにとって、何よりの幸福だったろう。以後、発表される作品を想起させるアイテム(曲がりくねった大木や空想上の怪奇の館など)もふんだんに散りばめられている。ティム・バートンにとっては、「名刺代わり」の作品なのだ。


最新の画像もっと見る