ティム・バートン

ティム・バートン(Tim Burton/映画監督)に関する情報・感想をつづるブログ [シネストック別館]

「バットマン・リターンズ」 解説

2006-07-07 00:01:00 | 「バットマン・リターンズ」
 ファン待望の続編は、キャラクターたちの内面にディープ&ダークに迫った、まさにバートン流エンターテインメントの極み。前作以上に屈折した心理描写が、ドロドロした物語を演出する。開始早々に気づくのが、前作で主人公ブルース・ウェインと恋に落ちたはずのヴィッキー・ベールの不在。な、なんとあの二人は破局していたのだ。ウェインいわく「二重生活を送る自分の苦悩を理解できなかった」そうで、今も未練タラタラ。地位も名誉も富も持ち合わせているのに、バットマンであるがゆえ、決して幸せになれない、というヒーローらしからぬ悲劇性が、早くも作品に大きな影を落としている。
 が、これは序の口。さらに可哀相な悪役キャラクターが、二人も登場するから大変だ。まずは、醜い姿ゆえ生まれてすぐに捨てられ、生涯を地下で過ごした男、ペンギン。そして、偶然、組織の悪巧みを知ったために殺され、直後に不思議な力で甦った女、キャットウーマンだ。どちらも社会への不公平感と復讐心がハンパなく、その根の深さは、バットマン以上である。バートンらしいのは、この二人の悪役に対して、愛情にも似たシンパシーを抱き、もはや誰が悪役なのか分からなくなってしまう点。一方、黒幕にまんまと乗せられたペンギンが、悲劇の人として祭り上げられる構図からは、“普通の人々”の偽善が残酷なまでに浮き彫りになる。バットマンが倒すべき敵は、一体誰なのか?
 クライマックスに向けて、アクション大作らしい盛り上がりを見せながら、どうにも拭いきれない「物悲しさ」が付きまとうのが、今作最大の特徴だ。楽しいのに、なぜか悲しい……この感覚は、まるで昭和時代のサーカス団を思わせる。バットマンもペンギンもキャットウーマンも、本当の気持ちを仮面で押し殺すピエロなのだ。

「バットマン・リターンズ」 データ

2006-07-07 00:00:00 | 「バットマン・リターンズ」
STAFF ● 監督:ティム・バートン/製作:デニーズ・ディ・ノーヴィ、ティム・バートン/製作総指揮:ジョン・ピーターズ、ピーター・グーバー/原案・脚本:ダニエル・ウォーターズ/原案・サム・ハム/撮影:ステファン・チャプスキー/音楽:ダニー・エルフマン/プロダクション・デザイン:ボー・ウェルチ/編集:クリス・リーベンゾン/衣装:ボブ・リングウッド、メアリー・ヴォート

CAST ● マイケル・キートン、ダニー・デビート、ミシェル・ファイファー、クリストファー・ウォーケン、マイケル・ガフ、マイケル・フィーリー、クリスティ・コンウェイ、アンドリュー・ブリニアースキ、パット・ヒングル、ヴィンセント・シアヴェリ、スティーヴ・ウィッティング、ジャン・フィックス

DATA ● 原題:BATMAN RETURNS/ワーナー・ブラザース映画作品/1992年/アメリカ映画・PG-13指定/35mm/126分/ヴィスタ/カラー/ドルビーデジタル/米国公開:1992年6月19日/日本公開:1992年7月11日(ワーナー・ブラザース配給)