ティム・バートン

ティム・バートン(Tim Burton/映画監督)に関する情報・感想をつづるブログ [シネストック別館]

「バットマン」 解説

2006-07-05 00:01:00 | 「バットマン」
 80年代を通して、試行錯誤が繰り返された結果、DCコミックス「バットマン」映画化のチャンスは、ティム・バートンのもとに舞い降りた。主演に前作『ビートルジュース』のマイケル・キートンを起用すると、原作ファンから5万通の抗議文が届くなど、完成までに紆余曲折はあったが、いざフタを開けると、公開10日間で興収1億ドルを突破する空前の大ヒットを記録。とはいえ、典型的なブロックバスター作品とは一線を画く、異形のヒーロー像に対して、当初は「暗すぎる」という批判も相次いだ(日本でコケたのも、あの暗さゆえだ)。
 バートンが描くバットマンは、あくまで「コウモリの変装をした生身の人間」でしかない。だからこそ、肉体派アクションスターとは180度違う、マイケル・キートンが演じるのだ。コウモリは暗闇を好むが、バットマンもまた、その正体を明かそうとはせず、トラウマに囚われながら、夜な夜な正義を貫く。「暗すぎる」のはそのせいであり、歪んだ二面性に引き裂かれたバットマン=ブルース・ウェインこそ、バートンの究極ヒーローなのだ。ジャック・ニコルソン演じる宿敵ジョーカーも然り。二人は善者/悪者という関係を越えて、1枚のコインのごとく表裏一体である。
 荘厳かつ陰鬱なゴッサムシティの美術セットが圧巻。コミック本来の楽しさや、バートンらしい毒のあるユーモアも冴えている。主題歌はプリンス。当初は、プリンスとマイケル・ジャクソンがテーマ曲を持ち寄るアイディアもあったとか。この“対決”は見て(聞いて)みたかった。ちょっと意外だが、バートン自身はアメコミ愛読者ではない。その理由は「どのコマから読めばいいのか分からないから」(*1)。まさにTV・映画で育った映像世代の申し子なのだ。
*1:参考文献/「バートン・オン・バートン」(マーク・ソールベリー著/フィルムアート社発行)

「バットマン」 データ

2006-07-05 00:00:00 | 「バットマン」
STAFF ● 監督:ティム・バートン/製作総指揮:ベンジャミン・メルニカー、マイケル・ウスラン/製作:ピーター・グーバー、ジョン・ピーターズ、クリス・ケニー/脚本:サム・ハム、ウォーレン・スカーレン/原作:技術顧問:ボブ・ケイン/撮影:ロジャー・プラット/音楽:ダニー・エルフマン/プロダクション・デザイン:アントン・ファースト/編集:レイ・ラブジョイ/衣装:ボブ・リンウッド/視覚効果総監督:デレク・メディングス/SFX監督:ジョン・エヴァンス

CAST ● マイケル・キートン、ジャック・ニコルソン、キム・ベイシンガー、ロバート・ウール、パット・ヒングル、ビリー・ディー・ウィリアムス、マイケル・ガフ、ジャック・パランス、ジェリー・ホール、トレイシー・ウォルター、リー・ウォレス、ウィリアム・フットキンス

DATA ● 原題:BATMAN/グーバー/ピーターズ・カンパニー作品/ワーナー・ブラザース映画提供/1989年/アメリカ映画・PG-13指定/35mm/126分/ヴィスタ(70mmへブローアップ)/カラー/ドルビーステレオ(70mm・6トラック)/米国公開:1989年6月23日/日本公開:1989年12月2日(ワーナー・ブラザース配給)/アカデミー賞美術賞