80年代を通して、試行錯誤が繰り返された結果、DCコミックス「バットマン」映画化のチャンスは、ティム・バートンのもとに舞い降りた。主演に前作『ビートルジュース』のマイケル・キートンを起用すると、原作ファンから5万通の抗議文が届くなど、完成までに紆余曲折はあったが、いざフタを開けると、公開10日間で興収1億ドルを突破する空前の大ヒットを記録。とはいえ、典型的なブロックバスター作品とは一線を画く、異形のヒーロー像に対して、当初は「暗すぎる」という批判も相次いだ(日本でコケたのも、あの暗さゆえだ)。
バートンが描くバットマンは、あくまで「コウモリの変装をした生身の人間」でしかない。だからこそ、肉体派アクションスターとは180度違う、マイケル・キートンが演じるのだ。コウモリは暗闇を好むが、バットマンもまた、その正体を明かそうとはせず、トラウマに囚われながら、夜な夜な正義を貫く。「暗すぎる」のはそのせいであり、歪んだ二面性に引き裂かれたバットマン=ブルース・ウェインこそ、バートンの究極ヒーローなのだ。ジャック・ニコルソン演じる宿敵ジョーカーも然り。二人は善者/悪者という関係を越えて、1枚のコインのごとく表裏一体である。
荘厳かつ陰鬱なゴッサムシティの美術セットが圧巻。コミック本来の楽しさや、バートンらしい毒のあるユーモアも冴えている。主題歌はプリンス。当初は、プリンスとマイケル・ジャクソンがテーマ曲を持ち寄るアイディアもあったとか。この“対決”は見て(聞いて)みたかった。ちょっと意外だが、バートン自身はアメコミ愛読者ではない。その理由は「どのコマから読めばいいのか分からないから」(*1)。まさにTV・映画で育った映像世代の申し子なのだ。
*1:参考文献/「バートン・オン・バートン」(マーク・ソールベリー著/フィルムアート社発行)
バートンが描くバットマンは、あくまで「コウモリの変装をした生身の人間」でしかない。だからこそ、肉体派アクションスターとは180度違う、マイケル・キートンが演じるのだ。コウモリは暗闇を好むが、バットマンもまた、その正体を明かそうとはせず、トラウマに囚われながら、夜な夜な正義を貫く。「暗すぎる」のはそのせいであり、歪んだ二面性に引き裂かれたバットマン=ブルース・ウェインこそ、バートンの究極ヒーローなのだ。ジャック・ニコルソン演じる宿敵ジョーカーも然り。二人は善者/悪者という関係を越えて、1枚のコインのごとく表裏一体である。
荘厳かつ陰鬱なゴッサムシティの美術セットが圧巻。コミック本来の楽しさや、バートンらしい毒のあるユーモアも冴えている。主題歌はプリンス。当初は、プリンスとマイケル・ジャクソンがテーマ曲を持ち寄るアイディアもあったとか。この“対決”は見て(聞いて)みたかった。ちょっと意外だが、バートン自身はアメコミ愛読者ではない。その理由は「どのコマから読めばいいのか分からないから」(*1)。まさにTV・映画で育った映像世代の申し子なのだ。
*1:参考文献/「バートン・オン・バートン」(マーク・ソールベリー著/フィルムアート社発行)