ティム・バートン

ティム・バートン(Tim Burton/映画監督)に関する情報・感想をつづるブログ [シネストック別館]

「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」 解説

2006-07-09 00:01:00 | 「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」
 長年、バートンが暖めてきた企画は、ディズニー時代の同窓生(?)ヘンリー・セリック監督をはじめ、最高のスタッフ達によって珠玉の名作へと昇華した。最大の魅力は、キャラクター・デザインの素晴らしさだ。グロテスクだが可愛く、ダークだが陽気に、コミカルだが物悲しい。そんな二面性は、バートン作品が追求し続ける重要なテーマでもある。優れたデザインを最大限に表現し、その魅力を引き出すのは『ヴィンセント』と同じストップモーション・アニメ。手作り感あふれる、70分強の映像を作り出すのが、いかに緻密で過酷な作業であるかは、容易く想像できる。眼球のないジャック・スケリントンが、なぜ、あそこまでエモーショナルに訴えかけるのか。あの真っ黒な目に潜む感情と感傷は、もはや、魔法であり奇跡である。
 クリスマスを乗っ取ろうとした、ハロウィン・タウンの哀れな王様の物語。純粋かつ闇雲な情熱を燃やしながら、誤解と迫害に晒されるヒーローの“光と闇”は、言うまでもなくバートン作品の真骨頂。また、ジャックがクリスマス・タウンで体験する高揚感は、季節感のない郊外に暮らしたバートン少年がハロウィンで味わったそれに似ているそうだ。祝日がもたらす不可視の“ワクワク感”は、D・エルフマンの楽曲によって無限の彼方へと広がる。バートンの分身であるジャックを献身的に支えるのが、縫い目だらけのサリーだ。その姿が、撮影中に出会ったという(元)恋人リサ・マリーにそっくりなのは、かなりロマンチックな偶然である(当然、デザインははるか昔に出来ていた)。さらに『シザーハンズ』『バットマン リターンズ』に続き、クリスマスが舞台になっているのも偶然か?
 今作は、90年代最高のファンタジーであり、ストップモーション・アニメの歴史に燦然と輝く金字塔。そして、映画やアニメといった枠組みを超えた、唯一無比の芸術品である。

「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」 データ

2006-07-09 00:00:00 | 「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」
STAFF ● 監督:ヘンリー・セレック/製作:ティム・バートン、デニース・ディ・ノーヴィ/脚本:キャロライン・トンプソン/原案:ティム・バートン/キャラクター設定:ティム・バートン/脚色:マイケル・マクダウェル/撮影:ピート・コザチク/音楽(作詞/作曲/オリジナル・スコア):ダニー・エルフマン/美術:ディーン・テイラー/編集:スタン・ウェップ/ヴィジュアル・コンサルタント:リック・ヘインリックス/アニメーション監修:エリック・トレイン/人形造形監修:ジョン・A・リード3世

CAST ● ダニー・エルフマン(ジャックの歌声&バレル)、クリス・サランドン、キャサリン・オハラ、ウィリアム・ヒッキー、グレン・シャディックス、ポール・ルーベンス、キャサリン・オハラ、ケン・ペイジ、エド・アイヴォリー

DATA ● 原題:TIM BURTON’S THE NIGHTMARE BEFORE CHRISTMAS/バートン/ディ・ノーヴィ・プロ作品/タッチストーン・ピクチャーズ提供/1993年/アメリカ映画・PG指定/35mm/76分/ヨーロッパ・ヴィスタ(1:1.66)/カラー・ドルビーデジタル/米国公開:1993年10月29日/日本公開:1994年10月22日(ブエナビスタインターナショナルジャパン配給)