… 霊的

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愛が無ければ無いほど報いることができる…この世界。

2014年10月11日 19時33分34秒 | PoemStation 過去ログ
ちゅうたしげるの
PoemStation
2006年8月2日(水)


……………

すべて人間は、自分のすることに向くようにできているのに
ちがいない、と彼は思った。どんなふうに生計をたてていようと、
そこにはおまえの才能が存在するのだ。これまでおれは
何かの形でエネルギーを売ってきたのだが、愛情があまり
関与していないときに、かえって、支払われる金に対して、
ずっと多くの価値を報いることができるものだ。
おれは、やっとそのことを発見したのだが、しかし、
いまとなっては、それも書くことはないだろう。
十分書くだけの価値があっても、書かないことにしよう。

(ヘミングウェイ「キリマンジャロの雪」
新潮文庫『ヘミングウェイ短編集(一)』P255)

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 金銭を得るために人は呻吟している。「何かの形でエネルギーを売って」カネを稼いでいる。しかし、その仕事になんらかの執着や愛着を持たなければ持たないほど逆に「支払われる対価」に対して報いることができるものだ。とわたしは上の引用を理解した。なるほど職業的「プロ」とはどんな現場でもそういうものだろう。

 若い頃のわたしは人に善意を尽くしたいと切望した。しかし「愛情を持たなければ持たないほど」反対に人に報いることができるのだ。

 さよう、善意はアダ(徒)になる。善意はかえって逆の結果を招く。へたな親切は徒になる。それほどまでにこの世界は逆立ちした物象化した世界だったのだ。人間関係の練熟した現場では、幸福を強く願えば願うほど、大切に思えば思うほどその対象を愛してはいけない。そして対象の方から見るその姿勢は必ずしも非情を意味しない。それは厳然と誤ったこの世界における情深さゆえのおたがいの自然で賢明な「配慮」なのだ。

 3年前のこと。長年勤めたアルバイトの職を失って失業に打ちひしがれていたわたしは、ヘミングウエイの言葉が気にかかって、自分に言い聞かせるように何度も何度も上記の引用部分を確認した。

 数日後、ひょんな成り行きでわたしは町議会議員選挙に突然立候補を表明した。無投票確実だった無風選挙を告示3日前に突如ひっくり返したのだ。

 むろん村は騒然とした。


 ******* 地獄への道は善意で敷き詰められている。(ヨーロッパの諺)








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