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メールマガジン”詩人の部屋”

2014年06月18日 10時41分25秒 | 詩人の部屋

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生き血を吸うタランチュラ

 2014/06/18 水曜日

 蜘蛛は不気味な姿をしているが人間にとっては大半が益虫らしい。自然界の生態系と食物連鎖のなかで重要な役割を果たしている。毒蜘蛛というのは蜘蛛のなかではわずかの種類らしい。自然界では喰ったり喰われたりするが常体なのだ。

 埴谷雄高は食物連鎖を肯定できなかったようだ。「死霊」のなかで人間が食べ物を喰うことを問い詰める。

 しかしまあ人間界をざっと観てみれば人間は人間同士喰ったり喰われたりしている。日々のニュース番組で殺人事件のなんと多いことか。もちろん刑法に触れて処罰されることにはなるのだが。殺人事件のなかでも多くが尊属殺人なのだそうだ。身近なところに手を下すのは必然の成り行きだろう。

 蜘蛛毒に限らず人間毒というものはあるもので日常的に身近な人間同士喰ったり喰われたりしているのだ。それも家族という身近な集団が一番危うい。

 作物を食材として料理するとき「灰汁抜き」ということをするが、植物は害虫に喰われたりしないように内部に毒を持っているらしい。フイトンチッドという揮発性の物質を発散して他の害虫や植物を寄せ付けないようにもしている。植物に限らず生きものはみな身を守るすべを持っているのだ。

 人間に灰汁や毒があったとして不思議ではない。

 人が生き残るのに一番の特効は人間の生き血を吸うことだ。問題はうまく生け贄を得ることだ。健康のためとか長生きの秘訣とか病気に良いとかメデイアに情報は溢れているがそんなことは一度患ってみれば問題にならないことがわかる。一番の特効は生き延びるために他人の生き血を吸うことだ。経済的に恵まれようが恵まれまいが肉体的な条件に恵まれようが恵まれまいがしぶとく長生きを保つ人はいるものだ。特別健康に良いことをするわけでもなく特別恵まれた条件に居るわけでもないのに長生きを保つ人はいる。生き血を吸っているのだ。

 それもうまくやらなければならない。だれでも手近なところからというわけにはいかない。経済的スポンサーやつれあいを殺して喪ってしまうのは愚かだから。

 人間は人間毒に囲まれて生きている。

 アントナン・アルトーの「ヴァン・ゴッホ」を読み直してみた。やはりアルトーはゴッホを自殺に追い込んで殺したのは一番身近な存在だった精神科医のガシェと経済的スポンサーだった弟テオだとはっきり書いている。然も有りなん。

 アルトーは精神病院に8年あまり監禁され晩年直腸がんだった。死んだのは52歳ぐらいだったか。ゴッホは精神分裂症ということになっている。ゴッホが自殺したのは37歳。ついでにこのわたしも30歳で妄想におぼれ精神病院行きになった。

 家族に殺される思いをするのはみな同じようなものだ。アルトーは狂っているのは天才画家ゴッホのほうではなくて人間界=世の中のほうが狂っているのだと指摘する。ゴッホの絵は生前たった一枚買い手がついていただけで「金銭的評価マイナス」の人生を送った。弟テオに経済的に養われただけの生涯だった。いまでは何十億の値をつけてでもゴッホの絵は買い手がある。

 とまあこんなことを書いてもしかたがないのだ。人は無意識にやっているのだから。バカなのか、人はもともと一丁前に口をきく便所虫か猿なのか、それともけだものか、ほんとうはばけもの(西鶴)か。

 村が廃れて行く。家の後継を継ぐ者がいないのだ。若者は街に出て、年寄りばかりなのだ。わたしの孫の世代にはこの村に住む者はいなくなるだろう。全滅なのだ。ついでに安倍自民党は都会にさえも人が住めなくさせようとしている。いったいどういうつもりなのか。

 アルトーはゴッホの絵画は一個の原子爆弾だと譬えている。一個の天才芸術が人間を滅ぼすのにはちょうどいい。

 

 

 

 

 

 

 

 


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