chuo1976

心のたねを言の葉として

「せんねん まんねん」   まど・みちお

2012-10-22 06:08:34 | 文学
 「せんねん まんねん」   まど・みちお




 
いつかのっぽのヤシの木になるために

そのヤシのみが地べたに落ちる

その地ひびきでミミズがとびだす

そのミミズをヘビがのむ

そのヘビをワニがのむ

そのワニを川がのむ

その川の岸ののっぽのヤシの木の中を

昇っていくのは

今まで土の中でうたっていた清水

その清水は昇って昇って昇りつめて

ヤシのみの中で眠る



その眠りが夢でいっぱいになると

いつかのっぽのヤシの木になるために

そのヤシのみが地べたに落ちる

その地ひびきでミミズがとびだす

そのミミズをヘビがのむ

そのヘビをワニがのむ

そのワニを川がのむ

その川の岸に

まだ人がやって来なかったころの

はるなつあきふゆ はるなつあきふゆの

ながいみじかい せんねんまんねん
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「ぞうきん」  まどみちお

2012-10-19 05:22:43 | 文学
「ぞうきん」  まどみちお



ぞうきん
雨の日に帰ってくると
玄関でぞうきんが待っていてくれる
ぞうきんでございます
という したしげな顔で
自分でなりたくてなったのでもないのに

ついこの間までは
シャツでございます という顔で
私に着られていた
まるで私の
ひふででもあるかのように やさしく
自分でそうなりたかったのでもないのに
たぶん もともとは
アメリカか どこかで
風と太陽にほほえんでいたワタの花が
そのうちに
灰でございます という顔で灰になり
無いのでございます という顔で
無くなっているのかしら
私たちとのこんな思い出もいっしょに
自分ではなんにも知らないでいるうちに

ぞうきんよ!

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「朝がくると」   まどみちお

2012-10-18 05:46:44 | 文学
「朝がくると」   まどみちお




朝がくると とび起きて
ぼくが作ったものでもない 水道で 顔をあらうと
ぼくが作ったものでもない
洋服を きて
ぼくが作ったものでもない
ごはんを むしゃむしゃたべる
それから ぼくが作ったものでもない
本やノートを
ぼくが作ったものでもない
ランドセルに つめて
せなかに しょって

さて ぼくが作ったものでもない
靴を はくと
たったか たったか でかけていく
ぼくが作ったものでもない
道路を

ぼくが作ったものでもない
学校へと
ああ なんのために

いまに おとなになったら
ぼくだって ぼくたって
なにかを 作ることが
できるように なるために
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「どうしていつも」  まど・みちお

2012-10-17 06:06:43 | 文学
  「どうしていつも」  まど・みちお



太陽



そして


虹(にじ)
やまびこ

ああ 一ばん ふるいものばかりが
どうして いつも こんなに
一ばん あたらしいのだろう
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『頭と足』  まどみちお

2012-10-16 05:15:28 | 文学
『頭と足』  まどみちお




生きものが 立っているとき
その頭は きっと
宇宙のはてを ゆびさしています
なんおくまんの 生きものが
なんおくまんの ところに
立っていたと しても…

針山に さされた
まち針たちの つまみのように
めいめいに はなればなれに
宇宙のはての ぼうぼうを…

けれども そのときにも
足だけは
みんな 地球の おなじ中心を
ゆびさしています
おかあさあん…
と 声かぎり よんで

まるで
とりかえしの つかない所へ
とんで行こうとする 頭を
ひきとめて もらいたいかのように
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「虹」   まどみちお

2012-10-15 05:19:55 | 文学
  「虹」   まどみちお



ほんとうは
こんな 汚れた空に
出てくださるはずなど ないのだった
もしも ここに
汚した ちょうほんにんの
人間だけしか住んでいないのだったら

でも ここには

何も知らない ほかの生き物たちが
なんちょう なんおく 暮らしている
どうして こんなに汚れたのだろうと
いぶかしげに
自分たちの空を 見あげながら

その あどけない目を
ほんの少しでも くもらせたくないために
ただ それだけのために
虹は 出て下さっているのだ
あんなにひっそりと きょうも
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「ぼくは何を」   まど・みちお

2012-10-14 05:19:20 | 文学
「ぼくは何を」   まど・みちお





ぼくは 何をもっているのだ

やさしさなら お母さんがもっている

勇気なら お父さんが

すなおさなら ポチが

賢さなら 先生がもっている

がまん強さなら 冬のムギが

勤勉さなら 夏のアリが

そして 美しさなら

道ばたの1本のタンポポがもっている

で ぼくよ 何をもっているんのだ

    

いつも後で しまったと思う

おっちょこちょいと

だれにも負けない いたずら心のほかに・・・・

笑うなかれ!

希望だ・・・

やさしくて 勇気があって

すなおで 賢くて

がまん強くて 勤勉な

美しい心

に ぼくを少しでも近づけたいという・・・

   

笑うなかれ!

という ぼくよ

自分で笑っちゃ サマにならぬぞよ!
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「きりん」  まど・みちお

2012-10-13 06:05:25 | 文学
「きりん」  まど・みちお



きりん
きりん
だれがつけたの?
すずがなるような
ほしがふるような
日曜の朝があけたような名まえを
 
ふるさとの草原をかけたとき
一気に一〇〇キロかけたとき
一ぞくみんなでかけたとき
くびのたてがみが鳴ったの?
もえる風になりひびいたの?
きりん
きりん
きりりりん
 
きょうも空においた
小さなその耳に
地球のうらがわから
しんきろうのくにから
ふるさとの風がひびいてくるの?
きりん
きりん
きりりりん
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「ふしぎなポケット」   まどみちお

2012-10-12 05:31:31 | 文学
「ふしぎなポケット」   まどみちお



ポケットの なかには
ビスケットが ひとつ
ポケットを たたくと
ビスケットは ふたつ
 
もひとつ たたくと
ビスケットは みっつ
たたいて みるたび
ビスケットは ふえる
 
そんな ふしぎな
ポケットが ほしい
そんな ふしぎな
ポケットが ほしい
 
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「とんぼの はねは」  まど みちお

2012-10-10 04:30:48 | 文学
「とんぼの はねは」  まど みちお



とんぼの はねは
みずの いろ
みずから
うまれたからかしら
とんぼの はねは
そらの いろ
そらまで
とびたいからかしら
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札幌国際芸術祭

 札幌市では、文化芸術が市民に親しまれ、心豊かな暮らしを支えるとともに、札幌の歴史・文化、自然環境、IT、デザインなど様々な資源をフルに活かした次代の新たな産業やライフスタイルを創出し、その魅力を世界へ強く発信していくために、「創造都市さっぽろ」の象徴的な事業として、2014年7月~9月に札幌国際芸術祭を開催いたします。 http://www.sapporo-internationalartfestival.jp/about-siaf