歌人の命のかけら映す 山川冬樹 歩みきたりて(大島)
足元の土をならして書きつける孤独の文字をよぎる蟻(あり)一つ
大島に生きた歌人、政石蒙(まさいしもう、1923~2009)が初めて詠んだ歌だ。
愛媛県松野町生まれ。15歳のころ、ハンセン病になった。「病を気づかれないまま死んでゆける」と陸軍へ。だが、捕虜としてモンゴルに抑留され、病を悟られた。隔離された小屋で、壮絶な孤独をかみしめる日々。魂の叫びが歌になった。
作家の山川冬樹さん(45)はその足跡をたどり、「命のかけらを拾っていった」。松野町、モンゴル、復員後に六十余年を過ごした大島。先々で政石の作品を朗読し、映像に残した。
ハンセン病療養所の旧寮に、3カ所で撮った映像を並べた。大島で一節が読み上げられたと思うと、次はモンゴルへ。別の一節は松野町で。政石が歩んだはるかな道のりを、言葉は自由自在に行き交う。
2019/4/26 朝日新聞
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