新・台所太平記 ~桂木 嶺の すこやかな日々~

N響定期会員・桂木嶺の、家族の介護・闘病・就職・独立をめぐる奮戦記を描きます。パーヴォ・ヤルヴィさんへの愛も語ります。

【思い出話、うらばなし】「カルミナ・ブラーナ おお、運命の女神よ」と、「梟の城」の思わぬご縁♪ 聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥?!

2019-02-07 10:25:38 | 東宝時代の思い出

なんだか、すっかり「東宝宣伝部の思い出ブログ」と化している、このブログですが、ほんとは、NHK交響楽団首席指揮者の<パーヴォ・ヤルヴィさん>の応援ブログでもありますので、みなさんビックリしないでくださいね(^_-)-☆ 

でも、なぜか、

映画「梟の城」(1999年公開、篠田正浩監督作品、中井貴一主演)と、

パーヴォさんが思わぬご縁で結ばれた

いうお話をこれからさせていただきたいと思います。

※こちらは「梟の城」第2弾ポスター。宣伝コピーは「愛するのか、殺すのか。」に変わりました。役者さんの顔写真もでていたので、さっそく取り込みました。

「梟の城」は、先述しましたように、宣伝プロデューサーは市川南さん(現・東宝㈱常務取締役)でしたが、新しい仲間が加わり、新風を巻き起こしてくれました。

それが、東宝でも珍しい、女性の宣伝プロデューサーとして期待されていた、”きゅうちゃん”こと、N嬢です。大変に明るい美女で、背も高く、モデルさん並みのすらりとした体形のよさに、マスコミの方もファンが多く、なんと、週刊朝日のカトリーヌあやこさんの漫画にも登場したほどのたのしいキャラクターの持ち主でした(^_-)-☆

ここでは”きゅうちゃん”としてお話させていただきます。きゅうちゃんは、大変なアイディアウーマンで、いろいろと「梟の城」についてもアイディアを出して、大ヒットに貢献してくれました。そして、私にとてもなついてくれた、かわいい後輩でもありました(^_-)-☆(のちに、「クレヨンしんちゃん」シリーズや、「冷静と情熱のあいだ」の宣伝プロデューサーとしても、大ヒットを飛ばしました。現在は退職して、2女のママです^^)

「ながたっち~!(と、きゅうちゃんは私のことをこうよびました)、ねぇねぇ、『梟の城』のテレビスポットのBGM、なにがいいと思います?ながたっちなら、アイディアあるでしょ、ねぇ、知恵貸して~♪」

きゅうちゃんがこう言ってくるのには、わけがありました。実はその前の年の宣伝部の秋の社内旅行で地方に行ったのですが、そこで、余興のイベントとして、

「宣伝部杯・第1回映画サントラ

超ウルトラクイズ」

なるものをしたのでした。

ルールは簡単。映画のサントラをちょこっときいただけで、会場の大広間にある座布団をとり、とった人が正解を答える、というものでした。宣伝マンは無類の映画好きがそろっています。みんな大張り切りでクイズに参加したのですが、

実は最後まで勝ち進んだのが、先述の「リング」「らせん」「ポケモン」の宣プロ・T先輩と、市川さんと、かくいう私、かつらぎだったのでした!

たとえば、こちらの映画のサントラ、なんだかわかりますか?

https://search.yahoo.co.jp/video/search;_ylt=A2RA0DgGd1tcfCAAu4eo_AF8?p=%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%A2%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%80%80%E4%BA%88%E5%91%8A%E7%B7%A8&fr=top_ga1_sa&ei=UTF-8&mfb=2141_71c

正解は、「ホーム・アローン」(マコーレー・カルキン主演の大ヒットコメディ)ですね!!!!

曲がワンフレーズ、ちょっと流れただけで、この3人がすさまじい勢いで、座布団を奪い合ったので、中川さん、矢部さん、以下宣伝マンは、大爆笑!!なぜなら、市川さんは、ふだんはとても冷静で、とてもそんなゲームに熱くなるタイプにはみられなかったし、私も普段は、バタバタ、アタフタと業務をこなしているタイプだったので、「ながたさんって、ああみえて、じつは、<お祭り娘>なのね~💦」と女性陣から、笑われてしまうほど、大変に社内旅行のイベントはエキサイトしたのでした!!!

きゅうちゃんは、いたずらっぽくわらいながら私にいいました。

「やっぱり、映画のBGMのことなら、ながたっちに聴くのが一番だとおもって(^_-)-☆」

私は大変照れ臭かったですが、きゅうちゃんのご相談にのることにしました。これがいままでの、「梟の城」の予告編で使われた音楽でした。

https://www.youtube.com/watch?v=PPoDjI4ZNzg

きゅうちゃんが、「この予告編は、若い人向けにはいいと思うんですけど、なんかもうちょっと大作感がほしいんです。なにが足りないと思います?」と聞いてくれたので、わたしは、即座にこたえました。

「きゅうちゃん、『カルミナ・ブラーナ』をつかってみるといいんじゃないかな?」

きゅうちゃんは、ぱっと顔を明るくしました。「ああ、『カルミナ・ブラーナ』!」

私は晃華学園(つつじヶ丘)に通っていましたが、きゅうちゃんは、となりの駅の桐朋学園の高校(仙川)を卒業していたので、クラシック音楽に詳しい女性だったのです!

きゅうちゃんは「いいですね!さっそく市川さんに相談してみまーす♡」と嬉しそうに、市川さんに相談しにいきました。私はよかったなぁとおもっていました。

すると、しばらくして、こんどは、市川さんがすっとんできました!

「ながた、ながた!よく言ってくれたよ!この『カルミナ・ブラーナ』、映像にピッタリだ!最後の『臨・兵・闘・・』のフレーズにもばっちり合うしね!これで篠田監督に相談してみる!」

そういって、市川さんもニコニコしながら、篠田監督に会いに行きました。もちろん、篠田監督もOKをだしてくださいました。

その「カルミナ・ブラーナ」の有名な冒頭「おお、運命の女神よ」を第2弾特報やテレビスポットで使うことが決定しました!音楽はこちら!

カルミナ・ブラーナ おお、運命の女神よ カール・オルフ

 

私達はすっかり気をよくして、宣伝担当常務であった中川敬さんに、第2弾特報とテレビスポットをみていただくことにしました・・・ところが!

中川さんが、真っ青な顔をして、

「みなみちゃん!きゅうちゃん!

ながたっち!

なんで『梟の城』に『カルミナ・ブラーナ』をつかったんや!?

至急差し替えせなあかんで!!!

これはゼッタイに、あかんで!」

と怒鳴りはじめたではありませんか!

市川さんはビックリして、

「でも、篠田監督はOKだしてくださいましたけど・・」と恐る恐るいいました。

中川さんは今度は顔を真っ赤にして

「監督がOK出しても、俺がOKださなければあかんねん!

あかんものはあかん!」

と言い張ります。

きゅうちゃんは、実はけっこう気がつよいひとで、

「私は絶対、この『カルミナ・ブラーナ』がいいと思います!」

と、負けじと言い張りました。

私も「常務、私も・・・これがいいと思いますけど?」とおずおずとききました。

中川さんは、歯噛みしてくやしがりました。

「みなみちゃん!篠田監督に見せる前に、俺になんで特報を見せんのや!もう編集しおわったんか」

市川さんは当惑しながら、

「はぁ・・・もうテレビ局と映画館にこれで納品をしようと思ってますけれども・・・(@_@)」

中川さんは「こまったなぁ・・・」と頭を抱えています。

私が「なにか理由があるんですか?」と聴きました。

中川さんは

「・・・うん?まぁ・・・

うまくいえんのやけど・・💦」

と、急にへどもどし始めました。

きゅうちゃんが「常務のお好みに合わないんですか?」とツッコミをいれると、中川さんが一喝しました。

「ちゃうねんて!そんなもんやない。これ、全国の人がみるのやろ?あー、まったくこれだから東京モンは!」

しばらく謎の言葉をぶつぶつおっしゃっていましたが、やがて観念して、

「ま、ええやろ。俺は知らんで。

とりあえず、『梟の城』は

この『カルミナ・ブラーナ』で、

おまえら、勝負かけてみぃ!」

おっしゃったので、一同ほっとしました。

そこで、「『梟の城』カルミナ・ブラーナ編」のテレビスポット、特報が、全国でがんがん流されることになりました!大きな話題を呼び、結果はなんと、時代劇映画としては異例の大ヒットを記録し、市川さんときゅうちゃん、私は

「ばんざーい\(^o^)/」

と祝杯をあげました。

中川さんも、

「ま、終わりよければ総てよし、

やな。ごくろうさん(^_-)-☆」

と笑顔で返してくださいました。

そして、あれから19年後・・・。わたしもきゅうちゃんも東宝を退職し、私は私生活でバツイチになったりと波乱の一年でしたが、2018年10月1日に、運命的な出会いを2017年6月に果たした、N響指揮者のパーヴォ・ヤルヴィさんのコンサートに行きました。NHK音楽祭で、私の大好きなこの、「カルミナ・ブラーナ」を演奏してくださるからでした。

実は、パーヴォと知り合って、すぐに私はメールとお手紙を出しました。その中で、こう書きました。

「マエストロ・パーヴォ、ぜひあなたに、指揮していただきたい曲があるのです。

それはカール・オルフの『カルミナ・ブラーナ』です。

あなたにこの雄大なスケール感がぴったりはまるとおもうのです」

そして、私が、子供のころからこの曲を聴いていること、『梟の城』で予告編に使用したことなどをお話しました。

パーヴォからお返事は来なかったのです・・が、なんとその1年4か月後に、パーヴォがNHK音楽祭で、この曲をとりあげてくださったので、私はすっかり狂喜乱舞!NHKホールの一番前の席にすわって、聴きました(^_-)-☆

あー幸せ!極上の音楽体験・・・になるはずでした。

もちろん、全曲そらんじていましたので、ウキウキしながら、フンフンとリズムをとって聴いていたら、いつもはそういう私をパーヴォは、とってもやさしく見つめてくださって、私のほうを向いて指揮してくださるのですが、なぜかこの日は、

「あー、チコがすっかり

ノッてるぅ・・💦

ボク、まいったなぁ・・💦」

という表情で指揮をされていたので、「あれれ?パーヴォ、どうしたんだろう?」と思っていました。パーヴォは時々、私の顔を覗き込みながら、「ほんとに、この曲でそんなにノッちゃうの?」という顔をして、ときどきポッ(´∀`*)と照れておられたので、私は「おかしいな?おかしいな?(@_@)」と思っていたのでした。

そのときは演奏が無事におわったのですが、なぜかパーヴォのいつものサイン会もなし。ますます「おかしいな、どうしちゃったんだろう・・」と首をかしげる私でした。

しかし!

12月に、このNHK音楽祭の模様が「クラシック音楽館」で放送されることになり、私はイソイソと、テレビの前に鎮座しました。するとパーヴォが大変神妙な顔をして解説をし、指揮しているではありませんか!(しかも、マロさんの解説もなく!!!)

私は、テレビの中の歌詞の訳を見て、「え゛ぇぇぇ?!」と、ぎょっとなりました。

とっても、なんだか、・・・エッチな言葉が(NHKとしては放送コードぎりぎりのフレーズが)がんがん飛び出してきていたのです!!!

(このテロップはまだいいほうでして・・)

パーヴォがとっても私に困惑していた理由と、中川さんが、「差し替えや!」と怒鳴った理由がようやくわかりました!

「カルミナ・ブラーナ」とは、

聖職者(キリスト教のですね)や学生が、どんどんエッチをしていいぞ!

と酔っ払って歌う、

<コミックソング>みたいなものだったのです!

もちろん、私が買ったCDには、そんな訳はでていませんでしたし、晃華学園で中学1年のときに聴いた時は、目白のカテドラル大聖堂で、しかも白柳大司教さま(当時。故人)をお迎えしての演奏だったので、大変感動していたのでした!

なのに、

「司教も学生も男も女も、

どんどんみんなでエッチしよう!」

という曲だったとは!!!!

 

そこで気づきました。

 

中川さんはフランスに留学経験があるから、この歌の本当の意味をしっていたのだと!

 

パーヴォはもちろん、世界的な指揮者ですから、この歌の意味と本来の意味を当然しっていたのだと!

 

で、ふたりとも私たちにほんとのことが言えなくて、すっかり困り果てていたことを!!

 

それで、パーヴォが思い切って、ほんとの訳をNHKで全国放送したと!!

 

ああ、まさに聞くは一時の恥!聞かぬは一生の恥!!!

いまYouTubeで「梟の城」のカルミナ・ブラーナをつかった予告編がどこにもでていないので、ほんとに残念ですが・・誰かがやっぱり気づいたんでしょうね。

あーん、はずかしいったら、ありゃしないです!💦💦

でも、『カルミナ・ブラーナ』は名曲だと思います・・・(´∀`*)ポッ

へんな意味でなくて、音楽的にすばらしいとおもうので、

今度は訳を一切のせないで、放送していただければうれしいです♡

 



最新の画像もっと見る