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新・台所太平記 ~桂木 嶺の すこやかな日々~

N響定期会員・桂木嶺の、家族の介護・闘病・就職・独立をめぐる奮戦記を描きます。パーヴォ・ヤルヴィさんへの愛も語ります。

【東宝時代の思い出~超番外編~】「リング・らせん」、東京国際映画祭でお世話になった、”つぐっち”の思い出♪

2019-02-06 23:45:12 | とにかくVIPの思い出(^_-)-☆

なんだか、このブログ、パーヴォの応援ブログなのに、なぜか「私の古巣・映画会社の東宝と、それをめぐる、映画人と演劇人の、おかしなおかしな思い出話ブログ」と化しておりますが(笑)、うちの父と母が大爆笑しながら読んでくれていて、うれしい限りです!

いままで両親には、私の東宝時代のエピソードは、ほとんど話せなかったので、いまようやくいろいろな事情が話せまして、両親も「なんだか始めはとんでもない会社に娘が入ってしまった!とおもっていたけれど、どうやら、ほんとは楽しく日々すごしていたんだね(^_-)-☆」と安心してもらい、一人娘としては、両親を安堵させられてよかったなと思っております。

きょうはずっと家にいまして、両親相手に、このブログを読んでもらいました。父は、大変朗読好きなので、声にだして私のブログを母に読んで聞かせました。ゴキゲンになった父、「どうだ、パパの朗読はうまいだろ?でも、ともちゃん、お前のブログの文章は長すぎるよ!もうちょっと短くしないと、俺のアゴがくたびれちまうよ💦」と、すっかり苦笑い。

母はもうお腹をかかえてひぃひぃ笑いながら、私の話を聞いてくれていて、「チコちゃんの会社ってほんとにヘンな会社ね(笑)なんだか小学校みたい💦遊びに行ってるんだか、仕事に行ってるんだかわからない会社だったのね」と率直な感想をのべていました。

もちろん、ちゃんと仕事にいっていましたよ!!!(笑)

ところで、きょうは、ジャパニーズ・ホラー映画の金字塔「リング」「らせん」(同時上映でしたにまつわる、おかしなおかしな人間模様をご紹介します!

1998年1月に、映画「リング」「らせん」が公開されました。が、私は、これらの映画のポスター制作に本当に悩まされ、すっかりユーウツになっておりました。なかなかポスタービジュアルが決まらない上に、色校正まで出た・・・と思ったら、宣伝プロデューサーの先述のT先輩(「ポケモン」の宣伝プロデューサーですね^^)が、

「ながたっち、ごめーん!また”つぐっち”が『ポスタービジュアルが気に入らないからビジュアルを変えろ!』って言いだしちゃってさぁ~😢」

と半べそをかきながら、私に謝ってきて、また一から全部色校正を出し直すという、それはそれは大変な状態になっていたのでした。

サブでついていたのは、先述の「踊る大捜査線1」「陰陽師」、そして、「名探偵コナン」シリーズですっかり好調の上田太地くん。ところが、ベテランのふたりをして、いつもため息をついていて、「ながたっち~、どうしよう~💦」と泣きついてきたのでした。

※映画「リング」の一場面。これだけでも怖そうなのですが、ポスタービジュアルはもっと怖いので、ブログには載せません(笑)理由はあとで説明します!

「ねぇ、T先輩、たいちくん、”つぐっち”って誰なんですか?それになんでその人の一言でコロコロかわるんですか?」私がとうとう詰め寄ると、T先輩はため息をつきながら、こう答えました。

T先輩「角川書店の角川歴彦(つぐひこ)

社長だよ・・・💦」

私「えっ、マジっすか?あの角川春樹さんの弟さんですよね?」

T先輩「もうやんなっちゃうよ。角川書店の人がポスタービジュアルにGOサインを出すかと思ったら、そうじゃないんだ、あそこの会社。ぜーんぶ、”つぐっち”が目を通して、彼がOK出さないとダメらしいんだよ!」

私「え゛ぇぇぇ~っ!」

たいちくん「(さらに深いため息)・・でも、めちゃくちゃ大物だから仕方ないですよね・・」

T先輩「僕らもはじめはそう思って我慢してたんだ。でも、”つぐっち”の鶴の一声で、ポスタービジュアルがコロコロかわるだろ?でも、ながたっちが会議でやってくれた、こないだのレクチャーでは、【ポスターの色校正で、何度もビジュアルを変えると、版代がその分かかり、高額な印刷費になってしまう】ということだったよね?あーあ!ボクたち、宣伝予算のこと考えると胃が痛いよぉ~😢💦」

私「困りましたねぇ・・。ねぇ、”つぐっち”ってそんなに影響力あるんですか!?」

T先輩「あるある!すごいよ~!」

たいちくん「まぁ、角川書店の中興の祖ですからねぇ~😞」

T先輩「角川内では【社長のご託宣】といわれてるらしいよ💦」

たいちくん「まったく、どうしたもんでしょうね・・・『ゴジラ』の公開は近くなってますし・・・」

私「ポスタービジュアル、最悪、(映画調整部の)高井専務から言っていただいて、決めていただくほかないのではないかしらん・・」

たいちくん「たしかに、角川社長と高井専務は仲良しですからね。それもお願いするしかないかも・・・」

T先輩「でも、高井さんに頼むのは、最後の手段だなぁ・・。」

 

そうこう言って、3人でため息をついているうちに、ようやく”つぐっち”がポスタービジュアルにゴーサインをだしました!

私は意気揚々と、そのビジュアル案を見せていただいたのですが、あまりの怖さに「うぎゃぁ~っ!!!!」と叫んでしまいました。もう怖くて怖くて、このブログではご紹介できないくらい、怖いポスターでした。(ご興味のある方は、ご自分で検索してみてください。ほんとにマジで怖いですから!)

「もう、”つぐっち”って、こういう趣味の人なの?!何様なの、いったい!?」

と私は、すっかり、まだ見ぬ”つぐっち”に、プンプンヽ(`Д´)ノ!と、怒りまくり。印象はすっかりサイアクなものになっていたのでした。宣材倉庫に、「リング」と「らせん」のポスターやちらしを取りに行くのが、ほんとにユーウツになるほど、それはそれは怖いビジュアルだったのです!

ところが、このビジュアルで前売り券を発売してみたら、劇場で飛ぶように売れる売れる!

原作の知名度も人気も高かったこともありますが、やっぱりこのビジュアルの怖さなのかと・・。あらためて、”つぐっち”こと角川社長の眼力のするどさや、ねばりづよさに、内心感嘆していた私でした。

さて、数週間後。T先輩と、たいちくん、そして、パブリシティ担当のHさん(いまは宣伝プロデューサー。TOHOマーケティングに所属)が、とてもしょげかえって(?)会社に帰ってきました。私が「あら、みなさん、どうしたの?元気ないじゃないですか?」と聞くと、三人は、また私に泣きついてきたのでした。

「ながたっち・・きょうさ、『リング』と『らせん』の試写をみたんだよ。そしたらさ・・全然こわくないんだよぉ~💦」

T先輩が気落ちしたように言うと、Hさんは、「ほんとなんだよ、ながた。全然こわくなくてさぁ、これじゃ当たらないよ。俺ら心配でしかたないんだよ~」と口をとがらせます。たいちくんは、なにか言いたそうでしたが、ぐっとがまんしていました。T先輩がいいました。

「ねぇ、あした、ながたっち、『リング』と『らせん』の試写をみてくれない?女子高生試写会をやるからさ、一緒に見てみて、僕らに感想いってよ」

わたしは、「ほんとに怖くないんですか~?!私、怖い映画、絶対嫌いなの~!」といったのですが、T先輩もHさんも「うんうん。全然こわくないよ!」ときっぱり断言。たいちくんは、なぜか眉をしかめましたが、ずっとだまっています。私は、そういう意味ではお人よしなので、「わかりました。じゃ、明日の晩、試写みますね」といって、引き受けたのでした。

翌日。大勢の女子高生たちがやってきました。みんなかわいらしい制服姿に、当時はやり始めた、携帯(ガラケーですね)をもって、たのしげに試写室に入っていきます。私はいちばん最後に試写室に入って・・試写を見たのでした。

試写が始まりました。もう数分後、場内は大パニック!

「うぎゃぁぁぁ~!」

「えっ、マジで怖いじゃん!💦」

「やめてェ~!!!💦」

「おかあさーん!💦」

と悲鳴が次々あがる中、私は、体中ぶるぶるふるわせて、

「もう勘弁して。もう試写室出たい。帰りたい。こんな怖いの、みたくない、イヤイヤ!」と

泣き叫んでおりました。

試写会が大パニックのうちに終わり、みんなきゃぁきゃぁ騒ぎながら、試写室を出てきて、一斉に携帯で友達に電話をかけ始めました。

「もう~信じらんない!マジで怖かった!」

「マジやばで怖い!」と次々に、口コミで広まりました。

私はといえば・・・本来ならもっと冷静に感想をいわなくてはならないのですが、はっきりいって、まっすぐ立っていられないほど、頭がくらくらしていて、コワくて、泣きじゃくっておりました。

そこへ、T先輩とHさんが駆け寄ってきました!

「ながたっち!映画はどうだった?!」

私が

「もうT先輩、Hさん、こんな映画作っちゃだめですよ!誰がつくったんですか!?これ、怖すぎです!マジで怖くて、きょう家に帰れません!💦💦💦」

と泣き叫んだら、ふたりは突然、

「ばんざーい!\(^o^)/\(^o^)/」

と大はしゃぎするではありませんか!

私が「ふぇ?」とキョトンとしていたら、ふたりは「いやー、ながたっちが、あんなに怖がったぞ!『こんな映画作っちゃだめですよ!』だって!(笑)」と大爆笑しているではありませんか!

翌日私は、あまりに怖くて、とんでもない悪夢を見て、ひきつけを起こしてしまい、会社を午前半休する羽目になったくらい、『リング』『らせん』はとんでもなく怖かったのでした!

翌日出社してみると、中川さん、矢部さん、市川さん、伊勢さん、T先輩、Hさん、そしてたいちくん・・などなど、

宣伝部のみんながクスクス、クスクス

笑っているのです!

ひどーい!!!すごくみんなのこと、心配してあげて、試写をみたのに!!!

なぜか、私がひきつけを起こして会社を休んだことは、松岡会長(現・東宝㈱名誉会長)にまで話が伝わっていたらしく、松岡会長が「ながたさんがコワがって休むくらいやから、『リング』『らせん』は大当たりしますな!はッはッは!」と笑うほどだったのです(!!!)。

私は、一応けがの功名ということで、半日休んだことはお目こぼしになりましたが、なんだか釈然としませんでした。完成披露試写会のときも、なかばブンむくれながら、例によって控室係をしておりました。すると・・ちょこちょこと、小柄な背広姿のオジサンが私に近寄ってくるではありませんか!

「あなただね、『リング』『らせん』を見て、ひきつけを起こして休んだっていうひとは!」といったその人こそ、”つぐっち”こと、角川歴彦社長だったのです!!!!

 

※こちらが、その噂の”つぐっち”こと、角川歴彦(つぐひこ)さん。もうやんなっちゃうほど、偉すぎる、日本の代表的な実業家のおひとりです!”つぐっち”なんて言ってしまって、ゴメンナサイ<(_ _)>💦

株式会社KADOKAWA取締役会長カドカワ株式会社取締役会長、KADOKAWA Contents Academy株式会社取締役会長、株式会社ところざわサクラタウン代表取締役会長、一般財団法人角川文化振興財団理事長、一般社団法人アニメツーリズム協会理事長。学校法人角川ドワンゴ学園理事。東京メトロポリタンテレビジョン株式会社取締役。

株式会社メディアワークス代表取締役社長、株式会社角川書店代表取締役社長、株式会社角川グループホールディングス代表取締役会長、日本雑誌協会理事長、日本映像ソフト協会会長、コンテンツ海外流通促進機構代表幹事、東京国際映画祭チェアマン、内閣官房知的財産戦略本部本部員[1]などを歴任した。(ウィキペディアより)

私は、思わず、直立不動になって仰天!”つぐっち”は大変、ニコニコと優しく、穏やかにこういいました。

「あなた、『こんな怖い映画を作ったの誰ですか!?』といって、怒ったそうですね。高井さんからききましたよ(笑)」

私が口をあけて、ぽっかーんとしていると、”つぐっち”はさらにこう続けました。

「この映画を作ったの・・ボクなんですよ、ごめんなさいね。あなたみたいな人を怖がらせてしまって。でも、あなたのような女性ファンが怖がってくれて、劇場に来てくれると、ボクとしては嬉しいんだなぁ~(^_-)-☆」

そう、とってもユーモラスに、私にお話してくださったので、私はすっかり恐縮して、

「スミマセン、あの、へんなことを言ってしまって・・・💦」と慌てふためいていたら、

”つぐっち”は、顔をくしゃくしゃにして、「東宝さんには、がんばっていただいて、感謝しています。ボクのわがままもずいぶん聴いてくれたそうだし・・ありがとう!」とおっしゃってくださったので、私はすっかり大感激!

なんというこの低姿勢!こんなすごいVIPなのに!

その後、ご承知のように、『リング』『らせん』は超大ヒット!怖すぎるという評判が口コミで広がり、すぐに「角川冬のホラーシリーズ」ということで、正月第2弾の定番となり、ずっとシリーズ化されるほどのヒットを記録しました。

また、角川社長は、角川映画の社長、東京国際映画祭のチェアマンも歴任。映画界に革命を起こされました。のちに私が広報室で、東京国際映画祭を取材した際も、大変親切にしていただきました。

また、日本映画製作者連盟での、毎年の各映画会社社長記者会見では、私のことを覚えていてくださり、「ながたさん、『宝苑』(東宝の社内報ですね)で、国際映画祭やうちの映画のことを取り上げてくださってありがとう!」とお礼を言われ、ますます感激しました。

上記にあげた、大変華麗な経歴を歴任されて、映画・出版と大きくその巨人ぶりを示しておられますし、高井英幸社長(当時。現・東宝㈱相談役)との仲良しコンビで、映画界に大変な活力を生み出し、貢献した実績は、長く称えられることと思います。

ある種の天才肌の実業家だと思いますし、ワンマン、という人もいます。でも、実際は、とても気遣いの細やかな優しさを持ち合わせた方だと思います。

これからも、ますます日本のエンターテインメント、出版界のために、獅子奮迅のご活躍をみせていただきたいと存じます!\(^o^)/

 



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