新・台所太平記 ~桂木 嶺の すこやかな日々~

N響定期会員・桂木嶺の、家族の介護・闘病・就職・独立をめぐる奮戦記を描きます。パーヴォ・ヤルヴィさんへの愛も語ります。

公開リハーサルに行ってきました!ガヴリリュクさん、大当たり!素晴らしい出来映えで大感激!

2019-02-15 17:27:48 | NHK交響楽団ニュース♪

きょうは既報通り、朝10時半から、NHK交響楽団の定期演奏会にともなう、「N響を100倍楽しむ会!」記念公開リハーサルに行ってまいりました!結論から言うと、今宵の演奏は、とても歴史的なすばらしい演奏になりそうな、そんな予感に満ちたものになりました!

10時半に集合して、NHK文化センター横浜教室のスタッフの方から、説明をうけ、11時からゲネプロ開始。N響のみなさんと、本日のピアニスト・ガヴリリュクさんの事前練習の風景を見ることができて、大変幸せです!

マロさんは、黒づくめのダンディなスーツ、伊藤亮太郎さんは、赤いセーター姿、大宮さん、森田さん、中村翔太郎さん、大村さん、松本さん、宇賀神さん、山根さん、そして、2月末の香港公演をもって定年退職される、オーボエの茂木さん・・・とずらりと主要メンバーがならぶと壮観です!

インスペクターの方のご挨拶があり、「きょうは8Kの生放送があります!」と告知されると、団員のみなさまが一斉に「お~っ!」と湧きました!

続いて、黒の半袖のTシャツをかっこよく着たパーヴォが、さっそうと登場。「オハヨウゴザイマス!」と明るく元気にご挨拶され、さっそく1曲めの「ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番」のゲネプロがスタートしました!

解説は、NHKのクラシック番組でのたのしい解説でおなじみの、奥田佳道先生。授業を受けるのは二回目ですが、今回は、大変詳しくいろいろ教えてくださったので、本当に感謝です!

さて、注目のガヴリリュクさんの演奏ですが、第一音をきいただけで、衝撃が走るほど、天才的な演奏をされるのでビックリ!カティアさんとカティアさんファンには申し訳なかったですが、やっぱり今日の演奏は、彼で大正解かもしれません。華麗で甘くて、でも大スケールに弾きこなせる力もあって、洒脱なのに堂々としていて・・・。思わぬスター誕生劇の予感に、私もメモを取る手が震えます!

第1楽章の「鐘」の音は、奥田先生曰く、「ロシア社会における、喜びとかなしみの象徴」なのだそうです。ロシア人は、嬉しい時もかなしい時も「鐘」をならし、ともに感情を分かち合うのだといいます。チャイコフスキー、ラフマニノフ、プロコフィエフなど、ロシアの作曲家はみな「鐘」モティーフを重要視されているということで、大変勉強になりました。

パーヴォとガヴリリュクさんの鳴らす「鐘」は、ベルリン・フィルとカラヤンのそれに比べると、タッチが非常に速く、快速演奏といってもいいほどです。でも決して走りすぎず、しっかりと流麗な音の流れを大事にしているので、安心してきくことができます。

奥田先生の解説によれば、ラフマニノフは、もともと自分が(ピアノを)弾くための作曲をしたので、ピアノがかなり難しいのです。でも、ガヴリリュクさんは、超絶技巧を難なく、時に甘やかに、時に大胆に披露されていきます。圧巻ともいうべき演奏に、私は思わず落涙しました。

パーヴォの指揮も、リハーサルだというのに、とにかく圧倒的!半袖からのぞく、逞しい二の腕のカッコよさたるやこの上ないです!とにかく、今日のパーヴォはノリにのっていますね(^_-)-☆すっかりうれしくなりました!

※でも、かつらぎ、ちゃーんとツイッターのみなさまの言う通り、首を振ったり、スウィングしたりしませんでした。きょうはなぜか、曲を聴くこと自体に集中できて、メモを一生懸命とっておりました。だから、今宵の演奏でも、スウィングしないですみそうですよ(^_-)-☆!

第1楽章が感動のうちにおわり、パーヴォも大変満足げに「ブラーヴォ!」を連発。うーん、いい仕上がり♪

第2楽章は、第1楽章のハ短調から、あっと驚くホ短調への移調ではじまります。でも、はじまりの音は、同じ「ド」の音なので、その対比がとても面白いです、と奥田先生はおっしゃいます。

ピアノ(ガヴリリュクさん)がゆっくりと入り、フルートがまた絶品です。カラヤンとベルリン・フィルをこの段階ですでに超えてます!あとはどこまで高みに上るかでしょうね!

クラリネット(松本さん)がガヴリリュクさんの伴奏を美しく奏でます。またファゴットの宇賀神さんも見事です。ガヴリリュクさんの演奏に、場内はすっかり陶然となり、パーヴォも大変感慨深そう。ガヴリリュクさんは、ときどきジャズィーな雰囲気もただよわせ、この名曲をいっそう親しみやすいものにしています。

奥田先生曰く、「もちろん理論的なことは考えないで、メロディーの美しさに酔って頂きたいのですが、あえていうなら、第1楽章と第2楽章の違い~『調性』の秘密もラフマニノフのこの曲を理解する大きなキーポイントなので、楽しみにしていてください」とのこと。

奥田先生は、とにかく時宜を得た名解説で、本当にわかりやすく、しかも明るく楽しくお話されるので、伺っていて頭が下がるばかり。もちろん大ベテランの音楽評論家の先生としては大先輩なのですが、学ぶべきことがたくさんあって、すばらしい出会いになったと感激しました!

パーヴォはあまり注文を細かくつけませんが、とにかく曲の入るタイミングと、弦楽器・管楽器のバランスを重視して、注意をするのに終始しました。でも、ちょっとパーヴォが直しただけで、名演がさらにグレードアップしていくので、さすがパーヴォは世界一のマエストロだと感動してしまいます!

そして、圧巻の第3楽章!

ラフマニノフはともすれば「甘い旋律・ロマンティックな作風」と揶揄されがちな作曲家だといいますが、クライマックスになかなか到達せず、あえて聴衆を「じらし」、そしてガヴリリュクさん、パーヴォ、N響のみなさんが、混然一体となったところで、コーダを一気に盛り上げるのが見事だと、奥田先生は語ります。

ガヴリリュクさんが奥田先生に以前この曲について語ったところによれば、「まさにこの曲、このフレーズはピアノ弾き冥利につきますね。ラフマニノフ、ありがとう!」と感激をあらわにされたそうです。

そして、まさに「歌舞伎役者なら大見得を切るところ」というべき、すばらしいガヴリリュクさんの演奏に、涙がとまらないかつらぎでした。リハーサルでこんなに泣けてしまったら、本番はどうなってしまうのでしょう!

すべてのオーケストラがこのメロディーに高らかに音楽への愛情を謳い上げます。パーヴォも本当に幸せそう!

そして、華麗なる終結部!まさにブラーヴォ!大拍手がオーケストラの中から巻き起こり、大団円となりました。パーヴォも超ご機嫌です♪

休憩をはさんで、続いてはプロコフィエフ 交響曲第6番。

この曲のポイントは、ピアノとハープが重要な役割を果たすことです。これにチェレステが加わると、「天国」のイメージになる、と奥田先生はおっしゃいます。

もともとこの曲は、かなり複雑な背景を持って作られたそうです。1947年初演ですが、プロコフィエフは、ロシア(ソ連)の戦争の勝利を高らかに謳い上げた第5番とちがって、複雑な印象をのこす第6番を作って、「ジダーノフ批判」の渦に巻き込まれ、徹底的に弾圧をされたといいます。最後の楽章の終わり方も含めて、非常に問題提起をするものであり、はたして、ロシア(ソ連)の第2次大戦における勝利を、プロコフィエフは単純に喜んでいたのか?それとも、もっと複雑な想いがあったのか、あえて判然とさせないところに、この曲の面白さと醍醐味があるといえましょう。

パーヴォも旧ソ連時代のロシアのもと、占領下のエストニアで大変な苦労をして育った、と奥田先生はかたります。20年来のパーヴォとのおつきあいを続けてこられた奥田先生だからこそ知る、パーヴォの人知れぬ歴史でした。

そのパーヴォの隠されたご苦労を初めて知って、私は、パーヴォがなぜこんなにいろいろな人に愛情をそそぎ、優しくしてくれるのかわかり、ふたたび落涙しました。ご自分が大変な苦難を経験したからこそ、いろいろな人に温かくできるのだなとおもい、あらためて彼への尊敬と愛情の念がわきましたし、自分の苦労は、パーヴォが経験したことにくらべたら、まだまだかわいいものなのだと励まされた次第でした。

印象的だったのは、ピアノの女性奏者が、チェレスタに一瞬だけ移動し、「天上の」音楽をハープとともに奏でることです。ハープとチェレスタは両輪となって「天国」のイメージを形成します。そのプロコフィエフの胸中に何が去来していたのか、いまとなっては知る由もありませんが、プロコフィエフはそこに魂の救済を見出したのではないかと私は推察しました。

プロコフィエフの交響曲第6番は、1947年に、ムラヴィンスキー指揮、レニングラード・フィルによって初演されましたが、これはヨーロッパでもなかなかその政治性ゆえに、演奏の機会がすくないといいます。時計の音や心臓の鼓動をおもわせる音が、プロコフィエフのトレードマークだと奥田先生はいいます。不穏かつ不安なメロディが続きます。プロコフィエフはこの第1楽章について、次のような言葉を残しているそうです。

「第2次大戦に勝ったとはいえ、多くの人が亡くなり、一人一人が癒すことのできない傷を負い、愛する人を失った。私はこのことを決して忘れることはできません」

第2楽章も不安な要素を抱えたまま進みます。ラルゴ、壮麗かつ重厚な場面。

第3楽章では、パーヴォはリズムを重要視されました。"very important"とパーヴォは呟きました

ここからは、クラリネットの独奏がすばらしい響きを奏でます。プロコフィエフの交響曲第5番と共通性をもたせています。チューバの音が合いの手をいれており、これをどういう意味にとらえるかが、議論の的になっているそうです。

第1楽章の変奏が回想として繰り返し流れ、かなしみをもって迫ります。

不協和音的にすべての音が重なっていきます。そして、鮮烈な印象を残すギャロップで幕を閉じます。

指揮を終えたパーヴォは、ここの終幕でねばり、団員に「もう一度!」と迫ります。パーヴォの、この曲とプロコフィエフへの想い、そして、戦争と平和に対する思いがほとばしる瞬間なのでしょう。マロさんとも、細かく最終確認をして、リハーサルは終了しました。

このあとは、奥田先生の大変わかりやすい講義があり、私には本当に勉強になることばかりでした。独学で学ぶのもいいけれど、ちゃんと評論を志すなら、しかるべきいい先生の授業をうかがったほうがいいなぁ・・とひとりごちておりました。でもお金のかかる話なので、父に相談しなくてはなりませんが、もし可能なら奥田先生の門をたたいて、きっちり勉強したい意を強くもちました。

この日であったみなさまに、本当にお礼を申し上げます!

本番まであと1時間半余となりましたが、パーヴォ、ガヴリリュクさん、NHK交響楽団のみなさま、頑張ってくださいね!!\(^o^)/

 

※今宵のかつらぎは、ちょっとドレスアップしておめかししています♪ 生放送をご覧になられるみなさま、かつらぎを探してくださいね(^_-)-☆



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