「血と骨」2006年1月17日
【ひとこと】
欲望のままに生きた一人の男の生涯。
【物語のあらすじ】
朝鮮から単身日本へ渡ってきた金俊平(ビートたけし)。持ち前の能力と凄まじいまでの上昇志向を胸に、裸一貫でのし上がっていく。気に入った女は有無を言わさずものにし、商機に乗じてがめつく稼ぎ、儲けは独り占め。文句を言う奴には容赦なく拳を振るい、狂犬の如く暴れまわる。俊平に逆らえば半殺しの目に合わされる、それを知りぬいている家族は常に虐げられ、知人らも搾取され、憎悪を募らせるが、俊平の凶暴さの前にひたすら及び腰になってしまう。長男・正雄(新井浩文)は、そんな父を憎み、恐れながら、影響下から逃れる事ができずに苦しんでいた。そんなある日、俊平の息子だと名乗る武(オダギリ・ジョー)が表れ、俊平の家に住み着いて、気ままに暮らし始めた・・・。
【感想など】
いやいやいやいや、まいりました。これは濃い。実に濃ゆ~~~~い物語ですよ。なんとまあ、こんな凄まじい男が実在していたのかと、絶句しましたね。
ビートたけしもさることながら、鈴木京香も凄かったし、新井浩文もオダギリ・ジョーも田畑智子も濱田マリも、役者達の大熱演が素晴らしい。鬼気迫るシーンの連続です。観ていて唖然とするばかりです。言葉の通じない世界を垣間見た気がしますね。
世の中には、なんとも業の深い人間というのがいるもんなんですねぇ。この映画で描かれている場所は紛れも無く日本で、大阪の朝鮮人町が舞台なんですけど、まるでメキシコの映画を観ているような錯覚に陥ります。あるいは中上健次の描き出した路地の物語か。とにかく自らの欲望に忠実に生きる人間なんですよ。男はひたすら暴力的。女はとことんへこたれない。家長の横暴は黙って耐えるんですねぇ。殴られても蹴られても、我慢、我慢、我慢、の連続。観てるこっちの胃が痛くなっちゃいますよ、まったく。
しかし、この金俊平という男、目と鼻の先に正妻と妾を住まわせて、妾が寝たきりになったら別の女を連れ込んで世話させます。これ、ものすごくないですか?こういうことができてしまう神経が既に私の想像を絶します。周囲の人間もいいかげん腹に据えかねてるのに、手出しができない、金俊平という男はまったく「怪物」ですよね。この男は金銭にも非常に執着が強くて、家族にはビタ一文渡さないんです。正妻の李英姫が子供達のために必死で働いているのに「あのババァが」なんて言い捨てる。たまに酔っ払って帰ってきては娘にまで暴力を振るう。みんなが愛想を尽かすのも当然です。とにかく強欲で横暴で粗野で、だから愛情も得られないわけで、結局最期は寂しいもんでした。こういう生き方はあまりに哀しい、寂しすぎる、暗い画面を見つめて、溜息。
ただ、脳腫瘍を患った妾の清子が寝たきりになると、最初は甲斐甲斐しく世話してるんですよね。最後は自分の手にかけて安楽死させるし。まあ、単純に介護に疲れて嫌気が差したととれなくもないですが。なんだか普段があまりにも残虐非道だから、すごく優しい一面もあるように見えてしまいます。この男は、本当に不思議な引力を持っていますよ。「支配」することでしか人と関われないんですね。おそらくは、他者から愛され優しくされ受け入れられた経験がないのでしょう。あたたかな胸に抱かれて、安心して眠りにつくこともなかったのでは?どうやって人を愛せばいいのか、愛されたことがなければわかりませんから。
女は彼にとってはSEXの対象でしかない、つまり欲望の捌け口でしかないように見えるんですけれど、やたら子供を産ませたがるんですよね。ろくに養育費も渡さないのに。子供が好きなわけでもないんですよ?支配した結果の戦利品的なものなんでしょうか?男の子を産ませたがるのは「跡継ぎ」が欲しいから、というのはわかります。でも、正妻の長男・正雄に対しては考えられないくらいに冷淡で、本気で殺しそうになったりもします。意に添わない長男など、彼にとっては無用の長物なんでしょうか?
崔洋一監督、冷静な目で見てますね、この主人公を。映像は全体に暗く、音楽も物悲しく、ひたすらに虚しい世界を描いています。でも、なぜか、こういうギラギラした男がいたことを 激動の時代を生き抜いたことを 知って良かったとも思うんです。
生きてる実感ってありますか?今、自分が生きていると、身体中にたぎる血を熱く感じること、ありますか?今時、そういうのを肌で感じながら生きている人ってあんまりいないんじゃないかしら。だから、この金俊平という怪物を 一瞬羨望の眼差しで観てしまうのでは?こんな生き方はしたくないし、できないと思うんです。なのに、どうしてこんなにも惹きつけられるのでしょう。底なしのエネルギーを感じるから、なんでしょうかねぇ・・・・。
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【物語のあらすじ】
朝鮮から単身日本へ渡ってきた金俊平(ビートたけし)。持ち前の能力と凄まじいまでの上昇志向を胸に、裸一貫でのし上がっていく。気に入った女は有無を言わさずものにし、商機に乗じてがめつく稼ぎ、儲けは独り占め。文句を言う奴には容赦なく拳を振るい、狂犬の如く暴れまわる。俊平に逆らえば半殺しの目に合わされる、それを知りぬいている家族は常に虐げられ、知人らも搾取され、憎悪を募らせるが、俊平の凶暴さの前にひたすら及び腰になってしまう。長男・正雄(新井浩文)は、そんな父を憎み、恐れながら、影響下から逃れる事ができずに苦しんでいた。そんなある日、俊平の息子だと名乗る武(オダギリ・ジョー)が表れ、俊平の家に住み着いて、気ままに暮らし始めた・・・。
【感想など】
いやいやいやいや、まいりました。これは濃い。実に濃ゆ~~~~い物語ですよ。なんとまあ、こんな凄まじい男が実在していたのかと、絶句しましたね。
ビートたけしもさることながら、鈴木京香も凄かったし、新井浩文もオダギリ・ジョーも田畑智子も濱田マリも、役者達の大熱演が素晴らしい。鬼気迫るシーンの連続です。観ていて唖然とするばかりです。言葉の通じない世界を垣間見た気がしますね。
世の中には、なんとも業の深い人間というのがいるもんなんですねぇ。この映画で描かれている場所は紛れも無く日本で、大阪の朝鮮人町が舞台なんですけど、まるでメキシコの映画を観ているような錯覚に陥ります。あるいは中上健次の描き出した路地の物語か。とにかく自らの欲望に忠実に生きる人間なんですよ。男はひたすら暴力的。女はとことんへこたれない。家長の横暴は黙って耐えるんですねぇ。殴られても蹴られても、我慢、我慢、我慢、の連続。観てるこっちの胃が痛くなっちゃいますよ、まったく。
しかし、この金俊平という男、目と鼻の先に正妻と妾を住まわせて、妾が寝たきりになったら別の女を連れ込んで世話させます。これ、ものすごくないですか?こういうことができてしまう神経が既に私の想像を絶します。周囲の人間もいいかげん腹に据えかねてるのに、手出しができない、金俊平という男はまったく「怪物」ですよね。この男は金銭にも非常に執着が強くて、家族にはビタ一文渡さないんです。正妻の李英姫が子供達のために必死で働いているのに「あのババァが」なんて言い捨てる。たまに酔っ払って帰ってきては娘にまで暴力を振るう。みんなが愛想を尽かすのも当然です。とにかく強欲で横暴で粗野で、だから愛情も得られないわけで、結局最期は寂しいもんでした。こういう生き方はあまりに哀しい、寂しすぎる、暗い画面を見つめて、溜息。
ただ、脳腫瘍を患った妾の清子が寝たきりになると、最初は甲斐甲斐しく世話してるんですよね。最後は自分の手にかけて安楽死させるし。まあ、単純に介護に疲れて嫌気が差したととれなくもないですが。なんだか普段があまりにも残虐非道だから、すごく優しい一面もあるように見えてしまいます。この男は、本当に不思議な引力を持っていますよ。「支配」することでしか人と関われないんですね。おそらくは、他者から愛され優しくされ受け入れられた経験がないのでしょう。あたたかな胸に抱かれて、安心して眠りにつくこともなかったのでは?どうやって人を愛せばいいのか、愛されたことがなければわかりませんから。
女は彼にとってはSEXの対象でしかない、つまり欲望の捌け口でしかないように見えるんですけれど、やたら子供を産ませたがるんですよね。ろくに養育費も渡さないのに。子供が好きなわけでもないんですよ?支配した結果の戦利品的なものなんでしょうか?男の子を産ませたがるのは「跡継ぎ」が欲しいから、というのはわかります。でも、正妻の長男・正雄に対しては考えられないくらいに冷淡で、本気で殺しそうになったりもします。意に添わない長男など、彼にとっては無用の長物なんでしょうか?
崔洋一監督、冷静な目で見てますね、この主人公を。映像は全体に暗く、音楽も物悲しく、ひたすらに虚しい世界を描いています。でも、なぜか、こういうギラギラした男がいたことを 激動の時代を生き抜いたことを 知って良かったとも思うんです。
生きてる実感ってありますか?今、自分が生きていると、身体中にたぎる血を熱く感じること、ありますか?今時、そういうのを肌で感じながら生きている人ってあんまりいないんじゃないかしら。だから、この金俊平という怪物を 一瞬羨望の眼差しで観てしまうのでは?こんな生き方はしたくないし、できないと思うんです。なのに、どうしてこんなにも惹きつけられるのでしょう。底なしのエネルギーを感じるから、なんでしょうかねぇ・・・・。
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