ちいさい ねこ♪

ひとつでも多くの心揺さぶられる瞬間をとどめておきたいから・・・。

映画レビュー「ヴェロニカ・ゲリン」

2008-02-26 13:25:08 | 映画レビュー
 「ちいさい ねこ♪」でupした映画レビューもこれで100本になりました。過去ログから出してきた文章が多くて大変もうしわけなく思っています。これからも、マイペースでほんの少しずつでも良い映画をご紹介できたらいいなぁと思います。なるべく新作をご紹介したいのですが、なかなか劇場まで足を運べず・・・。まあ、生ぬるく見守っていただけると嬉しいですよ。

 ところで、昨日はアカデミー賞の発表がありましたね。「エリザベス・ゴールデンエイジ」で主演女優賞にノミネートされていたケイト・ブランシェットは「アイム・ノット・ゼア」で助演女優賞にもノミネートされ、話題になりました。惜しくも受賞は逃しましたが、彼女の演技力は、万人の認めるところとなっています。本日ご紹介いたしますのは、ケイト・ブランシェット渾身の演技で感動を呼ぶ実話ベースの作品。いわゆる伝記物ですが、非常にいい映画だと私は思っています。

「ヴェロニカ・ゲリン VERONICA GUERIN」2005年9月27日

【ひとこと】
 彼女は、地に落ちた一粒の麦。

【物語のあらすじ】
 アイルランド、ダブリンの街角に、金髪のすらりとした美女が立っている。かっちりしたスーツ、短く切った髪、強い光を放つ眼、不敵な笑みを浮かべる口元、彼女の名はヴェロニカ・ゲリン。「サンデー・インディペンデント」誌の記者である。ペンとメモを片手にどこへでも取材に行き、たった一人でも臆することなく闇の中へと切り込んでいく。

 麻薬の売人にされ、中毒になり、破滅させられていく多くの子供達の姿が、ヴェロニカにある「決意」をさせた。皆が報復を恐れて知らぬ顔をする麻薬組織の裏を暴き、売人と黒幕を一掃する。そのために、どこまでも真実を追い続け、必ず「悪」を糾弾する、と。

【感想など】
 勇気と信念の人・ヴェロニカに扮したのは、ずば抜けた演技力で常に注目を浴びるケイト・ブランシェット。この作品の撮影に際しては、徹底的にヴェロニカを研究し、ダブリンに長期滞在して、アイルランドの訛りもマスターしたという。渾身の演技で、まさにヴェロニカその人を表現し尽し、大きな感動を呼ぶ。

 ジャーナリストであるヴェロニカは、勇敢で、賢く、行動力のある、素晴らしい人だった。そしてまた彼女は、家族を愛し、一人息子を大事にする、心優しき女性でもあった。しかし、彼女が敢然と立ち向かった相手は、麻薬売買で利益を得る闇の世界の男達。一筋縄でいこうはずもなく、彼女の身辺には次第にきな臭い雰囲気が充満し始める。

 銃で撃たれ、顔を殴られ、「息子を誘拐して犯す」と脅され・・・・それでも、決してあきらめなかったヴェロニカ。心底怯えて吐いてしまうほどの苦痛にも、根を上げなかった強い人である。その信念がやがて世論を動かし、政府をも動かし、アイルランドの犯罪史そのものをも変えてしまう。

 アイルランドといえば、ギネスビールとウィスキー、IRA、その程度にしか認識していなかったが、こんなにも壮絶な戦いを挑んだ女性が実在したとは!それを知っただけでも、私はこの映画を観てよかったと思う。こんなにも強くて優しく美しい人を亡くしたことはアイルランドにとって大きな損失だと言えよう。

 特定の人物の伝記映画となると、どうにもダラダラしてしまいがちなものだが、そこはさすがのジェリー・ブラッカイマー製作、上手くまとめきっている。監督は「フォーン・ブース」のジョエル・シュマッカー。いいコンビだ。キャロル・ドイルの原作を当人と「ホワイト・オランダー」のメアリー・アグネス・ドナヒューが脚本化している。うまい構成にうならされる。特に、自分の信条を貫く為に、最愛の一人息子までも危険にさらさねばならない母親の苦しさを見事に表していた。

 ヴェロニカ・ゲリン。彼女は地に落ちた一粒の麦なのだと思う。芽吹いた一粒の麦が、長い長い時間をかけて、広大な荒地に豊かな実りをもたらしたのだ。彼女の行動は人々に感銘と勇気を与えた。彼女の死を契機に、大きな運動が巻き起こり、正義の鉄槌は下された。もしも彼女が脅しに屈していたら?途中であきらめてしまっていたら?買収に応じていたら?今のアイルランドはなかったはず・・・・。

 遺志を継いだ人々の手によって、彼女の願いは果たされようとしている。彼女と同様、犠牲になったジャーナリスト達に花を。安らかな眠りを。勇気を持って行動することの大切さを教えてくれる、やりがいのある仕事に賭ける素晴らしさを見せてくれる、そういう作品だった。

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