ちいさい ねこ♪

ひとつでも多くの心揺さぶられる瞬間をとどめておきたいから・・・。

映画レビュー「ホームレス中学生」

2009-09-10 07:36:56 | 映画レビュー

【ひとこと】
美しすぎるホームレス。

【あらすじ】
 いよいよ明日から夏休み。中2のヒロシは女の子から「映画行かへん?」と誘われて、ウキウキ気分で帰宅。が、家に帰ると家財道具がすべて外へ運び出されて積み上げられ、入口には「KEEP OUT」のテープ。兄姉と、いったい何が起きたのか、どうすればいいのか、話しているところへ、父親が・・・。「それぞれ生きていってください。解散!」の言葉に呆然とするも、兄姉二人に迷惑をかけたくないと思ったヒロシは、身の回りの物をバッグに詰めて、遊び慣れた公園へ行く。こうして彼のホームレス生活が始まった。

 お笑いコンビ「麒麟」の田村裕がつづった同名自叙伝が原作。

【感想など】
 小池徹平主演・・・・えーーーーーw 全然田村と似てないのにw 映画化のニュースを聞いて、まずそう思った。あんな可愛い男子中学生が公園でホームレスやってたら、私が拾って連れて帰るわw と。映画はほぼ原作に忠実に描かれているのかな?珍しく原作を先に読んでいたのに、細かいところまでハッキリ憶えていないので断言できない。

 映画のストーリーはベタな展開すぎてしらける人もいるかもしれない、というくらいにベタ。みんないい人で、田村家三兄弟はほんとに幸運にも優しい人たちのおかげで生き延びられたんだなぁと、よかったなぁと、そこは素直に思えた。あんなの作り話だ、ホームレスを1カ月もやってたなんて真っ赤な嘘だ、などという中傷も原作に対してささやかれているようだけれども、別に作り話でもかまわないではないか。実際、あんなに人情味あふれる環境が日本全国いたるところにあるかどうかは誰しも疑問に感じるところだろう。あれは大阪だから成り立つ物語だと思えばいい。是枝裕和監督の「誰も知らない」とは対照的。

 原作にもあった段ボールを食べるシーンなど、小池くんはよくがんばっていた。植え込みの陰で野糞とか、雨でシャワーとか、彼のイメージとかけ離れている場面でも、懸命に演っていた。いかんせん、小池くんの顔とか存在が美しすぎるために、せっかくの熱演もそれらしく見えないのが辛い。何日も食べていない人間が、もらった弁当を貪るさまなどは、「よしよし、よくがんばって演技してるね。えらいぞ。」としか見えないのだ。これはもう、どうしようもないことと思う。彼を主演に決めた時点で、それは予測されてしまっていた。

 入浴シーンがかなり長いのは制作側のファンサービスだろう。「妖怪大戦争」で当時人気絶頂だった神木隆之介くんが着替えシーンを長く撮られていたようなもの。真夏に何週間も入浴していなかったはずの小池くんが、妙に綺麗なので、また別の意味で面白い。洗い終わって身体を流したお湯が、あきらかに絵具で着色されているという見え見えの演出w そこで実際に何週間も入浴していない小池くんが、1発勝負の長回し、垢で浴槽のお湯が汚れて・・・・とやっていたら、まだリアルに思えたか?このあたりはアイドルの体当たり演技の限界かもしれない。

 それにしてもこの作品は脇役のキャストが豪華。主役の父にイッセー尾形、兄にキングコングの西野、姉は池脇千鶴だ。窮状を救ってくれる友達の父・川井に宇崎竜童、その妻が田中裕子、西村のおばちゃんにはいしだあゆみ、とにかく演技達者がそろっている。主演が小池くんだと下手すれば学芸会になりかねない。脇役陣がしっかりしていたおかげで、一定のレベルは保てたと思う。観客を泣かせようとする演出が目につきすぎるのは難点だが。

 個人的に好きなのは牛丼屋での兄とヒロシの会話。「俺かてしんどいわ!」と兄が弟を突き飛ばす。そして「一人ではできん。おってくれな。」と家出していた弟を諭す、あれは本当に実感がこもっていて、なかなかの名シーンだった。貧乏でろくに食べられないことより、家族がいなくて一人っきりの方が辛い。どん底を見た人間は強いけれど、それ以上に強いのは「守るものをもつ人間」「大事な人を守ろうとする人間」だ。田村の兄にとっては、妹や弟がなにより重要な支えだったはず。重荷などではなく、大事な家族だから、守りたい人たちだから、いっしょにいてくれなければ、強く生き抜こうとする意欲もなくなってしまう。

 西村のおばちゃんの急死によって、病気で亡くなった母にはもう会えないと理解したヒロシが、生きていく意味を見失い、無気力になるのもよくわかる。彼には優しかった母にいつかまた会えるという気持ちが支えだったのだ。簡単に言うけれども「強く生きる」ということは難しい。母の笑顔が大好きで、よくふざけて笑わせていたヒロシは、お笑い芸人の道を選んだ。動機やきっかけは何でもいいのだ。自分が「これならやれる」「これで食っていきたい」と思える道を選べれば。

 図らずもベストセラー作家になってしまった田村裕は、これから芸人としてやっていけるのだろうか?本の印税だけでなく、映画やドラマになった作品からも収入が入る。そのことで、彼の芸が磨かれることなく終わってしまう恐れもある。そういえば、最近田村裕の顔をテレビで見ていない。

 この映画は、小池徹平ファンなら楽しめると思う。原作本のファンはどうだろう?微妙。





Canon EOS 40D + TAMRON B003


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8 コメント

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Unknown (ぱふぱふ)
2009-09-10 09:42:22
この映画は見ましたが・・
実際はもっと過酷な場面とそこまでしなくても
過ごせるなって言う場面がありましたね・・
実際2ヶ月オートバイ西日本の旅をして
野宿も何度もしましたが・似たような経験です
ただ食べ物は・・段ボールって言うのはどうしても
一度や二度あったかもしれませんが・・
あれはそう言う気分だったとしか思えませんね
それ以外に腹の足しになるものは幾らでも
戦時中ですら・・そんな人はいなかったと
一緒に見た人がいいました・・から。

でもまぁあ衝撃的ではありましたね
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Unknown (「せ」)
2009-09-10 10:11:58
これ、めちゃめちゃ
ストーリー、田村氏がしゃべりまくっちゃってますやね
何度もバラエティーで再現ドラマ、やってるし d(^^;)
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Unknown (月子)
2009-09-10 13:13:06
ねこ♪さんはいろんな映画を見て
そして原作本まで読まれてるのですね。
私はどうも洋画に偏ってまして、あまり邦画を見る機会がないです^^;
このホームレス中学生もテレビの紹介を見たのみなので感想が書けませんが^^;
ねこ♪さんの言われるように小池君をキャスティングはどうかと思いました。あまりにも違いすぎるでしょうね。
ねこ♪さんの記事でよーくわかりました。
ありがとうございました^^
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こんにちは~ (tetsu)
2009-09-10 14:21:53
これは観てないし、
原作も読んでいないので何とも言えませんが
確かに、小池クンはミスキャストだろ~って思ってました。
たぶん彼も戸惑ったと思いますが
許されるギリギリのところまで頑張ったのだろうな~って想像しました。

現実の話しになりますが
冬の寒さ厳しい北海道にもホームレスの方が結構居まして
これから厳しい季節を迎えるのだな~って、ふと思いました。
確か、基本的に冬の夜は寝ない(寝る場所が無い)で活動し
昼間は寒さを凌げる場所で休む・・・と話しに聞いたことがあります。
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くろねこ (panda)
2009-09-10 17:16:05
この仔の鼻くそ・・とってやりたい・・(藁。

この仔も石手寺のヒトですか?。
銀さんが撮ってた独眼竜の仔とはまた別ネコかな?
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Unknown (あた子)
2009-09-10 20:26:09
この猫がなんだか田村に似ているように思えてきました(^^)
映画ービミョーですねえ。ねこ♪さんの筆に迷いが(笑) 見てませんがテレビでエピソードは繰り返し見ました。それを思うとやっぱり小池君がミスキャストではないでしょうか。でもまあ、良い人ばかりで良かったんですよね。
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Unknown ()
2009-09-10 22:13:14
ボクは、黒猫が好きでして、結構
いやがる人多いですけど、性格優しくて
穏やかですよ。
こんなに近くからねらえるなんて
幸せですね。
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Unknown (ねこ♪)
2009-09-11 06:56:02
ぱふぱふさん
たぶん、誇張して表現したところもあると思うんですよ。
でも、そうやって生き抜いたことをお笑いのネタにしてしまったのが「麒麟」田村の強さですよね。
段ボールも食べてみた、というのは単に象徴かな、と思ってます。

「せ」さん
ストーリーは皆さんどこかで耳になさってると思います。
どこを面白いと感じるかは観ている人の価値観によりますね。

月子さん
いやーーー私は今ほとんど本は読まないですよw
昔は本もよく読んでいましたけど。
この作品に関しては原作の方が楽しめるんじゃないかと思いました。
小池くんのキャラがどうもホームレス生活とは合ってない気がするんですねぇ。

tetsuさん
おはようございます。
小池くん頑張ってました。
そこは好ましくうつりました。
北海道で冬を越す、しかも家がなくて、これは想像を絶する厳しさですよね。
夜うっかり眠ってしまったらあえなく凍死なんでしょうねぇ・・・・。
「ホームレス中学生」は真夏の大阪なので、まだしもまし、ですか。

pandaさん
このコは独眼竜のお姉ちゃんですね。
生まれたのは同時なんでしょうけど、独眼竜は病気で成長が阻害されたので、このコの方が一回り大きいです。

あた子さん
似てます?w
映画としてはいわゆる「人情物」系ですね。
良い話ですよ。
主演をもっと似つかわしい役者にした方がよかったとは思います。

ぺさん
黒猫はあちこちにいますね。
このコは私がしゃがんだら近くに寄ってきて座ってくれました。
危害を加える人ではない、って勘でわかるんでしょう。
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