スロバキア、タトラ山脈の麓より

スロバキア人の夫と2人の娘と私の生活
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本の虫は伝染病

2021-11-20 | スロバキア2021
2年前に帰省した際に実家の本棚から持ち帰った数冊の小説を読む機会も見つけられず、ずっとこちらの本棚にしまっていたのを数週間前、ようやく手に取り読みました。読もうと思ったきっかけは、「時間がない」とずっと言い訳していたものの、数年前の自分のブログをふと読み返し、自分の文章力、日本語の語彙力が当時に比べてあまりにお粗末になってしまったと焦りを感じたからです。そもそもズバ抜けた文章力があったわけでもありませんが、それにしても今の自分の文章はあまりに酷いと。
日本を離れて12年、考えてみたらそれも仕方のないことかもしれません。

スロバキアに来てからしばらくの間、日本語で話す相手は全くおらずたまに日本人に会おうものなら、ドギマギしながらもつれる頭と舌をフル回転させしどろもどろに話していました。それから子供が生まれ、赤ちゃんに向かってずっと日本語で話しかけるものの、反応こそあっても、それはまだ私からの一方的な会話です。その子供が言葉を発せるようになり、会話ができるようになったときどれだけ嬉しかったか。

今では毎日子供たちに日本語で話しているので(残念ながら返答の8割以上はスロバキア語ですが)日本語を話す上で舌がもつれることはなくなりましたが、それでも話し相手が子供なのでおのずと使用する語彙も表現も限られたものになってしまいます。その結果がこれ。ブログに書きたいことが頭の中で色鮮やかに、生き生きと、光を放ち、音を発し、湧きあがり、波のように押し寄せているのに、いざ言葉にしようとするとそれは渦巻き、ぼやけ、それを表現する言葉を見つけられず、結局要点だけを箇条書きしてサラっと事象を記録するかのようになってしまうのです。やっぱりこのままではいけない、そう思って本を手に取りました。

小説をひとつ読んだだけで劇的に私の表現力がアップするわけはもちろんなく、そしてもうこれ以上読む本も手元にないのでしばらくはまた本からも遠ざかってしまいそうですが、二人の娘たちが本の虫に伝染するという思わぬ副産物がありました。本の世界にのめり込み、家族みんなでソファーに座りテレビを見ていても、ソファーの上から私の目線はテレビではなく本に注がれ、料理をしていても台所の床に座り込んで読みふけり、子供たちが歯磨きをする間も洗面所で本を片手に片目は本に、片目は子供たちに・・・、寝ても覚めても本を手にしている私の姿を見たら当然のことかもしれませんがここ2週間ほど、まずは学校の宿題の読書以外に自主的に本を読むこともなかった7歳の娘が姉の本棚から本を引っ張り出しすごい勢いで本を読み漁り始めました。そしてハリーポッターとその後数冊の児童書を読んだ後しばらく本から遠ざかっていた上の子が、遊び相手も話し相手もなくなり、私が同僚から借りてきた厚さ4センチほどの本を(読んでくれたらなぁとわざと目につくところに置いていたのですが)半分イヤイヤ手にとると、一ページ目からクスクス笑いながら読み始めたかと思うとそれ以来本を手から離していません。

本は心を豊かにする、そしてその文章や言葉から子供自身の表現力もつけてくれるもの。子どもたちの日本語力は本当に限られているので日本語で書かれた本を子供たちに読ませることはできませんが、スロバキア語の本をたくさん読んで世界を広げ、そして表現する力を養って欲しいと思っています。読書を好きになるためには良い本に出合うことが必須です。そこで困るのが、スロバキアの児童書を私は知らないこと、そして色々なことに興味を持つ夫もどうやら読書にはあまり興味がなかったようでこの件に関しては全く当てにならないということです。私が幼いころに読んだ本のスロバキア語訳を探したり、本屋さんで聞き、同僚に聞き、これからもおもしろい本を頑張って探していこうと思います。

先日の霧がかった朝、庭の薔薇に霜がついていました。

まるで美女と野獣に出てくる薔薇のようだと思いませんか。

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