スロバキア、タトラ山脈の麓より

スロバキア人の夫と2人の娘と私の生活
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おばあさんのケーキ型

2021-10-31 | 私の家族/moja rodina
夏時間から冬時間に変わる今週末は3連休です。11月1日は諸聖人の日(祭日)、翌日は死者の日(こちらは平日)でこの時期は皆お墓参りをします。墓石にロウソクの火を灯すので日没後も火が絶えないように?決まって夕方墓地に向かいます。父方、母方のおじいさん、おばあさん、そしておばあさんの再婚した旦那さん、おじいさんの兄弟・・と墓地内のお墓をみんなで順に周り、ロウソクを灯します。土葬が一般的なこちらのお墓は棺のサイズですから大きいです。夫婦ならば夫婦並んで入るので更に棺のサイズ×2、大きいからそう簡単にお墓の中央や奥に手が届かないので仕方のないことですが、お墓の上にヒョイと上がり、サッサと落ち葉を片づけ、花を手向け、ロウソクに火を灯します。もう10年以上毎年通っていますが、それでも「えっ、そこに乗っちゃうの?」と今でも少しギョッとしてしまいます。

先日、義母から今は亡きおばあさんの使っていたケーキ型をもらいました。義父のお母さんで私は会ったことがありませんが、家族の話を聞きながら私の祖父と重ねてみることの多いおばあさんです。

おばあさんは幼いころにスペイン風邪で両親を亡くし、孤児院に入れられ両親のことは全く覚えていません。その後何年も経ってから年上の兄弟が偶然名前を聞いて施設にいることを知り、迎えに来てくれたのだとか。それでも兄弟たちも貧しかったので10歳ごろでしょうか、まだ少女だったけれど住み込みの家政婦として働きに出、苦労して育ったのだそうです。成人した彼女はとても聡明な女性だったそうで、スロバキア語、ハンガリー語の他、ドイツ人も驚くほどきれいなドイツ語を話し、地元企業の社長であるドイツ人一家で家庭教師を務めていたのだとか。一冊のノートに自分の生涯を写真や挿絵と共に記録し、そのノートは夫が形見としてもらっています。

明治生まれの私の祖父もまた早くに母親を亡くし、継母に育てられ、ほぼ独学で苦労して様々なことを学んだ人でした。祖父と私と妹は200通を超える文通を交わし、その手紙の中に色々なことを書き残してくれた他、夫のおばあさん同様、自分の家系図を遡り、家族の記録も残してくれています。

私の祖父とこの夫のおばあさんが会って話すことができていたら、どんなに興味深い会話になったのだろうと時々思います。

もう70年は使っているというこのケーキ型、義母にはもう小さくなってしまったけれどChihirkoにちょうど良いだろうからと譲ってくれました。私があと30年使ったら100年ものになりますね。大切に使いたいです。

毎週末、昼食と手作りのケーキを家族で囲んで過ごす習慣のあるスロバキア、焼くケーキの量も日本とはケタ違いです。私は日本のレシピならば2~3倍の分量に計算しなおして焼いていますが、義母は私の更に倍の分量で焼きます。このケーキ型だと日本のレシピの3~4倍くらいになるでしょうか。でも子供たちが大きくなってたくさん食べるようになったのでこのおばあさんの型がもうちょうど良さそうです。この型で何を焼こうかな。おばあさんがこの型でよく焼いていたケーキはリンゴのケーキだそうです。ちょうど今の季節のケーキですね。


3 Comments

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Unknown (Hanna)
2021-11-09 23:12:15
こんにちは、初めまして。
初めてコメントを書かせていただきます。
私には、スロバキアに近いポーランドに住む、ポーランド人の友達がいます。そのこともあってか、私はスロバキアにも興味があるので、いつも「タトラ山脈の麓より」を読ませていただいています。

本題なのですが…娘さんたちとは、今でも日本語で話していますか?

以前ブログの記事で、この近くには日本語を勉強する学校のような所もないので、娘たちの日本語に関しては私との会話だけです、のようなことを書かれていたので…そのような状況の子供たちの、日本語の発達状況(?)について気になりました。
また、私は語学教育を勉強していたこともあり、そのようなことについて興味があります。

もし、娘さんたちと日本語で話されているなら、娘さんたちがどれくらい日本語を使えるかなど、差し支えない程度で大丈夫ですので、教えていただきたいです。
よろしくお願いいたします。

そして、今回の記事を読んで思ったのですが、ケーキ型が70年も使われてきたなんて、すごいですね。
代々大切に使われてきたケーキ型で作るケーキは、さぞかし美味しいと思います。
長文失礼しました。
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Hannaさん (chihirko)
2021-11-12 19:49:01
ポーランドにお友達がいらっしゃるんですね。
それで私のブログを読んでくださっているとのこと、ありがとうございます。

語学教育に携わっていらっしゃるんですね。
はい、今でも娘たちには日本語で話しています。が、娘たちから返ってくる言葉は上の子は6割ほどがスロバキア語、下の子はほぼスロバキア語です。

1.二人とも読み書きは教えていないのでできません。
2.語彙力も乏しく、上の子でも日本の小1より少ないと思います。
3.会話力は、コミュニケーションはとれますが、語彙が少ないので子供たちの話す文にはスロバキア語の単語が(特に学校でのことを話す際)混じります。
私が娘たちに話す際も、学校生活や授業に関することは同じ単語をあえて日本語とスロバキア語の両方を言っています。

子供たちが幼稚園へ行くようになってから仕事に復帰し、1日の大半はスロバキア語で過ごしていてとにかく、私と過ごす時間が少ないので日本語を維持するのは難しいです。でも読み書きに関しても、書けなくてもせめて読めるようにしてあげたいなと思っています。
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Unknown (Hanna)
2021-11-16 01:27:02
Chihirkoさん、
娘さんたちの日本語について、お忙しい中丁寧に教えていただき、ありがとうございました。参考になりました。

Chihirkoさんは今でも、娘さんたちと日本語で話されているんですね。
娘さんたちが話すのはスロバキア語が多いとは言え、2人とも日本語でコミュニケーションは取れるという点で、凄いと思いました。(特に上の娘さんは、4割ほどは日本語で返してくれるんですね)
ですが、Chihirkoさんが娘さんたちと接する時間があまりない中、娘さんたちの日本語を維持するのは難しいですよね。
日本語とスロバキア語でのコミュニケーションは大変だと思いますが、それを続けているChihirkoさんを尊敬します。

そして、これからもブログを楽しみにしています。
(私は1度だけ、ブラチスラバに行ったことがあるのですが)また自由に渡航できるようになり、友達に会いにポーランドに行った際は、またぜひスロバキアにも行きたいです。
それでは、お身体に気を付けてお過ごしください。
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