真似屋南面堂はね~述而不作

まねやなんめんどう。創業(屋号命名)1993年頃。開店2008年。長年のサラリーマン生活に区切り。述べて作らず

戻ってきてしまった特攻隊員は

2008-10-31 | 読書-2008
以前、NHK「ETV特集」
許されなかった帰還 ~福岡 陸軍振武寮~(第156回:2006年10月21日)
を見てびっくりしたのだが、番組にも登場した林えいだい氏が著した「振武寮」に関する本が出ていた。

陸軍特攻・振武寮―生還者の収容施設
林 えいだい【著】
(大阪)東方出版(2007/03/20 出版)

wiki振武寮

「倉澤参謀」について、wiki記載の通りなのだが、2006年の番組ではたしかテープレコーダーが回る(わけではなくて‘レコーダーの中でテープが回る’が正確か)場面があり、林氏のインタビューに答えた最晩年の倉澤参謀が、戻ってきた特攻隊員らを「あいつらは命が惜しいんだ!」、「一度戻った者は再出撃してもまた戻ってくるから」とこき下ろすのに驚いた記憶がある。
なんと、復讐を恐れた倉澤翁は、80歳で地元警察に返上するまで護身用にピストルと軍刀を枕頭から離さなかったという。
自分がどれだけ部下から恨まれていたか、十二分に認識していた元参謀。
戦後何十年も経ってもなお、戻ってきた特攻隊員を口を極めて罵る精神!

TV番組では倉澤氏の軍服姿の(同じ)写真が何度か登場した(と記憶する)が、本にはほかの写真も(ご本人から提供されたものだろう)。さらに、林氏のインタビューに応じた際の撮影と思われる「その辺のおじいさん」的写真も。
その倉澤氏は、林氏にインタビューを受けた10日後に死去された由。
林氏は、「勇気を持って証言してくれた」と評価する。

ポール・ティベッツ准将(原爆投下部隊の隊長で広島への投下では機長も)と倉澤少佐(パイロット出身)を無理に比較してみる:
共通点:
「命令だから一生懸命やったわけだが、今考えると申し訳なかった気もしなくもない・・・」とでもひとこと言ってくれればねえ、と皆が思うのに、生涯それは言わずに彼岸へ旅立ったヒコーキ乗り
相違点:
かたや歴史に残る人物で、多くのアメリカ人には命の恩人だと感謝される。欧州戦線でB17の名機長、上官の受けも抜群。B29の開発が進むとともに極秘の新任務に抜擢されて…。
かたや陸大に進むも挫折?日陰の極秘任務で鬱屈した感情を若いパイロットらにぶつける。帰還してきた特攻隊員をいびり倒して、二度と戻ってこないよう再出撃させることに尽力?晩年まで報復を恐れて脅えて暮らす。ジャーナリストの取材に応じて最後の最後に記録を残す…。

証言の10日後に死去というのが、何か関係あるような気がする。
ずっと心に引っかかっていたのを吐き出して、命の蝋燭がふうっと消えたのだろうか。
インタビューに際しては突っ張って見せたものの、心の底ではどうだったのだろ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« エッセイストとしての土門拳 ... | トップ | あなたの名前はジミーです/... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

読書-2008」カテゴリの最新記事