真似屋南面堂はね~述而不作

まねやなんめんどう。創業(屋号命名)1993年頃。開店2008年。長年のサラリーマン生活に区切り。述べて作らず

あなたの名前はジミーです/わたしのしたことで成功したものがあるとすれば

2008-11-01 | 読書-2008
『皇太子の窓』エリザベス・グレイ・ヴァイニング
(Windows for the Crown Prince)
1953/1989(新装版)
(原著1952)
~これも代替わりを機に新装版が出た、ということね。

『ジミーと呼ばれた日-若き日の明仁天皇-』工藤美代子2002年
工藤女史は占領期を対象にした作品がほかにもあり、得意分野だよね。

表紙は校歌を歌う学習院中等部の生徒たち。
うちの子供らに「さて、ここで問題です。この真ん中の人は誰でしょう?」とクイズを出してみた。
平成生まれ(高校生)はギブアップ、昭和生まれ(大学生)は正解できたよ。

じつは「ジミー・・・」は以前読んだ事があったのだが、今般、ヴァイニング夫人の回想録とともに再読してみて、その価値が分かった。
さすが工藤女史(同女史については、5/4、5/5エントリ参照)。
当時の社会環境などが要領よく整理されているので、21世紀の今日とてもありがたい。

「わたしのしたことで成功したものがあるとすれば、ヴァイニング夫人にこちらに来るよう求めたことであった」という昭和天皇のお言葉は、ヴァイニング夫人の 「天皇とわたし」の帯にも記されたという決めの文句。

「皇太子の窓」の記述によると、夫人が皇后陛下に拝謁の機会があった日に間接的に聞いた話らしい。
その2~3日前の午餐の際に昭和天皇が上記の如く語られたのを女官が聞き、
夫人に同行した秘書の高橋たねが宮中の控えの間でお茶をいただいた際に当該女官からその話を聞き、
帰路の自動車内で「たねさん」が夫人に伝えた、
という伝言ゲームのようだ。

まあ本当にそのようなご発言はあったと考えてよいのだろう。
昭和天皇は、皇太子の教育に関して希望がずっと無視されてきたらしい。せめて学齢期になるまで手元に…、などという希望がことごとく退けられたという。
もしかして、子女の教育にかぎらず何につけても、ご自身の思いどおりにはならないという、とてもかわいそうなお立場だったのかも!
(戦争やめるときは頑張りましたね)

じつは米国女性(ヴァイニング夫人)を招く事になる以前から、皇太子殿下には英国人男性が英語の個人教授を務めていたという。ただ、その先生は永年日本および日本領に住んで英語を教えてきて「半分日本人になったような」人物だったため、今度は全く別の属性の人物にしたいと考えられたようだ。
昭和天皇ご自身がリストから選ばれたわけではないものの、「米国人女性の英語個人教授を」というアイデア自体は陛下ご自身の発案だったようだ。

「これまでいっさい希望が通らなかったので、こんどは無視されないように」と作戦を練られ、米国から来た教育使節団と会われた際に先方に直接希望を伝えられた。それで実現に向けて話が進んだ、というわけね。

上記のお言葉は、「夫人の招聘は、初めて自分の希望を主張して実現した、とても印象深い快挙なのだ!」という意味だったのかもね。
先生を褒めていると同時に、ご自身の「やったぜ!」というお気持ちがこめられた一言だと見たぞ。

天皇皇后両陛下ともに夫人を大いに気に入られた由。
マッカーサー元帥も、ヴァイニング夫人の「生徒」の様子を大いに気にかけていて、夫人は元帥に何度も報告に行ったし、あるとき「生徒」をGHQビルに連れて行って元帥と面会させたという(父君ご了解のうえで~ただし非公表条件)。
元帥、完璧なマナーも含めて「生徒」に深く感銘・・・。

延長された任期を終えて帰国するヴァイニング夫人の後任に自国人を送り込もうとする英国、そうはさせないぞと米国・・・、などという場面も。

わたしがわたしが、と露骨に誇るのではないものの、上品にさりげなくアピールするのはお上手だったらしいヴァイニング先生。
~と、いうようなするどい観察も披露する工藤女史。

夫人は、個人教授のほかに、内親王様たちへのレッスン、指名されたご学友らも含めたグループレッスン、学習院の皇太子のクラスを対象とした授業など、何通りかのレッスンを持ったようだ。
「ジミー」云々というのはクラス対象の授業で夫人が採用したアイデアね。全員に英語名を付与。

「皇太子の窓」

文庫化か!

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 戻ってきてしまった特攻隊員は | トップ | 老学生は朗学生~出ると思っ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

読書-2008」カテゴリの最新記事