わが家で社長と呼んでいるお客さまがいます。
社長は宮城県出身。おじさんです。おじいちゃんかな。
出稼ぎでずっとこっちで働いてます。
社長もいつもダンナのことを社長と呼んでいます。
毎年暮れになると、新巻鮭を買ってくださり、
宅急便で宮城に鮭を送っていました。
字が書けないので、送り先を書いてあげました。
「おう社長、いちばんいい鮭を送ってくれや。金はいくらでもある。」
そう言っていましたが、
数年前、そのたったひとりの身内だったお兄さんが亡くなり、
鮭を送ることもなくなりました。
社長の身なりは、ボロボロの泥だらけです。
ベレー帽をいつもかぶっています。
車にも乗れず、自転車で買い物に来てくださいます。
いつもお酒のニオイがしています。
もう前になりますが、
橋のたもとでお酒を飲んで寝ていて、おまわりさんに保護されました。
犬の散歩で通りかかったダンナが、おまわりさんに家を教えてあげました。
社長は、「ここんちの鮭はうめえな~。」と言ってくれます。
お酒を飲んでいるときは、ぺらぺらとよく喋りますが、
仕事帰りで飲んでいないときは、まったく喋れません。
ダンナのことは「社長」と呼ぶのに、私のことは「おめえ」です。
ニコニコしながら、
「おい、おめえ。金ならいくらでもある。今日は鮭をうんと買ってやっからな。」
と言います。
今日も社長がみえました。
今日はいつもよりお酒を飲んでいるようでした。
1キロのさつまいもを6袋も買いました。
「おい、おめえ。このさつまいもを俺が焼くとな、うんめ~ぞ。
外で石を焼いて1日かけて焼くんだぞ。明日焼いて持ってきてやっからな。」
たしか前もそんなことを言っておりました。
私が黙っていると、
「な~に笑ってんだ、おめえは。ほんとだぞ。おっめえは、ばっかだな~。」
と、ニコニコしながら社長。
今日は酔っているせいか、この「おっめえは、ばっかだな~。」を連発。
いつもは平気なのですが、最近自分はばかだな~と思うことがあって、
社長にも言われて、なんだかカチンときて、
「焼き芋はうちでも食べられますからいりません。」
と、強い口調で言いました。
社長は、
「ああそうかい。じゃあもう買いにこねえからな。」
と、店の戸口へ歩き出しました。そして振り向き、
「怒るなや・・・。わりいな~。」
と、私を見て言いました。
「社長っ、じゃあまた来っからな。」
ダンナに声をかけ、店を出ていきました。
私は腹が立ち、(もう来なくていいです。)と思いました。でも・・・、
次のお客さまがみえ、レジを打っていると、
なんだか悲しくなり、金額を告げるのに声が詰まってしまって、
しばらく、間があいてしまいました。
社長は宮城県出身。おじさんです。おじいちゃんかな。
出稼ぎでずっとこっちで働いてます。
社長もいつもダンナのことを社長と呼んでいます。
毎年暮れになると、新巻鮭を買ってくださり、
宅急便で宮城に鮭を送っていました。
字が書けないので、送り先を書いてあげました。
「おう社長、いちばんいい鮭を送ってくれや。金はいくらでもある。」
そう言っていましたが、
数年前、そのたったひとりの身内だったお兄さんが亡くなり、
鮭を送ることもなくなりました。
社長の身なりは、ボロボロの泥だらけです。
ベレー帽をいつもかぶっています。
車にも乗れず、自転車で買い物に来てくださいます。
いつもお酒のニオイがしています。
もう前になりますが、
橋のたもとでお酒を飲んで寝ていて、おまわりさんに保護されました。
犬の散歩で通りかかったダンナが、おまわりさんに家を教えてあげました。
社長は、「ここんちの鮭はうめえな~。」と言ってくれます。
お酒を飲んでいるときは、ぺらぺらとよく喋りますが、
仕事帰りで飲んでいないときは、まったく喋れません。
ダンナのことは「社長」と呼ぶのに、私のことは「おめえ」です。
ニコニコしながら、
「おい、おめえ。金ならいくらでもある。今日は鮭をうんと買ってやっからな。」
と言います。
今日も社長がみえました。
今日はいつもよりお酒を飲んでいるようでした。
1キロのさつまいもを6袋も買いました。
「おい、おめえ。このさつまいもを俺が焼くとな、うんめ~ぞ。
外で石を焼いて1日かけて焼くんだぞ。明日焼いて持ってきてやっからな。」
たしか前もそんなことを言っておりました。
私が黙っていると、
「な~に笑ってんだ、おめえは。ほんとだぞ。おっめえは、ばっかだな~。」
と、ニコニコしながら社長。
今日は酔っているせいか、この「おっめえは、ばっかだな~。」を連発。
いつもは平気なのですが、最近自分はばかだな~と思うことがあって、
社長にも言われて、なんだかカチンときて、
「焼き芋はうちでも食べられますからいりません。」
と、強い口調で言いました。
社長は、
「ああそうかい。じゃあもう買いにこねえからな。」
と、店の戸口へ歩き出しました。そして振り向き、
「怒るなや・・・。わりいな~。」
と、私を見て言いました。
「社長っ、じゃあまた来っからな。」
ダンナに声をかけ、店を出ていきました。
私は腹が立ち、(もう来なくていいです。)と思いました。でも・・・、
次のお客さまがみえ、レジを打っていると、
なんだか悲しくなり、金額を告げるのに声が詰まってしまって、
しばらく、間があいてしまいました。