今の鍼は、鍼術の原典の誤読から始まった。
「本来の鍼術」の原点である「鍼経・九鍼十二原第一」の冒頭に書かれた
「鍼」の刺し方」の重大な誤読が、
現在まで続く後代のすべての「鍼術」の姿だと思います。
「鍼の刺し方」は「正しく指して直刺し、鍼を左右することなかれ。」と
記してあります。
この読み方が問題なのです。まず、「直刺」です。
後代の学者たちはほとんど、これを「縦に真っ直ぐ刺す」と読んで
疑いませんでした。
勿論私も、「鍼灸学校」ではその刺し方しか教えられませんでした。
具体的には「管鍼法」という「盲学校系統の基準教育」と、
私の卒業した「古典派」を築いた先生たちが創立された学校では、
「撚鍼法」をも教えて頂き、卒業後一貫してこれを用いてきました。
しかしどちらにしても、
「縦に刺す」のは深浅の違いはあっても当然の事でした。
私の恩師・丸山昌朗先生は、私の学生時代の「古典勉強会」で、
「直刺」を縦に真っ直ぐ刺すと 読むのは間違いであると
教えて下さいました。
60年近く前の学生時代の当時は、
よくその意味の深さはわかりませんでした。
それでも頭の片隅には残っていました。
4年くらい前のある日の朝の「体験」は、
「古典」にある「鍼の刺し方」の重要性を知るきっかけとなったのです。
二階の寝室で、起きようとしたら左下肢が思うように動きません。
それで一気に起きてみました。
その時突然「左下肢」の激痛に襲われ立って歩けず、
2階から降りられそうもありませんでした。
それで、自分で撚鍼をしてみようと思い、
「第4腰椎」の左わきに鍼先を当てると、
表皮に触れたと同時に、「激痛」が消えてしまいました。
なんとなく足の運びは不自由でも、
「痛み」はほとんどなしに二階を降りられ、治療の仕事も無事できました。
仕事が終わってから、少し「歩行困難」を感じたので
近くの「整形外科クリニック」に行き診察を受けると、
X線検査で「第4腰椎のすべり症」と診断されました
それから数日後、
かかりつけの「内科」の先生のところへ定期診察を受けに行くと、
私の歩き方を見て、すぐに「大学病院」に行けと指示され、
病院に「緊急診察」の連絡をして下さいました。
「病院」に行くと、脳神経科と整形外科の二人の先生が、
諸検査をしてみて下さいました。 その結果、
脳も「腰椎」も全く異常なし。「左腓骨神経マヒ」と診断され、
「ビタミンB12」投与しか方法がないと言われました。
これが「私の新しい鍼法」へのスタートとなりました。
この歩みは、次号で書こうと思います。