セスタバジカ Cesta Basica

「基礎的なバスケット」という意味のポルトガル語。
ブラジルでは「日常生活を送るための必需品のセット」を指します。

知られざるドラマ

2009年03月27日 | 雑感
今日はJ君の高校受験の日。
J君が中学校を卒業できるなんて、
ましてや高校を受験するなんて、考えられなかった。

お母さんときょうだいの半分は帰国、お父さんは単身他県で仕事。
だから1歳年上の姉と2人でずっと暮らしてきた。
家賃が払えなくて家を出なきゃいけなくなったとき、
お父さんは自分のところにJ君を連れて行って働かせたかった。
でも引越しの日、校長先生が頭を下げた。
「たとえ全欠でも卒業証書は出すから卒業をさせてやってくれ」と。
それで学区外のおばさんの家に残り、私と時々母子登校?した。
でもそこも長く居られなくて姉と2人でアパートを借りることになり
1月に転校。入っていきなり黒髪に染め変えられる。
それでもズボンの形が違う、ピアスをしていると言う理由で
クラス紹介もしてもらえないまま、
姉の解雇・妊娠のため父親の元へ行くことになってしまった。
それが2月半ば。もう転校しないと言うので籍だけ残す。
20日夜「仕事がないから高校へ行く」とTELあり。
ええっ?今から?できるかな?聞いてみる。
あった!まだ間に合う高校が。
さらに、外国籍の子供たちの受け皿になっているという
さらに、チャリで通えるところにあるという!!!

2人とも中学2年生から働いていた。
姉は修学旅行に行きたくて。ちゃんと貯めたけど生活費に消えた。
J君は家族の帰国費用を作るため。
地下に潜ってする仕事は暗くて寒くてトイレもなくて2度と行きたくないと
言っていた。塗装の仕事はにおいがいやだし頭がぼーっとすると、体と服をペ
ンキだらけにして嘆いていた。

だから受験するなんて想像できなかった。
卒業式も奇跡だった。
J君は卒業式に出席するため前夜からおばさんの家に来ていたが、
遠慮して学校まで送ってと言えなかった。
8時50分私に「迎えに来て」と電話があったけど迎えにいって
学校に来るのではぜんぜん間に合わない。
「特別の日だからおばさんにお願いして!!」と言い放って校門で待つ、待
つ、待つ・・・けど来ない・・・
「先生、残念だけど・・・」と校門を閉められてしまった。
その直後に彼はやってきた、制服を忘れて。
そんな彼が卒業式に出席できたのは奇跡的でした。
帰国した生徒が役立てて、と残して行った制服が私の車にあったこと、
入場が始まっていたけど彼は最後のクラスだったこと。
保護者席に座って間もなく彼が入場してきたときは号泣してしまいました。

高校は仕事がないため競争率が高いらしいから合格は無理かもしれない。
けどこれからもチャンスはある。だって卒業証書があるのだから。

昨夜遅く「明日は何を持っていくの?」と電話あり。
滋賀県と同じとは限らない、確かめて知らせる。
最後に「先生、気をつけてね。」だって。
その言葉100倍私が君に言いたいよ!!
この家族とかかわってきた5年が
誰にも知られないドラマを満載したまま終わります。(ひ)

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2 コメント

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Unknown (よしもと)
2023-04-25 16:55:42
全欠でも卒業証書を渡すから籍を抜かないでくれと親に頭を下げた校長先生。

ズボンの形が違う、髪の色が違う、ピアスをしている、と言ってクラス紹介もしてもらえなかった転校先の学校。

もうすでにパパになった君、どんなことを心に残しているのだろう。
Unknown (よしもと)
2023-04-25 16:56:56
全欠でも卒業証書を渡すから籍を抜かないでくれと親に頭を下げた校長先生。

ズボンの形が違う、髪の色が違う、ピアスをしている、と言ってクラス紹介もしてもらえなかった転校先の学校。

もうすでにパパになった君、どんなことを心に残しているのだろう。

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