セスタバジカ Cesta Basica

「基礎的なバスケット」という意味のポルトガル語。
ブラジルでは「日常生活を送るための必需品のセット」を指します。

こんなん読めるか!

2015年07月07日 | 雑感
昨年のことですが、授業で使う英語の本を読んでいた時に "dough" という知らない単語が出てきたので、電子辞書で調べてみたら「練り粉」「パン生地」といった意味でした。問題はその後。ついでに読み方をチェックするのが常なのですが、たぶん "rough" や "tough" と同じく「ダフ」でいいだろうとの予想に反し、「ドウ」(dou)と判ってビックリ。そこで好奇心から "?ough" と入力し類推検索してみたところ、以下の8つの単語が上がってきました。

 bough、cough、dough、hough、lough、rough、sough、tough

これらの読み方はコメント欄に記すこととしますが、少なくとも5通りあると知り私は目が点になりました。デタラメにも程があるというものです。

このように単語の綴りだけでは発音が判らないため読み方は一つ一つ憶えるしかない。何という面倒くささでしょう! 逆に発音に対応する表記法も一通りには決まらない(どころか長い単語になると数多くの組み合わせが可能になる)ので、綴りそのものが試験やクイズの対象になるし、「カフィ」と聞いて(正解の "coffee" ではなく)"kaphy" というスペリングを思い浮かべるようなトンデモ事態すら生じうる。(まあこれはアメリカンジョークの世界ですけど。)それゆえに私はこの代物をずっーーと「欠陥言語」呼ばわりしてきたという次第です。

ところが最近買ったこの本で英語の綴りと発音の不一致について解説しているコラムを読み、ちょっとだけ納得できました。(なお、この本では単語記憶法や高速音読法に「なるほど」と唸らされ、句動詞の型およびアクセントの違いはとても勉強になりましたが、本書の主旨とは関係なくあちこちで披露されている著者の「思想」「持論」に首を傾げたくなるところも少なくなかったのでお薦めはしません。)なんでも昔は綴りどおりに発音していたとのこと。例えば "knight" なら元は「クニヒト」でしたが、徐々に「クニート」→「ニート」と簡略化され、何百年もかけて今の「ナイト」へと変化していったのだとか。けれども綴りの方は発音よりはるかに保守的にならざるを得ない(注)ので、両者の乖離が進んでいったということです。(注:冒頭の "k" を取ってしまったら夜の "night" と区別できなくなる。)

(余談ながら、その点ドイツ語は今も表記に忠実であり、語源の同じ "Knecht" (家来、召使) は「クネヒト」だし、同じく二重子音で始まり少々発音しにくいと思われる "Pflight" (義務) も手抜き発音によって「フライト」へ変えたりすることなく、律儀に「プフリヒト」と読みます。いかにも「厳格」「規律正しい」というイメージの強いドイツ人らしいと言えましょうか。)

この説明には膝を打ちました。言語は生き物ですからむしろそれが自然といえるでしょう。ただし、これで無罪放免という訳にはいきません。ポルトガル語の場合、これを公用語とする各国の合意のもとに統一新正書法協定が結ばれ、従来ポルトガルでは発音しないのに綴られてきた“c”や“p”、語頭の“h”を今後書かないように改められる(ブラジル式に統一する)ことになったそうですが、英語にしたところで綴りを改めようと思えばその機会はあったはず。すべては英米人の怠慢のなせる技ということでしょう。(暴言?)

・・・・などと昨年の話を長々と書いてきたのには理由があります。実は8月にこの「欠陥言語」をネイティブ・ランゲージとする人が多数を占める国へ出張する予定です。(出発まで1ヶ月ほどになったので公表する気になりました。)生涯で2度目になります。

実は初回も同じ場所と業務でした。滋賀県とは姉妹関係のミシガン州にあり、滋賀県立大学と交流協定を結んでいるレイクスペリオール州立大学(LSSU)で行われる夏期プログラム(短期研修)の記念すべき第1回の引率教員として現地に赴いたのが2000年。以来15年ぶりです。(滅多に旅行をしない私ゆえ、それが今のところ最初で最後の「英語圏滞在」となっています。「毎年ナミビアへ出張してるじゃない?」という疑問に対してはja.wikipediaを引きつつ、こう答えるとしましょう。「同国では英語が唯一の公用語として採用されてはいるものの、母語人口の比率は極めて低く、アフリカ系の人々は普段オシワンボ、ヘレロ、ダマラなどを使っているし、ヨーロッパ系の間でもオランダ語から派生したアフリカーンス、あるいはドイツ語の方が話者人口ははるかに多いんですよ」と。その詳細については日を改めて。)

ということで最近は月に数度更新するのがやっとこさの本ブログですが、来月は久々にその機会が増えそうです。(たかだか10日間ほどの滞在なので、あまり期待されても困りますが。)

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1 コメント

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これが正解 (だいひょう)
2015-07-07 07:12:41
読みは以下の通り。もし「全部知ってたよ」という人がいたら「英語の達人」として心底から敬服します。

 bough(バウ)
 cough(コフ、コーフ、カフ)
 dough(ドウ)
 hough(ハーク、ホク)
 lough(ラーク)
 rough(ラフ)
 sough(サウ、サフ)
 tough(タフ)
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