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ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』を読んで

2019年12月30日 | 折々の読書

書店でのジャケ買いです(笑)。いまどきの短編てどうなのかなあと思い読み始めると、これがなかなか。翻訳嫌いの私でもすっと入っていける日本語は素晴らしい。装丁も軽くて文学作品らしくない文学書的造り?で好感が持てます。

そして、中身はすごいです。冒頭の想いに反して引き込まれました。文学を殆ど読まない私がはまってしまいました。

なぜか。それはベルリンの直截的な文章が一気に陰影のある世界へ引きずり込むからだと思います。そこはアリゾナの鉱山だったり、断酒会の施設だったり、修道院の学校だったり、汚れたバスの車内だったり、裏町のコインランドリーだったりします。表通りではなくちょっと裏手のストリートや風景の中に入り込む。主人公の目はその世界そのもののように物語、風景を映します。小説ってそういうものでしょう? いえ、その引き込まれ方が尋常ではないのです。

何気ない日常の世界が、普通とは少しずれています。ルシア・ベルリンの体験から書かれていると思われる短編はさらさらと流れてゆく日常ながら、深い洞察が込められているように思えます。
ひとつひとつの作品が胸に刺さります。とても一気には読めませんでした。夏に買って、とうとう晦日になってしまいました。2019年の読書の最高の本になりました。

ルシア・ベルリン著、岸本佐知子訳『掃除婦のための手引き書;ルシア・ベルリン作品集』講談社、2019年7月刊.


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