Casa de Celia

iHasta la victoria siempre!

「アメリカ メディア支配」への挑戦

2006-10-13 | Latinos(ら米)

地球特派員2006

「“アメリカ メディア支配”への挑戦-南米・新興テレビ局を追う」

放送日 2006年10月8日(日)22:10~23:00
 《BS-1》
 ● 特派員:桃井和馬
  -20年にわたってラテンアメリカを見続けてきたフォトジャーナリスト。
 ● 司 会:中山俊宏氏(津田塾大学国際関係学科・助教授)
  -専門はアメリカの政治と外交。「普段からアメリカの目線でベネズエラ、チャベス大統領を見ている」と自己紹介。

 
 オープニングは9月20日の国連総会、全世界の度肝を抜いたチャベス大統領の演説。
 「昨日、悪魔がここに来ました。まだ異臭が残っています」
 一極支配を進めるアメリカとの対決支配を進めているベネズエラのチャベス大統領。左派政権を樹立し、アメリカなどが独占してきた石油などの富を貧困層に分配する政策を進めている。
 変革のうねりはラテンアメリカ全体に広がっている。

 これまでCNNなどの影響が強かったこの地域に、昨年、テレビ局、テレスールが作られた。
 テレスールはベネズエラ、アルゼンチン、キューバ、ウルグアイ、ボリビアの五カ国が資本を出し合い、ポルトガル語圏であるブラジルも素材や技術面で協力して構成されており、今、アメリカのメディア支配に挑戦している。

 「南からのニュース、南のニュースというタイトルのつけ方が、南(sur)、南、南っていうのが、今のベネズエラ、ラテンアメリカ、世界を考えるヒントになると思う。南というのはもともとラテンアメリカの南ともう一つ、南北問題の南。つまり貧しい者たちのテレビだ、という思いを、このテレビ局の名前にこめたのだと思います」(桃井氏:談)

 スタジオでの談話は、ポイントとなる視点について、次の問いかけで始まった。
 「チャベスは貧者の革命を推進する指導者なのか、強権的な独裁者なのか」
 この答えは一通りではないだろう。
 アメリカから見たチャベスと、(極端だが)キューバから見たチャベスはまったく正反対だ。今、アメリカが最も「死んでほしい男」であり、キューバの人々は彼を「アミーゴ(お友だち)」と呼ぶ。

  テレスールの社長、アンドレス・イサーラ氏(37才)はCNNでの勤務経験を持ち、チャベス政権では通信情報大臣を勤めた経験を持つという。
 彼の顔・・・あれ?見覚えがある
 当番組では紹介されなかったが、彼は、2002年の反チャベス派によるクーデターを扱ったドキュメンタリー「クーデターの裏側」で、インタビューを受けている。
 当時、CNNのカメラマンだった彼は、この中で、CNNの「デマ」報道を告発している。「クビ」で脅され、デマの共犯者となることを強いられた彼は「自分からCNNをやめた」と、語っていた。
 民間放送のデマによってクーデターは勢いづき、チャベスは殺される寸前まで追いつめられた。
 また、クーデターが、怒りをもって街頭に出た民衆らの力で三日と持たずに失敗に終わったとき、民衆に守られてチャベス政権の大臣たちが官邸に復帰してからも、クーデターの首謀者(2日間だけ、クーデター政権の大統領)カルモナは「何ごとも起きていない。私は今、官邸から電話で話している」と、CNNの電話取材で語った。
 独占メディアが放つデマによって、なかったことがあったことになり、あったこともなかったことにされる。
 この恐怖を最も知る人間が社長を勤めるテレスールは、今そこにいる民衆にマイクを向け、その声を拾って公の報道としてラテンアメリカ全土に広げている。

 ところで、チャベスの政策は、すべてが「すばらしい」の一言で済ませられるようなものでもなさそうだ。
 番組で取り上げられている土地収用も、難しい問題をはらんでいる。
 貧しい人々の住宅建設のため、ごく一部の超お金持ちの娯楽のために広大な土地を擁しているゴルフ場を収用するという。
 私有財産は保障されるべきだと、私は思う。しかし、ベネズエラの「貧しい人々」の割合(高い)とレベル(極貧)に対し、「私有財産の保障」神話は有効なのだろうか。
 それぞれの見方がある。当然、CNNをはじめとする従来の民間放送は、「私有財産」の観点からチャベスを批判する一方、テレスールは「貧しい人の立場になった改革」という観点で取材をしている。
 先進国・日本にいて、問われれば「ま、中流かな」と答える私に、どちらが正しいなどと軽々に言えるものではない。
 しかし、「もう一つの声」がメディアに乗ること、「もう一つの世界」がメディアを形成しつつあること。このことは文句なしに歓迎したいと思う。 

 最後にー

「彼らには言葉がなかった。500年間、パブリックにできる言葉がなかった。彼らには歴史がなかった。それが、初めて歴史を刻んだ。言葉をつむぎはじめた」

 この、桃井氏のコメントが印象に残った。 と、同時に・・・
 私たちは果たして言葉を持っているのか?という自問も湧き起こった



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