Casa de Celia

iHasta la victoria siempre!

愛しい街へ

2004-12-05 | Cuba(きゅーば)

 年に一度、キューバに行く。
 成田~ダラス【13時間】
 ダラス~メキシコシティ【3時間弱】
 メキシコ1泊
 メキシコシティ~ハバナ【約2時間】
 丸2日がかりで、愛しい街ハバナへ。

 海風に洗われた「雷おこし」のような街並みを見ると、まるで里帰りしたような気持ちになる。
 また、そう言っても間違いではない。
 この街で、私は確かに生まれ変わったのだ・・・

※ ダラス以外、ロス、サンフランシスコ、ヒューストンなど西海岸沿いの空港でも乗り継ぎ可。また、カナダ経由、ヨーロッパ経由も可。

 アメリカはトランジット。
 それでも、指紋はとるわ、写真はとるわ。
 撮った写真をきれいなフレームに入れて記念に配るサービスでもすればまだしも、撮りっぱなしかよ。だから嫌われるんだよ、アメリカは。
 心の中で、ざんざん毒づきつつ、愛想笑いは崩さない。
 ふだん、肌身離さずつけている「CHE」のネックレスも、「CHE」のシガレットケースも「CHE」のライターも、すべてスーツケースに隠してある。アメリカに、キューバに行くこと悟られることは絶対マズイのである。
 行き先?もちろんメキシコよん。私はメキシコ好きのハポネッサ。ほらね、パスポートのハンコはメキシコだらけ!
 ・・・アメリカにへつらう自分がケッタクソ悪い。しかし、キューバまでは我慢我慢。万が一にも足止めされるわけにはいかないのだ。

 前泊のメキシコシティ。毎年お迎えに出てくれる某旅行社のOさん(メキシコで強く生きてる日本女性)から「最近、日本人を狙った窃盗事件が相次いでいますので、ホテルを出るときは充分に注意して・・・盗られそうになったら抵抗せず全部渡してください・・・財布は開くときは周りに中を見られないように充分注意して・・・」など、注意事項の伝達が延々と続く。そんな危険を冒して外になんか出るもんか。
 キューバに着くまでは冒険は禁物。ひたすら我慢我慢ナノダ。

 ちなみに、成田までスーツケースも自分で運ぶ。宅配は絶対使わない。
 東京駅の階段は、そりゃーキツイ。しかし、万が一にも事故があってはまずいのだ。すべてはキューバ!何が何でもキューバに行かなければならない。

 一歩も外に出ずに迎えたメキシコシティの朝。
 飛行機の乾燥した空気と寝不足のため、毎度のことながら化粧のノリは最悪。それでも、もう一息でキューバだと思うと、心が踊る。

 着陸のため、高度を下げた飛行機の窓から、緑色の島を見下ろすときの幸福感は何とも言えない。
 一般的に「うざい」入国手続きも、私にとっては至福だ。
 真面目な顔をしていてもどこか表情が優しい、そんなキューバ人が大好きだから。係官のクバナもステキな人だった。簡単な質問(多分、「何日の滞在か」と聞いたと思う)を何度も聞き返し、発音の悪いスペイン語で答えるチーナ(本来、中国人の意味。キューバではアジア人は概ねこう呼ばれる)を優しい目で見つめ、「bien」と言った。
 北の巨大帝国主義国と鋭く対峙している割に、緊張感はあまり感じられない。こっちが不安になるくらい大らかなお国柄であり、優しい人々である。
 キューバの優しさは、強さの裏返しでもある。
 「特別期は大変でした。今も大変ですけど、少しは良くなってきています」と、誰もが言う。
 特別期とは、後ろ盾であったソ連をはじめ東欧の社会主義経済圏が崩壊し、丸裸となったキューバにアメリカの経済封鎖の強化で追い打ちをかけた時期を指す。「この薬棚がすっかり空っぽになった」と言いながら、爽やかな笑顔を見せた女医さんがいた。「長靴もザイルも何もかもなくなってしまったの」と言った農婦も、なぜか笑顔だった。
 今も物質不足は続いているが、独自の経済復興で最悪の危機はようやく免れたという。彼らの笑顔の裏には困窮に打ち勝った自信と誇りがある。

 初めてキューバに来たとき、私は「前の自分」だった。
 ブチ完全主義者で、小さなことを気に病んで、誰も信じられず、何も任せることができなくて、何でも自分で背負い込んで自分を追い込んで、周りの人を嫌いになって・・・
 そんな自分をすっかり変えてくれたのがキューバだった。
 キューバの困難な状況を考えたら、自分の日常の悩みなんか5ミリくらいなものだ、と思えた。
 それから、「万事適当」が私のモットーになった。「そんなのどうでもいいじゃん。5ミリくらいの問題だよ」というのが口癖になった。何で5ミリなのかよくわかんないけど、キューバで感じたことが、すべてなのだ。
 キューバに行って、帰って、また行って・・・結局、毎年行くことにして、多分、寿命が数年延びただろうと思う。
 キューバを知ったことが、私の人生の最大の勲章に思える。
 だから私は、何時間も飛行機に乗って、何度でもキューバに行く。


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