セブ島移住者の本音トークⅡ

セブ島でNGO活動に従事する管理人が、フィリピン人家族との奇妙な生活や、現地での国際交流について語ります。

色々難しい...

2009-11-15 | NGO活動

このところ、ブログ更新が停滞気味ですが、これには訳がありまして....

まあ、毎度、多忙で…なんてお話をするのですが、今回は、決してそれだけの事ではないのです。

やっと気持ちの整理がついたので、ここで御話が出来ますが、実は、将来、ここでの活動の主体になってくれればという期待をもち、当活動でのOJT(手当支給)及び、大学での社会福祉士資格取得の為の勉強を支援していたR君が、9月一杯で、当方オフィスでのOJTを辞め、先月10月からいない状態なのです。

色々とあったのですが、そうなってしまった原因・背景には、彼自身の育って来た環境や、彼の家族から絶えず持ち込まれる問題がありました。

また、彼自身、極貧の生活環境から、ここまでやって来て、その反動で、自分自身が豊かになりたいという‘強い想念’(半ば心の傷でありトラウマとも言えるかも知れません)があり、反面、自身の豊かさについて、‘何を持って豊かさとするのか’の根源的な問題も抱えますが、少なくとも、物質的な豊かさを期待できない、この仕事との狭間の中で揺れ動き、それが、以前にも述べました彼の精神の不安定さとなって現れ、最終的に、彼は、自身の労働により、即時、豊かになれる可能性を模索する道を選ばざるを得なくなった…こういう事です。

実際に、彼の中には、自身が社会福祉(彼がこれまで当方の支援の元、指導をして来た孤児院兼厚生施設)のお世話になった事もあり、自身も今度は、‘お世話できる立場になりたい’とした願望があった事は事実ですが、‘現在の世の中の仕組み’の中では、こうした事を行う為には、自身の物質的な成功は棄て、寧ろ、それは出来うる限り抑えて、精神的な高みを目指さないと、うまく行かない事なのであり、自分自身の所有物(財産・資産)を持つことと同時に、この分野での成功(精神的なもの)を目指す事は、相容れない…これが、まだまだ若い彼には分かっていなかった事であり、僕自身も、彼のそうした思いと苦しみに気が付くのが遅れてしまったように思います。

そんな訳で、以前の記事の中にも、何と言うのか、追い込まれた時の彼の精神の不安定さという事について述べた事がありましたが、そうした事の最大の要因は、上記の内容で、"日本の大学院で勉強をしているB・A君と現地の運営を熟知した、‘もう一人’を養成し、フィリピン人が中心となった運営体制を確立し、僕が一定の年齢を超えてフットワークが悪くなる前に、一線を退き、後方支援に回れるように"…とした‘理想’に近付けるよう、何とか早く目鼻をつけたい…そんな僕の焦りが、R君を追い詰めてしまっていたのでした。

何れにしましても、今も、その‘理想’に変わりはないのですが、以前から、里子たちに対する姿勢として、‘一切の期待をしないで、その子によいと思われることをして行こう’…とした標語(?)を掲げながら、今度は、僕自身が、‘それ’をR君に対してやってしまった事を、深く反省しております。

R君について、思い出すことには、大学入学当初、彼が、‘こんな環境、家族背景に育った者であっても、ちゃんと教育を受ければ、成功できるのだと証明し、世間を見返したい’…なんて言葉を発していた事があったのですが、その真意について僕自身が誤解をしたのだと痛感しています。

つまり、彼の思う‘成功’とは、金銭的に豊かになる事が主であり、それによって、名誉を感じるのであり、決して、病人、怪我人への献身、その行為による賞賛をもって名誉としていたのではなかったと言い換えられるのかも知れません。

しかし、これは、寧ろ、当たり前の事で、僕のように日本という、高度成長を成し遂げ、豊かになった国に生まれ、ひもじい思いをする事なく成長し、物質的には、ほぼ最高水準に近いところの生活をし、全てが満ち足りたところで、もっと高度な欲求を求めて、今度は、贅を捨てても、精神的な追求したい…こうした段階を踏んだ人間とは異なり、物質的にも精神的にも‘ないない尽くし’の環境で育った彼には、渇き、ひび割れた心の傷(トラウマ)を癒すのが最優先になる事は寧ろ自然な事なんですね。

また、冒頭でも述べました通り、彼は以前、自分が成功して、その富を恵まれない子と分かち合う為に、孤児院を運営したい…そんなことも語っていた事がありました。

僕は、それを聞いて、本当に立派だと思いましたし、今でも、そう思っていますが、今回、色々あって、本当によく分かったのは、彼自身が、まだまだ、‘その領域’を抜けられずにいる中で、そうした‘夢’を語るのは、あくまでも‘夢物語’なのであり、‘目標’ではないということです。つまりは、一旦、彼なり、彼の家族が、世界的に見た‘文明人’のレベルの生活を実感できるところまで行って、その段階(と言うか、経験)を踏まえて、言葉を発している状態ではなく、あくまでも‘ファンタジー’(幻想)の領域の事だったんですね。

そうした点において、‘言葉’というヤツは、時には、厄介なモノでもありまして、特に文化背景、生い立ちの極端な相違が両者にあった場合、片方のイメージによって発した言葉によって、もう片方の脳裏にイメージされるモノは大きな相違が生じている可能性が高いのです。

それゆえに、これまでも述べてきましたように、フィリピン人と日本人とのコミュニケーションにおいて、特に英語を媒体とした場合には、双方に大きなズレが生じる可能性が高く、‘言語スキルの向上’はやはり大切ではあるが、それに依存してしまって、相手のしぐさ、表情、目線他、デリケートなところで心の内を読む感性を磨かなければ非常に危険な事になってしまうのです。

そう言う事が比較的早く出来るようになる可能性があるのは、やはり夫婦間の事であり、今、僕が、ここにいて、100%に近い格好でお互いの思いを交換出来ているのは、フィリピン人の中では、やはりウチの女房だけなんでしょうね。そして、それ故に、複雑且つ、デリケートな案件については、まず、里子他に直に話しをするよりも、女房に話してみて、どの程度、僕の思いが伝わるのか試し、その反応をもって、分かり易い表現に変えるなどの工夫をし、必要に応じて、女房にコミュニケーションの補助をしてもらう…そんなやり方で、これまでは比較的うまくやって来たのですが、R君の件に関しては、職場で何時も顔を突き合わせ、他の里子とは微妙に距離感が違った中で、僕の中にもR君の中にも、‘相手のことは分かっている’とした‘慢心’が生じていた事もあるのかも知れません。

まあ、何を言っても繰言になってしまい、具体的な事例を挙げて説明するとプライバシーにも抵触しかねない為、それを避けて抽象的な説明をしているので、非常に苦しいのですが、どうしても、ここで、僕なりの‘ケジメ’なり、‘区切り’をつけておかないと先に進めないので、出来うる限りの事を吐き出しているだけなのです....

…そんな訳で、‘将来の構想’も2年程度逆戻りし、ほぼ白紙になった状態で、こんな僕でも、少々、精神的にきつくなったのと、物理的な仕事の多さも相俟って、少々、ペースが落ちましたが、今月になって、他の里子たちのフォローもあり、事務所の仕事に穴が開くことはなくなりましたし、今後、これまでとは違った企画などもあり、大変な中にも、楽しさを見出しておりますので、何とか頑張って、ブログの方も続けてゆこうと思っています。


今後とも、どうぞ宜しくお願いいたします。 m(_ _)m



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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
そうですか・・・ (オンゴイパパ)
2009-11-15 21:14:54
そうですか・・・残念でした。期待されていたのは、お聞きしていたので権兵衛さんも気落ちされませんようにされてください。
どこに向かうのかを学ぶのに出発する状況があまりにも厳しい場合、お金持ちになる方が、簡単なのかなぁ。
お金持ちになるのも彼の才能がどの程度発揮されるのかは、そのような才能の著しく少ない僕には判断できませんが・・・

プルメリアが労働の価値に見合った報酬を払えれば、っていう問題でもないのかなぁ
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言語による意思疎通 (Crocodile Lolo)
2009-11-15 22:25:27
言語による意思疎通、大変大切です
しかし今の私たち夫婦にもっとも
かけている物です。だから、、、
私はこれだけで何とかやってます。

片方のイメージによって発した言葉によって、もう片方の脳裏にイメージされるモノは大きな相違が生じている可能性が高いのです。

‘言語スキルの向上’はやはり大切ではあるが、それに依存してしまって、相手のしぐさ、表情、目線他、デリケートなところで心の内を読む感性を磨かなければ非常に危険な事になってしまうのです。
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 (b)
2009-11-16 15:23:54
魂的成長性か物質的成長か 物質的成長に行きたい気持ちは良く分かるし だけど物質的な物に頼っても 肝心の心が無くして本当の幸せは得られ無い
フィリピン人に言ってもほぼ9割方理解出来ないと私は思っています
本当は物質と心のバランスを取り 幸せを得るのが一番何ですが。
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Re: そうですか・・・ (権兵衛)
2009-11-17 00:15:08
オンゴイパパさん、お気遣いありがとうございます。

…何と言うのか、彼の場合、その辺りのバランス感覚が、すごく難しかったのは事実ですね。

単純に言えば、彼が、ここで研修しながら大学での勉強を進めるに当たって、得られたベネフィットは、総額で、一般ワーカーよりも高く、新任の公立校教師とほぼ同等の設定ではあったので、(ここの相場では)決して低いとは言えないのです。

しかし、年齢的なモノや、出身階層から来る、コネクションがない事で、いくら成績が良くとも、学校からの授業料ディスカウント他の措置が得られない中、高い私立の学費を払いながら、生活を成り立たせるのが難しい状況の中、家族からの‘引っ張り’を受けてしまっていたのでは、それは最早、不可能としか言いようがないし、更には、そうした状況で、不満をもってしまったなら、恐らくは、どこで幾ら貰おうとも不満は残るんでしょうね...

こちらも、完全なる労働と言う形ではなくて、空いている時間には、(実際の仕事の不可は、稼働率30%程度)学校の勉強や日本語の勉強もOKの上、PCも使いたい放題だった訳で、その上で、‘それ以上の待遇’というのは、やはり無理じゃないか…そんなところもあったのです。

つまりは、就学を中止し、(そうすれば、高い学費を捻出する必要はない)今よりも若干高めの収入さえ得られれば、取りあえず、将来のことは無視しても、現状は変えられる…そんなところでした...
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Re: 言語による意思疎通 (権兵衛)
2009-11-17 00:28:46
Crocodile Loloさん、そうですね...

…勘違いをされる方が多いのですが、国籍が変わったからと言って、例えば、もてない…と言うよりも、‘女性の心理の分からない日本人男性’が、フィリピン人女性に突然、‘もてる’事は、ほぼあり得ず、もし、そのように疑われる状況が生じるとすれば、絶対的な経済的格差による御互いの利害関係に拠るものと考えるのが普通ですよね。

ただ、フィリピンの女性は、特にちゃんとした育ちをした(人間形成期に愛情たっぷりに育まれた)人であれば、‘ハート’の部分を良く感じ取りますから、‘その辺りの長けた方’であれば、十二分にやって行けるのですね。

逆に言うと、幾ら高い言語能力や知識をもっていても、それらを鼻にかけて、意地の悪い者、それに卑怯な者は、全くもてない(精々、性悪に利用されるのが関の山)…これも紛れもない事実ですね。(苦笑)
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Re: 魂 (権兵衛)
2009-11-17 00:36:56
bさん、ご指摘の通りかも知れません。

それと言うのは、やはり、フィリピン人の7割程度は実質的に、‘世界の貧困層’であり、また、嘗ての宗主国であるA国の都合により、見かけに拘る事、消費する事が美徳の如く洗脳されてしまったような環境の中で、日本人には創造を絶する貧困の中に育つと、余りにも酷い欠乏状態により、‘もっている者’を羨むがばかりに、心が曲がってしまう場合も少なくはないんですね。

そうした状況にあっても、時には、奇跡的に、すばらしい知性を発揮する人もおりますが、これは、ダイヤの原石を探すのに等しい事で、寧ろ、普通にやってゆける(犯罪に及ばない)だけでも奇跡なのかも知れません。
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Unknown (Buko)
2009-11-17 11:29:19
がっかりなお気持ち、よく分かります。
せっかく高等教育までたどり着けても、その知識と技術でこの国の根本問題を解決することができない。しかし比国に3年住み、理想とか美徳とか私たちが言うのは簡単ですが、極度の貧困のなかで人間は折れてしまってもおかしくない、恨んではいけないと(不本意ながら)理解できるようになってしまいました。
F.Sionil Joseの本、読まれましたか? 多分R君も、権兵衛さんの期待に添えない自分の意思に悩んだ挙句だと思います。
この国にはかつてのマグサイサイ大統領のような人物はもう出てこないのでしょうか?(溜息)
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軌道修正 (ゆう)
2009-11-17 21:52:00
若いんですから、いろいろ悩みや誘惑(?)があると思います。最初から優等生なんて面白くない!
たくさんのこと経験して失敗もしてそこから学んで、一回りも二回りも大きくなったR君に会えたらいいな~
いつかまた、戻ってくることがあるかも知れません・・

でも、ゴンベーさんは後方支援なんて考えないで、最前線に立ち続けてください。

ところで、いとしのゴンちゃんの父性愛はいかに?って犬にそういうの、ないんでしょか?
また写真見せてくださいね。
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Buko さん... (権兵衛)
2009-11-19 16:47:09
ありがとうございます。

彼については、ここで研修を始めた早期の段階から、期待の反面、危うさ(前にも触れました通りの精神的な不安定さ)も感じ、お化けするか、落ちるか…このどちらかになるだろうと感じ、出来れば、何とか、基本点が出来れば、早期に、B・A君に続いて、日本へ行って勉強して貰った方が良いんじゃないか…そんな風にも思ってはいたのです。

それは、ここに居て、ここのスタンダードしか知らなければ、やはり、その精神構造は、嘗ての宗主国によって押し付けられた‘植民地の住民に相応しいモノ’しか出て来ない可能性の方がずっと大きいからです。(また、こうなってしまうのも、本当に無理からぬ事だと僕も考えています)

それ故に、当方の卒業生も‘センス’があると感じられる者ほど早く、海外へ流出する傾向にあり、一旦出てしまうと、‘この国の酷さ’を痛感し、2度と戻って来ない…そんな傾向にあります。

取りあえず、そうした中で、現在、日本留学中のB・A君は、それを圧しても、ここへ帰って、皆の為に頑張りたいと、そうした研究を行う大学院で勉強しておりますから、今は、彼が期待の星ではありますが... 期待ばかりで彼を潰してはいけませんし、何とか、彼に続く人材が欲しいところです。

>F.Sionil Joseの本、読まれましたか?

まだ読んでおりません。一度探してみます。
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Re: 軌道修正 (権兵衛)
2009-11-19 16:59:23
ゆうさん、ありがとうございます。

こうなってしまった事は、本当に遺憾だし、僕自身も反省しておりますが、後は、彼が、ちゃんとやってくれさえすれば良い…そんな風に思っております。

少々、後戻りしてしまった感はありますが、気長に待とうか…そんなところですので、逆に言えば、先の事を考えることは今は難しく、取りあえず、目の前の事に集中して行こうかなと考えています。

ご指摘の通り、‘後方支援’なんて、ある意味の逃げを打ったから、‘それじゃ駄目だ!’…なんて天の声が聞こえたような気もします。

ゴンベー君(犬)の方は、相変わらずで、‘作ったら、作りっぱなし’で、全然、何にも気にしていないようです。(苦笑)
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