2℃が限界?! 地球温暖化の最新情報

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2℃をこえると多くの生物が絶滅する

2006-05-27 12:01:16 | 2℃

◆気温が上がると生物は移動が必要

 生物は植物でも動物でもまわりの温度に非常に敏感です。それぞれがみな自身にちょうど適した気温や水温のところで生活しており、それらの温度がすこしでも変化すると、もうそこでは生きるのがむずかしくなります。そこで温暖化が進んで気温が上昇すると、生物は一般に気温がより低い高緯度地方または高所へ移動しなければなりません。具体的には、産業革命以前から2℃の上昇で高緯度地方へ 300 kmの移動が必要であり、山岳生物の場合には同じ条件で高所へ 300 m(高度)の移動が必要です。

◆すでにチョウや鳥類が移動を開始

 ドイツのハノーバー大学を中心とする国際的な研究チームの報告によれば、すでに北米とヨーロッパの 39種のチョウが最近 27年間に北方へ最高 200 km移動し、イギリスの 12種の鳥類も最近 20年間に北方へ平均 19 km移動したことが確かめられています(Nature 2002年3月28日号参照)。またWWF(世界自然保護基金)は、アルプスのある種の高山植物が最近 30年間に高所へ 100 m移動したことを指摘しています。
 わが国でも、国立環境研究所の最近の報告によれば、以前には九州や四国南部が限であったナガサキアゲハが 1980年代から和歌山県や兵庫県に出現し、2000年以降は関東地方でも生息が確認されたとのことです。

◆移動は現実にはむずかしいケースが多い

 しかし、このような生物の移動はかならずしもうまくいくとは限りません。動物は比較的動きやすいかもしれませんが、植物の場合には、すでに生えているものはただ枯れるのを待つのみであり、これとは別に他の土地で種子があらたに発芽し、成長することによってはじめて移動が可能になるわけです。とくに樹木の場合にはこの成長に長い年月を必要とします。ところが現実の温暖化の速度は、10年間に 0.3℃以上であり、この移動のテンポをはるかにこえているのが問題です。多くの樹木にとって移動が可能なテンポは、温暖化の速度とくらべて5分の1以下とみられています。
 また移動先の土地がやせていて移動する植物の生育に適さないケースも多いでしょう。そして植物の移動がうまくいかないと、それを食べ物とすることが多い動物も移動がむずかしくなります。こうして連鎖的に多くの生物が絶滅を強いられるケースが増えてきます。山岳生物の場合には、山の頂上へ向かうほど面積が減少することも移動による生息の維持を不利にします。

◆2050年までに生物種の 26~37%が絶滅

 最近イギリスのリーズ大学を中心とした国際的な研究チームがヨーロッパ、オーストラリア、メキシコ、南アフリカなどに分布する 1103種の陸上生物(ほ乳類、鳥類、こん虫類、植物など)について温暖化による生息環境の変化を見積もり、このままいけば 2050年までにそれらの 26~37%が絶滅すると予測しました(Nature 2004年1月8日号参照)。これは生息地の移動がむずかしいと想定した場合の予測ですが、前記のように、多くの生物についてそれが現実であると考えてもいいでしょう。なお、移動が可能であるとしても絶滅は 15~20%におよぶと予測されています。

 一方、国連環境計画(UNEP)も、このような絶滅を含めて 21世紀の半ばに生物分布が大きく変化する地域は世界の森林の 34%に達すると推測しています(このうち、北方林は25%が消失)。また3℃の気温上昇によってノルウェーの高山植物が4分の1に減少することも指摘されています。このように、気温上昇が2℃をこえると、地球の生態系に激変が生じ、多くの生物が絶滅せざるをえなくなります。そしてそれは私たちの生活にも多大の悪影響をおよぼすことになるでしょう。