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地球温暖化と異常気象増加のメカニズム(1/3)

2006-02-02 23:45:41 | 影響
※元気象研究所研究室長の増田善信さんにご寄稿いただいた「地球温暖化と異常気象増加のメカニズム」についての解説を、3回に分けて連載します。


「地球温暖化と異常気象増加のメカニズム」第1回
元気象研究所研究室長 増田善信

◆大気が不安定になり集中豪雨や発達した低気圧、台風が増加

温室効果ガスが増えると、赤外放射の吸収が多くなり、地面付近の気温は上がります。その反面、成層圏では、その分だけ赤外放射が減るので、逆に寒冷化します。そのほか、フロンガスによるオゾン層の破壊で、紫外線の吸収も少なくなるので、一層成層圏の温度が下がります。上層が冷たくなり、下層が暖かくなって、上下の温度差が大きくなることを「大気が不安定になる」といいます。

図は1957年以後の対流圏と成層圏の気温変化を示したものです。地上気温は1965年頃から年々上昇しはじめ、この35年で約0.6℃上昇しました。地球温暖化の影響だと考えられています。

一方、成層圏では、エルチチョンやピナツボなど大きな火山が噴火したときは、成層圏の気温が一時的に上昇していますが、全体として年々気温が下がり、この35年間で約3℃も低下しています。

その結果、年々上下の温度差が大きくなって、大気が不安定になっています。大気が不安定になればなるほど、強い上昇気流が起こり、集中豪雨など、豪雨が頻発し、台風や低気圧も発達し易くなります。最近の異常気象の激増は、地球温暖化によって大気が年々不安定になってきたためだと考えられます。


◆異常気象とブロッキング

しかし、大気の不安定化だけでは異常気象は説明できません。異常な状態が何日も続いたときに異常気象が起こるのです。例えば、地球全体は温暖化しているといわれているのに、昨年(2005年)12月には日本は記録的な低温と大雪に見舞われました。また2003年は、日本付近は極端な冷夏でした。一方、フランスなどヨーロッパは、熱中症で死亡する人が続発したように、酷暑でした。ところが2004年は、逆に日本の7月は酷暑で、ヨーロッパはそんなに暑い夏ではありませんでした。このような異常気象は大気が年々不安定化しているということだけでは説明できません。

1日や2日暑くても、翌日は寒くなるように、天気が周期的に変われば、酷暑や冷夏は起こりません。問題は同じような天気が何日も続くことです。昨年の台風がほとんど同じようなコースを通って日本に襲来したのも、同じような気圧配置が続いていたからです。このような同じような気圧配置が続くことをブロッキングといいます。温暖化が起こると、ブロッキングが起こりやすくなるのではないかと考えられています。

<次回「ブロッキングとは」に続きます>