「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.447 ★ [新連載]ピザハットは330円パスタで客集め 中国を襲うデフレ圧力

2024年07月03日 | 日記

デフレ加速の中国経済【1】

日経ビジネス

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この記事の3つのポイント

  1. 中国経済は消費が力強さを欠き、デフレ圧力が強まる
  2. ピザハットやマクドナルドなどが格安メニューを競う
  3. 就職難と不動産不況で、消費者の節約志向は強い

 

 広東省広州市の中心部から車で約20分ほどの大型ショッピングモール。オープンして間もない1階の新店舗が人気を集めている。

 「ピザハットWOW(ワウ)」。看板商品のチーズピザは19元(1元=約22円)。パスタは15元から、チキンステーキも19元からと、格安メニューがずらりと並ぶ。中国でピザハットやケンタッキーフライドチキンといった外食チェーンを運営する百勝中国控股(ヤム・チャイナ・ホールディングス)が始めた新業態だ。

 平日昼に店舗を訪れると、郊外店にもかかわらずほぼ満席で、客の多くは格安メニューを次々に注文していた。同じフロアのライバル店の多くが閑散としているのとは対照的だった。

ピザハットWOWは19元のチーズピザを筆頭に格安メニューを取りそろえる

 1990年に中国へ進出し「洋食」の草分け的な存在だったピザハット。格安の新業態を始めた背景にあるのは、消費者の節約志向の高まりだ。

平日昼に訪れるとテラス席に空きはあるものの、店内はほぼ満席だった

■本連載のラインアップ(タイトルは変わる可能性があります)
・ピザハットは330円パスタで客集め 中国を襲うデフレ圧力(今回)
・BYD、2100キロ走るPHVが220万円 中国EVに淘汰迫る価格破壊
・中国・国家公務員試験に300万人 就職難の若者「鉄飯碗」に殺到
・バブル崩壊・中国不動産テコ入れ不発 政府買い取り表明も失望感

 1~5月の社会消費品小売総額(小売売上高)は前年同期比で4.1%増と、2023年通年の7.2%増から落ち込んだ。新型コロナウイルス禍と不動産バブル崩壊を受けて、消費者の財布のひもは固い。

 政府のインフラ投資や輸出増加により1~3月の実質GDP(国内総生産)は前年同期比で5.3%増を確保したが、消費の不調をいつまでもカバーできるものではない。

外食チェーンが低価格路線

 足元ではデフレ圧力が急速に強まっている。消費者物価指数(CPI)の伸びは前年同月比で1%を下回り続けるなど停滞し、先行指標である生産者物価指数(PPI)は1年以上にわたり前年同月比でマイナスが続く。

 節約志向をとらえた外食チェーン各社が、ピザハットのように低価格路線を打ち出している。格安トレンドを先導したのは米マクドナルドだ。ハンバーガーとドリンクなど2種類の商品を組み合わせたセットを13.9元で提供する。今では米バーガーキングなどライバルのファストフード店も同様の格安セットを売り出している。

マクドナルドはハンバーガーとドリンクなど2種類の商品を組み合わせたセットを13.9元で提供する

 地元勢も動いた。カフェチェーン大手の瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)は23年6月から、1日1杯限定ながら9.9元でコーヒーを買えるクーポンを提供し、若者らの人気を集める。24年1~3月の売上高は前年同期比で4割増えた。

カフェチェーン大手のラッキンコーヒーは9.9元で購入できるクーポンを提供

 日本企業でも、サイゼリヤが割安さで需要を取り込み、業績を伸ばしている。うどん店「丸亀製麺」を運営するトリドールホールディングスも4月、とんこつラーメンの「ラー麺ずんどう屋」の中国進出に際して、日本国内よりも価格帯を低く設定した。

中国版「ドン・キホーテ」躍進

 デフレ傾向が進むのは外食だけではない。上海を中心に展開する小売店「好特売(ホットマックス)」は、日用品や賞味期限が近づいた食品などを格安で販売する。定価の半額以下の商品も多い。店頭販促(POP)には賞味期限や定価、割引額を大きく表示。店舗内には派手なうたい文句が掲げられ、中国版「ドン・キホーテ」という趣だ。

中国地場の小売店「ホットマックス」は、日用品や賞味期限が近づいた食品などを格安で販売する

 運営会社の創業は20年2月。わずか4年余りで中国国内の店舗数を800超に拡大した。23年12月には浙江省杭州市に「MEGA好特売」と呼ぶ大型店を開業。米ナイキ、独アディダスなどスポーツブランドの衣類や靴を売る。

 売れ残り商品のためサイズは限定されるものの定価から8割引き近い商品もあり、「休日には若者が数多く押し寄せている」(店員)という。

23年末に杭州でオープンした大型店はスポーツブランドの衣服なども取りそろえる

 だが、これらデフレ下の勝ち組は全体の一部だ。ラッキンコーヒーと競合する米スターバックスは24年1~3月の中国事業の売上高を前年同期比で8%減らした。ラッキンコーヒーへの対抗策として割引クーポンの発行などを余儀なくされている。そのラッキンコーヒーも採算度外視の状況で、格安戦略の持続可能性には疑問符がつく。

 高級路線で展開してきた中国菓子チェーン大手の良品舗子は23年12月期の売上高が前の期比で15%減った。シェアを維持するため300品目について平均2割の値下げに踏み切ったことが響いた。

 個人消費が力強さに欠ける中国。「例外はEV関連や旅行関連などに限られる」と、みずほ銀行中国の伊藤秀樹主任エコノミストは指摘する。比較的好調な工業生産や輸出も、「デフレ輸出」に対して欧州など世界各国・地域が懸念を表明しており先行きは不透明だ。

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