「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.642 ★ 「なんか違う」中国人がネット通販で「爆買い→大量返品」の怪、その裏でちゃっかり儲ける意外な企業とは?

2024年09月10日 | 日記

DIAMOND online (山谷剛史:中国アジアITライター)

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Photo:NurPhoto/gettyimages

中国ではネットショッピングが盛んだが、その裏で「爆買い大量返品」という奇妙な購買行動がブームになりつつある。ショップにとっては迷惑以外の何物でもないが、このトレンドを追い風に、収益を上げている意外な企業が存在する。その実名と、中国人による奇妙な購買行動の動機を詳しく解説する。(中国アジアITライター 山谷剛史)

よく閲覧され、よく買われるが よく返品される!

 世界一のEC(ネット通販)取引額を記録する中国で、ユーザーからの返品の多さが問題となり、多くのショップが頭を抱えている。

 特にひどいのが女性向けアパレル商品だ。現地の報道などによると、中国ECプラットフォームにおける返品率は、少し前までは10%程度だったのが、30%、60%と急上昇。今では80%~90%に達することもあるという。

 レディース服を取り扱うECサイトは「よく閲覧され、よく買われるが、よく返品されている」。それが今の中国EC業界の実態だ。

 中国のEC企業は、毎年6月18日(618商戦)と11月11日(独身の日セール)に大規模なセールを開催する。このうち今年の618商戦では、とある女性向けアパレルショップの返品率が80%に達して話題となった。

「独身の日セール」の配送現場 Photo:Tao Zhang/gettyimages

 この店ではもともと、セール当日の売上高が約1000万元(約2億円/1元=約20円換算)に達していた。だが、その約8割が返品されたのだ。

 顧客に返金したり、返品された商品を処分価格で販売したりした結果、損失額は50万~60万元に膨れ上がった。つまり、セールに参加して大儲けしたはずが、1000万円以上の赤字が出たわけだ。

 この店だけではない。特に今年の初め以降、女性向けアパレルを扱うECストアの多くが「返品率のジレンマ」から抜け出せず閉店している。

ネット通販の潮流に乗り 「ライブコマース」を始めた企業も大損

「TikTok」運営元のByteDanceが中国向けに展開しているショート動画SNS「抖音(Douyin)」のクライアント企業も例外ではない。Douyinではインフルエンサーがライブ動画を配信しながら商品を宣伝する「ライブコマース」が人気で、利用者を増やしてきた。

 特に中国人女性はインフルエンサーが着ている服や化粧に魅せられ、「同じものを買いたい」と勢いよく購入するケースが多い。だが昨今は「買ってみたら思っていたのと違った」と返品する例が続出している。それだけではなく、「よその店のほうが安かったから返品する」というのもよくある理由になっている。

 では実際に、中国の消費者は、どんな感覚で返品システムを使っているのか。

 中国人の妻と子供と一緒に、中国で暮らす日本人の「華村」氏は、テキスト配信サービス「note」の記事で、度を越えているように見える「妻の返品事情」について触れている。以下、ご本人の許可を得て、その一部を掲載しよう(※改行位置は一部変更しているが、それ以外は原文ママ)。

「(前略)うちは双子が産まれたわけでも、もちろん隠し子がいるわけでもないのですが、なぜ2台のベビーカーが必要なのでしょうか。答えは、嫁が2台とも試してみたいからとりあえず注文してみた、ということでした。どちらがよいかを比較し、気に入らなかったほうは返品してしまえばいいというわけです。

(中略)僕の知る限りでは中国では買ったものの返品、とりわけネット通販におけるそれは日本より非常に簡単で、特段の事情がなくとも手軽に行えます。手続きもアプリからすぐにできますし、商品の種類による制限もほとんどありません。金額も多くの場合は満額で返ってきます。

嫁はこの手軽な返品を利用し、いろいろなものを試してはすぐに返品する癖があるのですが、ベビーカーに関してもその癖が出たようです。」

( 『中国の簡単すぎる返品、むしろ消費者にとって損じゃないか説』より)

 さらに、華村氏の妻はベビーカーだけでなく、シーツも返品していたとのことだ。

シーツをたたもうとする夫を「なんか違う」と止めた妻

「(前略)ようやく一つのシーツを選び、注文しました。すると翌日、さっそくシーツが届きました。中国はネットショッピングが発達しているので、大抵のものは(住所や買ったものの出荷場所にもよりますが)1日か2日もすれば手元に届きます。現代文明さまさまです。シーツ選びに迷った時間もこれでチャラです。

届いたシーツを開封し、とりあえずソファの上に広げてみます。うんうん、まあ悪くないんじゃないか。これでようやくソファが使えるようになるぞ。じゃあ、さっさと洗濯機に入れて洗うとするか……とそそくさとシーツをたたもうとする僕の手を、嫁がやおら静止してきました。そして『なんか違う』と言い始めてしまったのです。

そしてたたんだシーツを洗濯機に入れるのではなく、それが送られてきたときの箱に戻して、『返品しましょう』と嫁は言い始めました。スマホで手早く返品の手続きを始める嫁。(中略)ほどなくして集荷のおっちゃんが来て、届いたばかりのシーツを持っていきます。そして嫁はまたアプリと睨めっこを続け、また1日ほど悩んだ挙句、新しいものを注文しました。

――というやりとりを、すでに2回繰り返しています。要はその次に来たシーツも嫁は気に入らず、さっさと返品してしまったのです。」

(『返品が簡単すぎるのも考えものだな、と思った話』より)

 こうした取引が当たり前になっている背景には、中国の法律がある。中国には「消費者権益保護法」なるものが存在し、購入後7日以内であれば理由なく返品や交換ができる。この法律は本来、消費者の権利と利益を保護し、電子商取引業界の健全な発展を促進することを目的としていた。

 というのも、もともと中国では詐欺師や怪しい業者も多く、赤の他人とは「騙し騙される」関係性が当たり前だった。加えて道路状況も悪く、物流網も未発達だったため、企業・一般消費者の双方にとって、国産ECサービスは気軽に手を出せるものではなかった。米国発のECプラットフォーム「eBay」のほうが人気だった時代もある。

30万円のサングラスを爆買いし転売できないと返品する人も

 こうした環境下でECの寵児・阿里巴巴(Alibaba)が急成長し、淘宝(Taobao)や天猫(Tmall)が普及した要因は、上記のとおり国が保障を手厚くし、騙された消費者の泣き寝入りを抑止したためだ。

 そして時代は変わり、ネット上の取引で知り合った赤の他人を無条件に信頼する人も増えてきた。売り物がどんな状態か分からず、一昔前には到底購入できるものではなかった「中古商品」の取引も、若者主導で盛り上がるようになった。

中国における小包の集配所(画像提供:山谷剛史)

 その弊害として、ネットネイティブの若者が外の世界に出た途端に、昔ながらの詐欺師に騙される事例もわらわら出てきているようだ。そんな呆れた話もありつつも、新型コロナウイルス禍を経て、非対面・非接触で人気商品が買えるライブコマースが台頭。「返品可能」の仕組みも相まって、さらに普及が進んでいった。

 ただ、返品が当たり前になれば悪用する人も増えるもので、その後は転売するために「まとめ買い」をして、売れなければ返品する猛者が出現するようになった。

 ある16年経営しているサングラス販売店は基本的に返品率が低く、年間を通じて15%前後だという。だが「中古ECサイトの閑魚(Xianyu)で売りたい」と言う理由で30万円近い商品を次々と注文する客が現れ、要望通りに販売したところ、「やっぱり閑魚で売りにくい」という理由で返品されたという。

 他のショップでも、半年のうちに77台もスマートフォンを購入し、全て返品した人がいる。こうした迷惑ユーザーの中には、Alibabaの設定する「返品送料保険」を悪用し、返品時に「送料」を補償してもらうことで、少額ながら金銭を得ている人もいるそうだ。

 返品率が高まり、商品のやり取りが増えることで儲かるのは迷惑客だけではない。配送業者や宅配ロッカーの事業者も収益を上げている。

爆買い返品ラッシュ」の裏で こっそり儲けた企業の実名

 香港証券取引所に上場予定の中国の宅配ロッカー大手「豊巣(Hive Box)」は、特に返品ブームの恩恵を受けた企業だ。中国の都市のさまざまな場所に設置された宅配ロッカーが、商品の受け取り・返品の両面で活躍。長らく赤字だったが、今年に入り黒字化している。

多くのマンションに設置されている宅配ロッカー(画像提供:山谷剛史)

 また、返品率が高ければ高いほど、より多くの販売業者が貨物保険に加入する必要があるので、保険会社も得をする。

 この状況を苦慮し、間もなく迎える11月11日(独身の日)のセールに“乗らない”予定のショップも多いという。そのためAlibabaや低価格ECサイト「拼多多(Pinduoduo)」の運営元は、消費者への補償をキープしつつも、ショップに負担をかけない措置を講じ始めている。

 ちなみに、今回お伝えした内容は中国国内だけの話にとどまらない。昨今、中国系ECプラットフォーム企業は世界進出を加速させているが、各社はサイトに中国同様の返品システムを導入している。

 ECプラットフォームの運営企業は「気軽に返品可能」というサービスの売りにできるものの、出店しているショップにとってはたまったものではない。海外での返品率の高さに頭を痛めている販売者も出てきているようだ。「なんか違う」と言い出す顧客が、全世界に広がる日もそう遠くないかもしれない。

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No.641 ★ 中国外貨準備、8月は3.288兆ドル 15年以来の高水準

2024年09月10日 | 日記

ロイター

2024年9月8日

 中国の8月末時点の外貨準備高は前月比318億ドル増の3兆2880億ドルと、2015年12月以来、約8年半ぶりの高水準となった。写真はドルと人民元の紙幣。2023年1月撮影(2024年 ロイター/Dado Ruvic)

[北京/上海 7日 ロイター] - 中国の8月末時点の外貨準備高は前月比318億ドル増の3兆2880億ドルと、2015年12月以来、約8年半ぶりの高水準となった。ドルが総じて下落したことが背景。

2カ月連続の増加となった。ロイターがまとめた市場予想(3兆2890億ドル)にはわずかに届かなかった。

人民元は8月に対ドルで1.9%上昇。ドル指数は2.2%下落した。

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No.640 ★ 上海市、世界最大の室内スキー場が9月6日にオープン

2024年09月10日 | 日記

JETRO上海事務所

2024年9月5日

中国で2024年9月6日、上海市の自由貿易試験区の臨港新エリアに位置する世界最大の室内スキー場「耀雪氷雪世界」が開業する(2023年12月28日記事参照)。同施設は、大型国有企業の上海陸家嘴集団と不動産大手の上海港城開発集団が共同開発したもの。

同スキー場の総工費は70億元(約1,400億円、1元=約20円)、総面積9万平方メートル、気温はマイナス3度前後を維持している。ゲレンデには難易度別に4本のコースがあり、最長滑走距離460メートル、上級コースは最大斜度26度になる。そのほか、16種類のアトラクションも備えており、初心者や家族連れでも楽しめる施設となっている。

中国国家体育総局が2024年6月に発表した「大衆向けウインタースポーツ消費市場調査レポート」によると、昨季にウインタースポーツを楽しんだ人は国内で4億人以上に上る。また、2014年時点で中国における室内スキー場は5施設だったが、2024年4月末時点で59施設まで急増している。2025年には、深セン市で同等規模の室内スキー場「深セン前海華発氷雪世界」が開業する予定で、室内スキー場の建設ラッシュが続いている。

2024年8月3日、中国国務院が発表した「サービス消費の高い質の発展を促進するための意見 」には、「スポーツ関連施設を増やすほか、雪上・氷上スポーツを積極的に推進し、全国的な普及を図る」と書かれており、ウインタースポーツ関連消費に対する高い期待がうかがえる(2024年8月14日記事参照)。

耀雪氷雪世界の室内スキー場の様子(ジェトロ撮影)

急拡大する中国ウインタースポーツ市場を取り込むべく、中国でスノーボードなどのウインタースポーツ用品を販売するヨネックス(上海)体育用品は、同施設の1階フロアに約70平方メートルの実店舗を構え、2024年8月28日にオープニングセレモニーを行った。

同社の大塚幸博部長は「世界各国のスキー協会からも非常に注目されている施設だ。10月12~13日には、同施設内でスノーボードなどの試乗会イベントを開催する予定。中国のウインタースポーツ人口は増加し続けており、最も有望な海外市場の1つだ」と述べた。

ヨネックス実店舗オープニングセレモニーの様子(ジェトロ撮影)

日本のスキー市場が縮小する中、旺盛な中国市場の開拓に意欲的な日本企業に応えるべく、ジェトロは、JAPAN MALL事業の一環として、「上海耀雪氷雪世界」および華北地域の室外スキー場において、消費者向けに年間を通じて日本ウインタースポーツ用品の電子商取引(EC)販促・体験イベントを実施していく(注)。

(注)JAPAN MALL事業は、海外の主要ECサイトによる日本商品の買い取り販売を支援することで、売れ筋日本商品の創出を目指す、EC分野初のマーケットインの取り組み。詳細はJAPAN MALL事業ホームページを参照。

(高山博、劉佳俐)

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No.639 ★ 中国 外資ネガティブリスト、製造業規制を全撤廃

2024年09月10日 | 日記

NNA ASIA

2024年9月9日

中国国家発展改革委員会(発改委)と商務省は8日、外資規制分野を一覧化した2024年版の「外商投資参入特別管理措置」(外資ネガティブリスト)を発表した。製造業分野の規制を完全に撤廃した。11月1日から施行する。

リストは29項目で、前回発表の21年度版から2項目圧縮。「出版物印刷」と「中薬の炮製(蒸す、あぶるなどの加工処理)技術の応用、中成薬の秘伝処方製品の生産」への外資投資規制を撤廃した。

習近平国家主席は昨年10月に開かれた巨大経済圏構想「一帯一路」の国際フォーラムで基調演説を行い、「製造業分野の外資参入規制を全面的に取り消す」と表明していた。

外資ネガティブリストの詳細は発改委のウェブサイトで確認できる。

発改委は、自由貿易試験区や自由貿易港などを活用して、サービス分野の外資規制を今後緩和する方針を示した。発改委は現在「外資投資奨励産業リスト」(外資の投資を誘致することで発展を促す産業リスト)の修正作業を進めており、サービス分野を奨励項目に多く盛り込む考えという。

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No.638 ★ 中国EC「Temu」親会社、不可解な見通しが落とす影 株価3割急落したPDD、創業者は一時「中国一の富豪」だった

2024年09月10日 | 日記

DIAMOND online (The Wall Street Journal)

2024年9月9日

Photo:Bloomberg/gettyimages

 中国のハイテク株はここ数年の間に宝の山から金食い虫に転落した。景気減速や競争激化、当局の締めつけ強化などが圧迫要因となっている。そこから抜け出した注目すべき「例外」も再び地に落ちた。

 かつて、中国Eコマース(電子商取引)のサクセスストーリーの象徴から一転して罪をなすりつけられる存在になったのは、市場リーダーのアリババグループだった。同社の株価は2020年にピークをつけた後、4分の3近く下落している。同年に規制当局はアリババの金融関連会社アント・グループの340億ドル(現在の為替レートで約4兆9000億円)規模の新規株式公開(IPO)を土壇場で阻止した。それ以降、アリババが科された罰金は28億ドルと過去最高額に上る。

 アリババは現在、正式に罰金対象から外れている。中国規制当局は先月30日、3年間の「是正期間」が終了し、アリババは「良い結果」を収めたと述べた。残念ながらちょうどそれは、経済の低迷とし烈な競争が同社の足を引っ張るタイミングで起きた。アリババの4-6月期決算は売上高が前年同期比4%増にとどまり、主力の国内Eコマース事業は実際に減収となった。



 アリババは再び政府の厚遇を受けるようになったものの、中国版アマゾン・ドット・コムを探していた投資家は、またもや不意打ちを食らった。米国市場で絶好調だった、格安通販サイト「Temu(テム)」を傘下に持つPDDホールディングスの株価は、先週の4-6月期決算発表後に31%下落した。決算の数字そのものが市場を驚かせたわけではない。実際そこそこ良かった。営業利益は前年同期比2倍余りとなった。

 だが同社は今後について慎重な見通しを示した。競争や対外的な課題のために、売上高の伸びが「圧力を受けるのは避けがたい」とし、プラットフォーム改善に向けた投資という「短期的な犠牲を受け入れる」必要があるため、収益性は低下すると予想した。

 ここ数年間、多くの外国人投資家は中国株を避けていたが、PDDは例外だった。PDD株は先週急落するまでの2年間に3倍に値上がりしていた。同社は低価格戦略でアリババの市場シェアを奪い、米国でも米プロフットボールNFLの王者決定戦「スーパーボウル」に多額の広告費を投じるなど積極的に攻勢をかけてきた。

 不可解なほど暗い見通しは、競争が激化したせいかもしれないが、防御を固めている可能性もある。2021年に退社した創業者の黄崢(コリン・ファン)氏は、8月に一時、中国で最も裕福な人物となっていた。アリババの創業者、馬雲(ジャック・マー)氏が受けた苦難を考えると、PDDが浴びている脚光は居心地の悪いものだ。ここ数年の規制当局による取り締まりを考慮し、恐らくPDDは成功に伴う潜在的な問題に適応しているのかもしれない。

 どのように説明するにせよ、PDDが投下した爆弾は、回復に時間を要するだろう。アリババなど他の多くの中国ハイテク企業とは異なり、同社は配当や自社株買いによる株主への利益還元を行っていないため、なおさらそう言える。中国経済が嘆かわしいほどの低成長期に入ったのと同時につまずいたことは、株価の回復をさらに長引かせる可能性がある。

(The Wall Street Journal/Jacky Wong)

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