「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

NO.687 ★ 岸田退陣直前に中国が切った「日本産水産物の輸入再開」の   カード、自民党総裁選の勝者次第では撤回の可能性もー 東アジア「深層取材ノート」(第250回)

2024年09月27日 | 日記

JBpress  (近藤 大介:ジャーナリスト)

2024年9月26日

9月20日、記者会見で日本産水産物の輸入再開について発表する中国外務省の毛寧副報道局長(写真:共同通信社)

深圳で刺された日本人男児が亡くなった翌日、日中で交わされた「重要な合意」

 9月18日、中国広東省深圳で、日本人学校に通う10歳の日本人男児が、44歳の失業者の中国人男性に刃物で襲われ、翌日に死亡する事件が起こった。この問題は、いままさに佳境に入っている自民党総裁選でも、9人の候補者たちが揃って怒りを表明するなど、新たな日中問題の火種となっている。

 22日には柘植芳文外務副大臣が急遽、訪中して、翌日に孫衛東中国外交部副部長に抗議。国連総会が開かれているニューヨークでも、日本時間の24日に上川陽子外相が、中国の王毅外相と会談し、抗議した。

中国の王毅外相と会談した上川陽子外相。深圳市で起きた日本人男児刺殺事件について容疑者の厳正な処罰を申し入れたが、王毅氏から「日本側は事件を冷静かつ理性的に扱うべきであり、政治問題化し、拡大させることを避けるべきだ」などと釘を刺され、握手までしてきた(写真:新華社/共同通信イメージズ )

 この一週間というもの、まさに深圳の凶悪事件に、日中関係は振り回された感がある。だがそんな中で、20日に日中間で「重要な合意」がなされていた。

 中国は昨年8月24日から、福島第一原発のALPS処理水(トリチウムを除くすべての放射性物質を安全基準を満たすまで浄化した水)が、太平洋に放出され始めたことを理由に、日本産水産物の輸入を禁止してきた。その輸入を段階的に再開していくという合意だ。9月20日午後、日本外務省と中国外交部が、ほぼ同時に発表した。

 だがこの両国の発表文、内容が微妙に違うのである。合意した内容は一つのはずなので、おかしな話だ。

悪事を働いた日本を中国が叱ったかのような表現

 まず発表文のタイトルが、日本側は「日中間の共有された認識」となっている。一方の中国側は、「中日双方が福島第一原発の核汚染水の海洋排出問題で達した共通認識」。つまり日本側では、「何について」共有されたかが明記されていないが、中国側は「核汚染水の海洋排出問題」と明記している。「核汚染水」とは、「ALPS処理水」の中国側の呼称で、危険さを強調するためにこう呼んでいるものと思われる。

 次に「前文」は、日本側では以下の通りだ。

「日本と中国の関係当局は、福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の海洋放出に関し、建設的な態度をもって協議と対話を通じて問題を解決する方法を見いだしていくという首脳間の共通認識に基づき、累次にわたって意思疎通を継続し、以下の認識を共有するに至った」

 ところが、中国側ではこうなっている。

「2023年8月24日、日本政府は一方的に、福島第一原発の核汚染水の海洋排水を始動させた。中国は、最も重要な利益相関国の一つとして、この無責任なやり方に、決然と反対してきた。同時に、われわれは日本が国内外の懸念に真摯に応じ、自身の責任をしっかりと履行するよう促してきた。利益相関国が実質的に参加でき、独立した、有効な、長期的な国際的なモニタリングのシステムを、全面的に構築して配備し、合わせて中国の独立したサンプリングに同意するよう促してきた。

 両国の主管部門は先頃、福島第一原発の核汚染水の海洋排出問題について、継続して何度も折衝を重ね、以下の共通認識に達した」

 このように、「前文」からして、ずいぶんと異なっているのである。中国側の文章を読んでいると、さも日本側が「悪事」を行っていたので、中国側が譴責(けんせき)して改めさせたような体裁だ。

日本側では「関心」だが中国側では「懸念」

 実際に、日中間で合意した内容は、4項目である。以下、日中双方の発表文を、項目ごとに併記してみる(中国側発表文の日本語訳は近藤)。

日本側①「日本側は、ALPS処理水の海洋放出をIAEA安全基準及び国際法に整合的に実施し、人体や環境に負の影響を及ぼさないよう最大限努力するとともに、海洋の環境及び生態への影響に関する評価を継続的に行っていく旨を明確にした」

中国側①「日本は、国際法の義務を切実に履行することを明確にした。そして人体と環境に負の影響を与えないよう最大限の努力を尽くすこと、合わせて引き続き海洋環境及び海洋生態の影響評価を行っていくことを明確にした」

 ほぼ同じだが、若干の表現が異なっている。なおIAEAは、日本のALPS処理水に「安全のお墨付き」を与えた国際原子力機関である。

日本側②「日本側は、中国を含む全てのステークホルダー国の関心を踏まえ、IAEAの枠組みの下で海洋放出の重要な段階における長期的かつ国際的なモニタリングが拡充されることを歓迎するとともに、中国を含む全てのステークホルダー国がこれに有効に参加し、それら参加国による独立したサンプリングや分析機関間比較が実施されることを確保する」

中国側②「中国などの全ての利益相関国(ステークホルダー国)の懸念に基づいて、日本側はIAEAの枠組みの下で設立された、海洋排出の重要な段階における長期的かつ国際的なモニタリングがカバーすることを歓迎する。併せて、中国などの全ての利益相関国が有効に参画することを確保し、それら参与国の独立したサンプリングや分析機関間の比較が実施されることを確保する」

 日本側では「中国を含む」と、中国が「ワン・オブ・ゼム」のように書かれているが、中国側では「中国などの」と、中国が中心であるかのように書かれている。また、日本側では「ステークホルダー国の関心」となっているが、中国側では「ステークホルダー国の懸念」となっている。「関心」と「懸念」では大きく意味が異なる。

決して「輸入再開ありき」ではない中国

日本側③「双方は、生態環境及び人々の健康に対して責任ある態度をもって、科学的見地から建設的な対話を継続し、ALPS処理水の海洋放出に関する関心事項を適切に取り扱うことで一致した」

中国側③「双方は一致して合意した。生態環境と人々の生命健康に高度に責任を持つ態度をもって、科学に基づいて建設的な対話を継続し、海洋排出の懸念を適切に処理していく」

 日本側では、「責任ある態度」となっているが、中国側では「高度に責任を持つ態度」。また日本側では「ALPS処理水の海洋放出に関する関心事項」だが、中国側では「海洋排出の懸念」となっている。②に続き、「関心」と「懸念」のすり替えが行われている。

日本側④「中国側は、中国の関連法令及びWTOルールに基づき、日本産水産物に対して緊急的・予防的な一時停止措置を講じた旨を説明した。中国側は、IAEAの枠組みの下での長期的かつ国際的なモニタリングに有効に参加し、参加国による独立したサンプリング等のモニタリング活動を実施後、科学的証拠に基づき、当該措置の調整に着手し、基準に合致した日本産水産物の輸入を着実に回復させる」

中国側④「中国側は、中国の関連する法令とWTOの規定に基づき、中国が日本を原産地とする水産物に対して緊急予防的に臨時措置を取ってきたことを示した。中国側は、IAEAの枠組みの下での長期的、国際的な独立したサンプリングなどのモニタリング活動に、有効に参与していく。そしてその活動を実施した後、科学的根拠に基づいて関連措置の調整に着手し、基準に合致した日本産水産物の輸入を徐々に回復させていく」

 WTOは、日中両国が加盟している世界貿易機関である。この部分は日中の表記で、決定的に異なっている。日本側では「日本産水産物の輸入を着実に回復させる」とあるが、中国側では「日本産水産物の輸入を徐々に回復させていく」となっているのだ。「徐々に」の中国語の原文は「逐步」(ジューブ)だが、「段階的に、一歩一歩」という意味であって、「着実に」とは絶対に訳せない。

 さらに言えば、日本側の文章は、一文を長くして、さもすぐにでも輸入再開が実現するかのような文章効果を与えている。だが中国側では、あくまでも第一段階は、長期的かつ国際的な(複雑な)モニタリング活動である。それが終わって、第二段階として分析結果を出す。その後に、ようやく「徐々に回復させていく」と述べているのだ。

 つまり、非常に先の長い話なのだ。私は一応、日本政府関係者にも確認してみたが、こう答えた。

「まだまだこれから長期戦であり、ちゃぶ台返しをいつ中国がやってくるか知れない。まったく楽観視していない」

 ではなぜ、中国側は突然、日本に「光明」を与えるかのようなカードを切ってきたのか? 

深圳の事件とは無関係

 日本の一部メディアは、「18日に深圳で冒頭述べた痛ましい事件が起こったので、その話題をそらす目的で20日に日本に譲歩を見せた」と解説していた。

 私は、この見方はまったく違うと思う。なぜなら、水産物輸入再開の案件は、以前から日中間で詰めた話し合いを何度も行ってきたからだ。20日の中国外交部の会見でも、日本人記者に同じことを聞かれ、毛寧報道官は明確に否定した。

 実のところ、私のような長年の「中国ウォッチャー」から見れば、今回の中国側の行動は、「異例」である。

通常なら中国は、内閣支持率が2割を切った日本の政権を、相手にしなくなる。なぜなら、平均で約半年で崩壊するからだ。それよりも、日本の新たな政権の誕生を待って、新政権に「花を持たせる」ことで、親中政権にしようとする。

 今回は特に、8月14日に岸田文雄首相が「退陣宣言」をしており、9月27日には事実上の新首相が決まる。そんな「政権末期の末期」に、中国が「日本カード」を切るのは、極めて異例なのだ。一度だけ、2010年5月末、「鳩山由紀夫政権の末期の末期」に温家宝首相が来日したことがあったが、その時は、温首相の帰国直後に鳩山首相が辞めるとは、中国側は夢にも思っていなかった。

 中国外交が「異例の措置」を取る時には、必ず深謀遠慮がある。私は今回、主に2つの目的があったと見ている。

総裁選に影響を与えようとの思惑

 一つは、11月5日のアメリカ大統領選挙の前に、アメリカの同盟国である日本を、少しでも中国側に引きつけたいという思惑だ。もしもドナルド・トランプ前大統領が勝利して、中国を悪辣に非難する「勝利宣言」でも述べたなら、日本はそれに追随することになる。そうなると、「日本産水産物の輸入再開カード」は効かなくなる。

 もう一つは、いままさに熾烈な選挙戦が展開されている自民党総裁選に、影響を与えようという思惑だ。中国は特に、8月15日に靖国神社を参拝した(中国から見た)「A級戦犯3人組」こと、高市早苗・小泉進次郎・小林鷹之の各候補に、絶対に勝利してほしくない。そのため、日本に「微笑外交」を見せることで、他の6候補に「追い風」を与えようとしたのだ。

今年8月15日の終戦記念日に靖国人者を参拝した高市早苗氏。小林鷹之氏、小泉進次郎氏も同日参拝した(写真:Rodrigo Reyes Marin/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)

 だが、そうした思惑も、深圳の児童刺殺事件によって、雲散霧消してしまった。「日本を中国に引きつける」どころか、「中国から一番離れようとしている」高市候補に、飛躍する材料を与えてしまった。

 もしも高市候補が勝利したなら、中国は何かと難癖をつけて、「日本産水産物の輸入再開」の合意を引っ込めるかもしれない。

近藤 大介

ジャーナリスト。東京大学卒、国際情報学修士。中国、朝鮮半島を中心に東アジアでの豊富な取材経験を持つ。近著に『進撃の「ガチ中華」-中国を超えた?激ウマ中華料理店・探訪記』(講談社)『ふしぎな中国』(講談社現代新書)『未来の中国年表ー超高齢大国でこれから起こること』(講談社現代新書)『二〇二五年、日中企業格差ー日本は中国の下請けになるか?』(PHP新書)『習近平と米中衝突―「中華帝国」2021年の野望 』(NHK出版新書)『ファーウェイと米中5G戦争』(講談社+α新書)『中国人は日本の何に魅かれているのか』(秀和システム)『アジア燃ゆ』(MdN新書)など。

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No.686 ★ 中国の開き直りに唖然…「日本人男児死亡事件」のごまかしを  許さない、たった一つの“切り札”とは

2024年09月27日 | 日記

DIAMOND online (木俣正剛:元週刊文春・月刊文藝春秋編集長)

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刺殺された男児が通っていた日本人学校の校門で献花をする人々 Photo:VCG/アフロ

男児死亡事件で言葉を濁す中国 日本はまた適当にあしらわれるのか?

 9月18日、中国の深セン市で日本人の男児が殺害されました。この事件は、緊張気味が続く日中間の感情に「さざ波」を起こしています。 24日、国連総会で両国の外相が会談を持ちましたが、日本の上川陽子外相の詳細な情報公開の要求に対して、王毅外相は言葉を濁すばかりでした。

 私は今回も、日本政府がいつものように適当に中国にあしらわれて終わるのではないかと心配しています。しかし、この事件を「さざ波」で終わらせてはならず、日本政府は断固たる態度を示すべきではないかと思います。中国駐在が長い外交官などに取材してみました。

 彼らが共通して語るのは、この事件の背景に中国政府の世界情勢に対する間違った認識があるということです。中国政府はこの事件で、非常に困った立場に置かれていると彼らは言います。

(1)被害者は10歳の児童であり、(2)殺害した中国人は44歳の分別ある大人です。(3)しかも、殺害された児童は父親が日本人、母親が中国人の日本国籍です。10歳の子どもに非がある可能性はゼロで、44歳の中国人に非があることは明らですが、事件発生後10日もたっているのに中国政府が「偶発的な事件である」としか発表できないのは、児童やその両親に対する個人的な恨みが犯人の動機ではないと言っているのと同じです。

 個人的な恨みならすぐに発表し、中国政府として哀悼の意を表すればいいわけで、それができないのは、殺害犯が反日ヘイト的な理由で犯行を行ったことを自白しているからではないかと推測されます。

 以下は外務省幹部の話です。

「もし、反日を理由に犯罪を行ったとすると、中国は最近、国内に対しては反日を煽動しているとしか思えない言動が続き、事件も多々起こっていただけに、今さら『反日的な行動』に対して厳しいことは言えません。かといって、『反日』を理由に44歳の大人が児童相手にテロを仕組んだと対外的に言えば、国際世論は中国に対して極めて厳しい反応を示すことになります」

 しかし、上川外務大臣は「すでに14日に中国外務省に対し、日本人学校の安全対策を申し入れていたにもかかわらず、今回の事件が起きてしまったことを、大変残念に思っている」と事件直後に語っていました。言葉だけの抗議では中国に「偶発的事件」という言い分で逃げ切られてしまう可能性は十分にあります。

意外と触れられていない 中国の態度が国際条約違反である理由

 また、外務省幹部はこんな提案をしています。

「この事件では、はっきり『国際条約違反』 であると中国を非難すべきだと考えます。日本の政治家やメディアは触れていませんが、日本と中国には犯罪捜査の協力体制について、基本的な条約が2007年に結ばれています」

 その条約名は「刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国との間の条約」(日・中刑事共助条約)。両国外相の名前が署名された、正式な条約です。条約文は長いので要約すると、次の3点が柱となっています。

(1)捜査協力、事件の捜査において、日本と協力し、必要な情報や証拠を提供する。

(2)訴追協力、犯人の訴追に関して、日本と連携し、適切な法的手続きを進める。

(3)情報交換、事件に関する情報を迅速かつ正確に日本に提供する。

 平成以降、日本で中国人による犯罪が多発し、日本人の対中感情が厳しくなっていることを背景に、この条約は結ばれました。今回の事件では、まず(3)の情報交換がまったく機能していません。事件に関する情報が迅速かつ正確に日本側に提供されていないのです。日本側はこの条約を楯に、「国際条約違反」であることを明確に主張し、期限を切って詳細かつ正確な情報を日本政府に伝えるように申し入れるべきです。

 それが反日による犯行であれば、(1)捜査協力条項に準じて「日本の警察も犯人の取り調べをさせよ」と要求すべきですし、(2)訴追協力条項で、量刑の判断についても日本人が納得できるよう公開すべきだと主張してもいいでしょう。

 私もこの外務省幹部の提案に賛成です。この条約に罰則はありませんが、国際条約違反なのだから、沈黙せず、宣伝すべきなのです。日本は国連やG7など、さまざまな国際機関を通じて中国の国際法違反を宣伝し、国内でヘイトを連発して日本人へのテロ行為を生んでいることを非難すべきです。このままでは、中国人の外国人に対するテロが日本人だけにとどまらない可能性を主張すべきです。それで各国の中国との経済協力や、海外企業の中国への投資・進出において懐疑的な雰囲気を醸成させることができれば、中国をけん制することができます。

 また、国際条約である以上、違反した場合には国際司法裁判所に訴えることもできます。単なる情緒的なコメントではなく、二重三重に、中国に対して法に準拠した批判的な行動を起こすことを予告すれば、彼らは政府内でも真摯な対応策を考えざるをえなくなるはずです。

近年の中国人による日本攻撃は看過できないものでした。6月には靖国神社に中国人が放尿した動画が物議を醸し、7月には同じく落書きが発見されました。中国国内では6月に蘇州で日本人親子を標的にした犯人が殺害を企て、中国人女性によって阻止されたものの、女性は死亡。8月には着物でコスプレをした中国人女性が逮捕された事件も起こりました。同じく8月には、北東部・吉林省の公園でアメリカ人の大学講師4人が刃物で刺され、負傷する事件もありました。そして今回の事件を受け、SNSには反日的な過激コメントが見られます(一部は削除と中国は主張)。

 さらに国家単位で見ると、日米両政府がその時々に抗議しているにもかかわらず、8月には中国偵察機による領空侵犯、9月には空母が接続水域に出没するなど、国として反日ムードを盛り上げようとしていることは明らかです。

今の中国がやっていることはかつての日本と同じではないか

 私は反中主義者ではありません。しかし、あえて言わせてもらうと、今中国がやっていることは、過去の大日本帝国がやったことと同じではないでしょうか。かつて白人国家から受けた屈辱を、言論ではなく武力で仕返ししようとする心情が根底にあるように見えます。それが結局は夜郎自大な行動となって失敗するという経験を、同じアジア人として伝えるスタンスで中国に接すべきだと考えます。

 作家の司馬遼太郎氏は、あの戦争について「日本の知識人に軍事的教養が一切なかったことが最大の敗因だ」と述べています。「世界最強の海軍、世界一の精神力を持った兵士」という宣伝に騙され、中国大陸のみならず、アジア全体を白人から解放できるという誤った軍事知識が世論を暴走させ、しまいには軍部自身も引っ込みがつかなくなりました。

 冷静に考えれば世界相手に戦える戦力も国力もなかったのに、国民の意識だけ大国となり、あとから考えるとまったく客観的な自己認識に欠けた行動をとりました。皮肉なことに、今の中国も同じように思えるのです。

 確かに現在、中国は歴史上初めて、軍事大国との地続きの紛争を抱えていません。インド、ロシア、トルコ、イラン、中央アジア、モンゴル、ウイグル、チベット、パキスタンなど、どの時代においてもどこかの国と紛争を抱えていたのに、今は太平洋側にしか紛争地域がないのです。軍隊という組織は仮想敵国を作らないと予算がもらえないので、中国軍はフィリピンや台湾、日本をライバル視し始めました。しかし、少し軍事に詳しければ、中国軍は日本どころか台湾にも上陸作戦を行う能力がないことは自明です。

軍隊が戦争をするためには、海を渡って外国に重装備の部隊を送る必要があります。それには揚陸強襲艦が必要です。空母のように飛行甲板を持ち、大砲などの重武装を大型ヘリで運ぶとともに、船首部が大きく開口し、そこから戦車や装甲車が武装した歩兵を載せて浜辺にそのまま乗り上げられる、上陸用舟艇を多数格納できるような船がなければ、上陸作戦はできません。当然、その間に空軍と海軍による空海戦が行われます。つまり、港の埠頭に悠長に船を横付けして、何トンもある戦車をクレーンで吊り下げて上陸することは不可能なのです。

 しかし、中国が保有している揚陸強襲艦はたった一隻(小型を除く)。その船で運べる兵隊は1600人にすぎません。この事実一つをとっても、中国の軍事力では台湾も攻められないことを知るべきです。ここに至るまで、やりたい放題の中国政府の反日政策が今回の問題を引き起こしたことを明らかにし、外国人の駐在は危険であるというプロパガンダを、日本は行ってもいいはずです。

 中国はや反日政策により、土地・住宅政策の大失敗と経済的不況の不満を日本や外国資本への批判でごまかそうとしてきました。しかし、日本のプロパガンダが浸透すれば、外国資本は中国への進出に慎重になるでしょう。ただでさえ現地では、法律や条約が順守されづらいことが定説になっています。

中国の「反日」扇動はいずれ自らの首を絞める

 それにしても、この程度の国際条約も守れず、「このような案件はいかなる国でも発生する」と堂々と居直る中国には、疑問を感じざるを得ません。国内ニュースでは、地元メディアだけが「通行人の未成年(苗字のみ、年齢には言及せず)が刃物で負傷させられた。被疑者を拘束した」と、一般国民にはまったく事実関係がわからない報道をしています。そして日本政府に対しては、「犯人は定職につかず、公共の施設を破壊した前歴が2回ある」とだけ発表しているのです。こんなことを許していいのでしょうか。

 このような状況では、今後も中国で日本人攻撃が止むことはないでしょう。中国政府による外国人へのヘイト煽動は、世界各国の反発を受け、不況をさらに長引かせ、格差を広げ、テロの横行を許すことになりかねないということを習近平主席に自覚させ、国の方針を改めさせるよう努力すべきです。

 おそらく中国は、この事件をうやむやにし、日本の海洋汚染水問題などを持ち出し、輸入許可を遅らせるといった圧力によって乗り切ろうとするでしょう。その場合は、日本も国内に大量にいる中国人犯罪者への追及や逮捕を厳しく行うなどして、対抗すべきでしょう。徹底的に対抗することが中国のためでもあることを、国全体で主張していくべきです。

 かつて日本も中国も韓国も、欧米列強の侵略に苦しんでいた国です。そのくびきから逃れた今こそ、三国が連携すれば「アジアの世紀」を実現できるはずなのに、お互いにいつまでもいがみ合っている現状は、残念としか言いようがありません。

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No.685 ★ 香港 市民の経済満足度が大幅悪化 2年半で最低、生活への不満も

2024年09月27日 | 日記

NNA ASIA

2024年9月26日

香港市民の経済満足度が大幅に低下している。最新の世論調査では過去2年半で最低の水準を記録し、域内消費の低迷などに伴い香港経済に対する市民の心理状態が悪化していることが浮き彫りになった。市民生活への不満も高まっている。政府トップの李家超(ジョン・リー)行政長官は来月16日に施政報告(施政方針演説に相当)を行う予定で、ここで強力な景気対策を打ち出せるかどうかが注目されそうだ。

世論調査機関の香港民意研究所(HKPORI)が24日発表した調査結果で明らかになった。調査は2~4日に18歳以上の市民を対象に電話で実施し、673人から回答を得た。

社会状況に対する質問では、香港の政治、民生、経済のそれぞれについて現状に満足か不満かを聞いた。このうち経済に関しては、満足との回答が全体の19%だったのに対し、不満とした回答の割合は67%に上り、満足から不満を引いた満足度はマイナス48%だった。

7月の前回調査に比べると、満足が5ポイント減って不満は6ポイント増え、満足度は11ポイント低下した。不満を訴えた市民の割合は74%を記録した2022年3月以来の高さで、満足度はマイナス50%だった22年4月以来の低水準となった。

民生については、満足が28%、不満が55%で、満足度はマイナス27%だった。前回から不満は横ばいだったものの満足が4ポイント減り、満足度はマイナス幅が4ポイント拡大した。22年5月(マイナス32%)以来の低い満足度となっている。

一方、政治への満足度はやや改善した。満足との回答は前回を1ポイント下回る39%だったが、不満との回答が4ポイント減って42%に低下したため、満足度は前回よりもマイナス幅を3ポイント縮小してマイナス3%だった。

議員「小売業の救済を」

同調査では、満足または不満との回答に対して、その理由にまでは踏み込んでいない。ただ背景には、市民が隣接する中国広東省深センなどへ出かけて消費する「北上消費」の常態化や、域外労働者の導入に伴い一部職種で雇用不安が生じていることなどがあるとみられる。

立法会(議会)議員の田北辰(マイケル・ティエン)氏は24日、フェイスブックへの投稿で「小売業が直面している苦境は、中国への返還(1997年)以降で最大と言える」と言及。小売業の景気は香港全体のムードに直接影響するとして、消費低迷によって各地で増えている空き店舗を減らすことが消費者心理を改善させると訴えた。

田氏は「政府が速やかに救済の手を差し伸べる必要がある」と強調。具体的な対策として、店舗物件の固定資産利用税(レーツ)を1年間免除することなどを提案した。

パンダの経済効果に期待

李行政長官は就任後3回目となる今年の施政報告で、経済対策と市民生活の向上に焦点を当てる方針を表明している。今回の調査ではそのどちらに対しても、市民の不満が新型コロナウイルス禍後で最高の水準まで高まっていることが示された形になる。

李氏は24日の定例会見で施政報告に関する発言は行わなかった一方、ジャイアントパンダが景気回復の起爆剤となることに期待感を示した。飼育施設がある香港島南部の香港海洋公園(オーシャンパーク)では8月に双子のパンダが誕生しており、きょう26日には中国中央政府から香港に贈られたつがいのパンダも四川省から到着し、香港のパンダは6頭となる。

李氏は、新たに贈られたパンダの一般公開が12月中旬ごろになるとの見通しを示した上で、12月には香港郵政がパンダの記念切手や記念商品を発売すると表明。このほか、政府文化スポーツ・観光局と政府観光局(HKTB)、海洋公園が各界と協力し「パンダブームを利用して商機を生み出す」と述べた。飲食業や小売業などがパンダ関連のさまざまな商品、イベントを企画し、消費を促進していくことを奨励するとしている。

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