昨年11月、同志社女子大学の同窓会で
岡上多寿子氏の講演を聞く機会がありました。
その時、会場で購入した詩画集のご紹介です。
~認知症者の母とともに~
「いっぱいごめん いっぱいありがと」
( 絵・文 岡上多寿子 )
「先の見えない不安や社会と断絶したような孤独感、
叱責後の無気力と自責の念、
空しさと情けなさ、
複雑な感情が渦巻いたとしても逃避できない現実。
去来する心情を詩画にしてみました。
大切な母だから別れの日まで一緒にいた。
でも、途中大切と思わないこともあったことなどを・・・」
( 「はじめに」より )
「許せないのは
母さんじゃない
母さんを 笑った 人」
「自分のことも
解からなくなり
変なことばかり 言う母を
優しく 応える日
嫌悪に 打ちのめされる 日」
「母が母でない 日常だとしても
生きていてくれる ということは
心のまん中へ
力を 注ぎつづけてくれる
そういうこと なんです」
☆★=☆★
「なんでこのくらいの事ができないの」
「生家のことをくどくどと言い始めた」
「私には娘がおりましたが、とうに死にました」
ある日、岡上多寿子氏のお母様に・・・
自分を育て愛してくれたお母様に・・・
認知症の症状が出始めました。
その日から、
岡上氏にとって、「介護」の闘いが始まりました。
逃避できない現実。
娘のことさえわからなくなっていく母親。
母が母でなくなっていくことへの戸惑い。
断ち切ることのできない親娘の深い愛情。
介護を通しての葛藤。
そして、別れ・・・。
この詩画集には、
複雑な感情で渦巻く10年間の壮絶な日々の出来事が
ぬくもりあふれる絵と文で表現してあります。
昨年秋の講演では、
10年間のお母様との生活を
時にはユーモラスに、時には情緒的に、
心の動きのままに話してくださいました。
お母様への感謝の気持ち、
実の母娘ならではの後悔の念、
私にはすごく理解できました。
涙ぐんだり、笑ったり、感動の1時間半でした。
この本を開くたびに、
あの同窓会のひと時を思い出し、
また、涙が出てきます。
とても優しく、明るく、
そして、気遣いにあふれ、
そんな岡上氏に見守られて
お母様はお幸せな生涯だったと思います。
私たちにとっても「介護」は他人事ではありません。
今のうちから、真剣に考えておかねば・・・と深く思います。
☆★=☆★
≪岡上多寿子(おかうえたづこ)氏プロフィール≫
1949年 広島県山県郡安芸太田町に生まれる
1969年 広告代理店勤務
1976年 レタリングデザイン始める
1995年 デザイン陶芸 「土の子」発足
2001年 土の子窯山田屋設立