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民間戦士:イラクにおける軍事請負人

2005-06-23 12:15:17 | ニュース@海外
Democracy Now! 2005年6月21日報道より。

 「イラク侵略の開始以来2年半がたつ。この間、軍はここ数ヶ月、新兵の獲得目標を達成できていない。同時に軍は、業務をますます外部に委託するようになっている。後方支援産業の大手であるハリバートンから数多の軍事セキュリティー会社にいたるまで、今やイラクでは、軍事請負産業、連合軍をはるかに上回る第二の勢力となっている。

 この度報道される”Private Warriors(民間戦士)”は、イラクで活動する企業――ハリバートン子会社のケロッグ・ブラウン&ルート社や南アフリカの民間セキュリティー会社エリニーズ社(Erinys)など――の裏側に、テレビ番組としてはじめて迫ったものである。こうした企業の説明義務や民間への依頼度を高めるペンタゴンに疑問を投げかけている。

以下、"Private Warriors"のプロデューサー、マーチン・スミスと軍事活動民間委託についての著作(Corporate Warriors)があるブルッキングス研究所のピーター・シンガーに聞いた。

エイミー・グッドマン:なぜ民間軍事産業に注目したのですか?

マーチン・スミス:これは一種、口に出せない話だったので。3回イラクに足を運びましたが、その間、民間に委託される業務が増えていく様子を目にして来ました。供給ラインの運営から、基地の建設・管理、延いては米軍の防衛にいたるまでの業務です。ですから、これは明らかに報道すべき問題でした。それに、ピーター・シンガー氏の本以外でも、テレビでもほとんど報道されていません。なのに、イラクにいる記者なら全員こうした基地に滞在します。こうした民間のセキュリティー会社を目にしているのです。記者たちはこうした会社の人間を雇うのですから。ですから、私たちにとってはあまりにも明らかなニュースでした。それで、PBSの「フロントライン」でこれを取り上げるべきだ、と提起しました。

グッドマン:ピーター・シンガーさんに聞きますが、こうした民間請負会社を調査なさってきましたが、イラクにおいて、こうした民間会社が軍とどう違い、どこが同じなのでしょう?

ピーター・シンガー:つまるところ、これは、兵士ではなく従業員の話しであることに留意する必要があります。こうした人たちは、軍事活動はしているのに、指揮系統下にないということです。就任の宣誓もしませんから、まったく別の体系に属しているわけです。もうひとつは、彼らが属する組織は軍とは違う動機で動いているということです。例えば、海兵隊の部隊に利益を上げる必要はありません。いつ、どこに配備されるか自由裁量もない。一方、民間企業は、「そうなると、こちらが有効になる。つまり、海兵隊ができない仕事をこちらがやれるということだ」と主張する。ある意味正しい指摘ですが、裏を返すなら、こうした会社がもっとも公共といえる役割を負うということです。なのに、彼らは通常の統制体系下に置かれていない。これは、問題にすべきことです。現在、事実上無法地帯となっているイラクのような場所を議論しているなら特にそうです。

グッドマン:スミスさん。誰が銃を携帯しているのですか?

スミス:イラクにいる民間セキュリティー会社の護衛は6千から2万人までかなり幅があって、陸軍技術部隊のジェネラル・ボスティックから、イラク軍訓練の責任者であるパトリアス将軍、アメリカの大使や国務省関係者にいたるまでの人物の護衛にあたっています。こうした人たちが銃を携帯しています。おそらく60ぐらいの会社ですが、多くが以前からあった会社です。が、イラク戦争が始まったときに立ち上がった会社もたくさんあります。バグダッド・バブルとでもいえるような状況が生まれて、多くの会社が我先にと参入しました。金はたくさん用意されていましたから。武装して護衛を始めたわけです。

グッドマン:シンガーさん、彼らはいつ戦闘に関わるのですか?こうした民間請負人にはどのような戦闘規則が適用されるのでしょう?

シンガー:その前に一歩さがって、戦闘活動の範囲を超えた彼らの全体像を見ることが大事だと思います。軍でいえば実際に戦闘にたずさわる兵士がほんの一部であるのと同じで、民間軍事産業もこれよりずっと規模が大きい。ハリバートンのように軍事支援から供給まですべてを請け負う会社もありますし、実際に訓練を提供する会社もあります。米軍だけでなく新規のイラク軍にもです。そして、戦術戦闘の役割を負う会社があります。彼らの仕事は、トップの大使や指導者といったVIPの護衛から、いま明らかにイラクで最高に危険な任務のひとつである護送まで及びます。そして、政府施設、建設現場、イラクの米軍基地といった主要な施設の護衛があります。

 ですから、今起こっているのは、こうした会社が、やめてしまえば戦争の作戦が崩れてしまうような仕事をやっているということです。それほど重要な役割を負っている、つまり、今回の戦争でもっとも問題の分野に関わっている、ということです。ハリバートンの過剰請求にせよ、アブ・グレイブでの拷問疑惑にせよです。実際に請負人が活動しているわけで、今後イラク戦争の歴史を書くのであれば、民間の軍事産業のことを書かなければ成立しません。戦争というものが完全に様変わりしています。

グッドマン:軍事請負会社とアブ・グレイブでの拷問についてはどうですか?

シンガー:アブ・グレイブでの事件で特に驚いたことのひとつは、民間会社の人間が大量にいたことです。米軍によると、拷問がおこなわれていた期間、通訳は全員、尋問者は半分が民間企業の人間でした。通訳は、タイタン(Titan)という会社、尋問者はカーキ(Khaki)という会社。また米陸軍の報告によれば、拷問のケースの36%で、民間会社の尋問者が関与していました。これがなぜ問題かというと、二つのレベルがあるからです。まず、陸軍調査の結果、尋問をした請負人の3分の1もが、尋問者としての適切な軍の訓練を受けていませんでした。

 それに加えて、軍は拷問に関与した人間を具体的に6人確認していますが、このうち誰一人として、求刑や刑罰はもちろんのこと、告訴さえされていません。ですから、拷問に関与したため当然軍事裁判にかけられた軍の人間とは明らかに対応が違っている。法律の穴があって、この法の空白地帯に民間請負人がいるということです。この点について軍の弁護士が興味深い点を指摘していました。問題は現在請負人たちが、グアンタナモの抑留者がいるのと同じ法の空白地帯、同じ法の地獄にいるということだ、と。本質的に、イラクでは、請負人の法的身分を規定する法がない、法の下どのように扱うべきかというものがありません。

グッドマン:スミスさん、エリューニエス(Erinys)のような会社の実態は?どこで雇われているのですか?

スミス:非常に大きな問題のひとつは、戦争を民営化すると、公共部門の範疇から外れてしまい、透明性がなくなります。誰がどんな業務をしているのか時に分からなくなる。次から次へと下請けされて、多くの層ができる。去年ファルージャでは、ブラックウォーター社の4人が通りを引きずりまわされ、うち2人が橋から吊り下げられるという事件がありました。エリューニエス社の場合、南アフリカの会社ということで知られ、報道されてきています。が、番組放送前の最終チェックをした際、会社側は、自分たちは南アの会社ではないと強調しました。同社の共同創設者と報道されている人に、アパルトヘイト時代の政府関係者であったショーン・クラーリーという人物がいます。会社側は彼は顧問だと言っていましたが。現にこの会社は、英国領バージン諸島の法人です。関係者はほとんど南アの人たちですが、運営を担当する役員は特別部隊、イギリスの特別部隊SAS(英国陸軍特殊空挺部隊)の人間です。ですから、私たちは、同社をイギリスの会社として報道します。とはいえ、非常につかみ所がなくて、これがこの問題のひとつです。非常にあいまいな分野です。

グッドマン:ブラックウォーター社の件ですが、このドキュメンタリーでは、犠牲者の遺族が起こしている裁判も取り上げていますね。

スミス:この裁判を取り上げたのは、民間請負人の存在が、去年の3月31日にファルージャで起こった事件で、一般人の視野に真の意味で入ってきたケースだったからです。まず、この事件一本を掘り下げて、彼らの雇用主を探しました。請負、下請けとどんどん続いていますので。彼ら4人は、クウェートの会社であるブラックウォーターに雇われていました。そして、この会社は別のクウェートの会社と契約を結んでいました。このクウェートの会社は今度はESSというキプロスの会社に雇われていました。ESSは自分たちの雇用主を教えるのは拒否しました。彼らの契約書をみると、かなり怪しい形でケロッグ・ブラウン&ルート社(KBR)の名前が出てきます。最終的には、ESSの契約先を突き止めることはできませんでした。この4人が物資供給をするはずだった第82空挺部隊は、KBRとは契約を結んでいないと言っていますし、KBRの方も関与していない、といっています。ここでもまた透明性の欠如、説明義務の欠如、法的責任の欠如にぶち当たります。ですから遺族は、自分たちの息子があの日誰に雇われていたかさえ知らない状態に置かれています。

グッドマン:遺族は何を主張していますか? 裁判で何を要求していますか?

スミス:不法行為による死亡でブラックウォーターを告訴しています。契約書にははっきりと具体
的な安全保障要件が書いてあったのに、遺族によればそれらが守られなかった、という裁判です。ですから、ブラックウォーター社が、知っていながら、故意に、従業員を適切な防衛対策なしで危険地域に送り込んだとして告訴しています。

グッドマン:2003年10月、下院のワクスマン議員とディングル議員が、占領イラクでのガソリン輸送でKBR社が高値を請求していることについての調査を要求しました。この会社は、クウェートでガソリンを1ガロン2.20ドルで買っていたのですが、同じとき他の会社はトルコで1.18ドルで購入していました。それでKBR社は政府にガロンあたり2.27ドルを請求しました。国防総省の会計監査は、このガソリン過剰請求額は6100万ドルにもなるとしています。ハリバートンは理由として、イラクの危険地域を通らなくて済むようにクウェートで買わなければならなかったと主張しています。お金の問題はどうなんでしょう?

スミス:この6100万ドルは1億800万ドルに訂正されていると思います。ハリバートンつまり子会社のKBRはこの契約を切られましたから、KBRの働きが平均以下で過剰請求をしたという合意が双方であったと言っていいと思います。

グッドマン:それでもハリバートンは報酬を得ていますよね。最新のニュースではハリバートンが300万ドルの契約を交わしています。あの問題のグアンタナモ海軍拘留所に新しく常設の刑務所を建てるという事業です。

スミス:そもそもグアンタナモの最初の刑務所もKBRがつくっています。KBRは、軍の要求と軍が必要としているものに圧倒されていると思います。例えばバルカンの時は、だいたいのところ、かなりうまく事業をこなしました。しかし、イラクの場合、これほど長期にわたって、銃弾が飛び交うなかで、補給ラインを管理したり、これほど大規模の基地をつくるようになるとは誰も予測しませんでした。KBR側のごまかしもありますが、それ以上に、事業の大きさに圧倒されていると言えます。お金の流れを把握できる会計士が足りないのです。自分たちの手に負えないほどになっているということです。

グッドマン:このあいだ飛行機に乗ったとき、隣に兵士が座ったのですが、イラクから帰郷するところでした。彼の話では、こうした請負会社と隣り合わせで仕事をすることや、契約会社が兵士の週給にして3倍もの稼ぎをあげていることに兵士たちが憤慨している、ということでした。シンガーさんこの点はどうでしょう?もうひとつ、請負会社の従業員は銃を携帯しても良いことになっていますが、イラクでの死傷者としては数えられていませんね。
シンガー:これはとても大事な質問です。2,3週間前にこんなことがありました。ザパタ(Zapata)というノースカロライナ州のシャーロッテに本社がある会社の従業員が、爆発物の解体作業をしていました。彼らは、ファルージャの方に移動している護送車をつけていたのですが、海兵隊員によると、この護衛が民間人と米兵の両方にむけて銃撃をしていたと、言うのです。それで米兵はその民間護衛車を停止して、乗員を拘留しました。ここで、護衛車の人間は、「違う護衛だ。俺じゃない」と主張しました。この拘留のあいだ何が起こったかというと、海兵隊員たちは、基本的にこの民間人たちに罵声を浴びせ、怒鳴りつけ、「ざまあみろ」といったようなことを言っていた。金をめぐって緊張が表面化している象徴的な例です。

 一番の教訓は、いろいろな部隊の統合は大変難しい、ということです。海兵隊と陸軍を一緒にさせるのは骨が折れる。アメリカ人とイタリア人とイギリス人が一緒にやる多国籍軍も大変です。なのに、今度は、民間が入ってきたことで軋轢が強まっている。しかも一社だけでなく、ばらばらの会社が60も来ていて、兵士よりたくさん稼いでいる、ということになれば、当然緊張が生まれます。そうでなくても大変な統合任務が、まずい管理の下で、ますます大変になっている。

 もうひとつ問題なのは、単純に会計報告がないということです。説明義務(accountability)だけでなく会計(accounting)もされていない。ですから、例えば、どれぐらいの請負会社がいるかすら正確に分からない。簡単に言いますと、現在ペンタゴンには、状況を把握する能力はありません。これは、何人が殺され負傷しているかも分からない、ということを意味します。こうした会社が就いているのは公共任務ではないからです。この点を追及してみたところ、少なくとも報道から分かる範囲では、イラクか出身地のどちらかで死んだこうした請負人の数は200人以上で、800人以上が負傷しています。この数値を全体像に照らしてみると、死傷者という点では、一米陸軍師団の死傷者より多い。ですから、こうした民間企業の人間は貢献しているが、その規模は公有(public domain)の外にあって、国民は実態を把握していません。

グッドマン:スミスさん、ドキュメンタリーは今夜放映されますが、イラクに4回行かれて調査するなかで何に一番驚きましたか?

スミス:KBR社がイラクでつくっている基地の規模ですね。私たちは、バグダッドの北40マイルにあるキャンプ・アナコンダに行きました。一部でKBR要塞と呼ばれているところです。呆然としました。ブレマーの壁と呼ばれている15フィートの防爆壁があって、その向こうには見渡す限りトレーラーが続いている。巨大な食堂、プール、娯楽室がいくつもあって、テコンドーの教室もある。状況は以前とははるかに違っていて、まったくもって呆然とします。KRB社に、こうした施設の費用を聞こうとしたのですが、「そういう種類の費用は記録しない。分からない」という応えでした。そこで今度は軍に聞いたら、費用はしっかり把握していて、KBR側と毎週討議している、という応えが返ってきました。ここでも、説明義務、透明性の欠如で、イラク戦争の全期間にわたるアメリカの疫病になっています。ここが核心だと思うのですが、戦争を民営化して、彼らが言うところの恒久の大規模基地をつくるなら、民営化の世界で実際何が起こっているかは国民にはわからなくなるという事実と向き合わなくてはならない、ということです。

グッドマン:最後にシンガーさんに聞きますが、特にディック・チェイニーとハリバートンとの関係、そして戦争の民営化が推し進められていることの全体についてはどうですか?

シンガー:ハリバートンがイラク関連事業で得ている収入のことでしたら、これは130億ドル分の質問ですね。私自身は、ハリバートンの利益のためにこの戦争が始められたという陰謀説は支持していません。この会社はすでに順調にやっていましたから。この傾向は、最初のブッシュ政権で始まっていて、クリントンに引き継がれ、息子のブッシュで、特に9・11とイラクでさらに広がったという点を念頭に置く必要があります。この点でスミスさんと同じ意見なのですが、端的に言って、この産業が存在しているのに、我々は賢い顧客でもなければ、支払いに見合った仕事もされていない。しかしまた、政府の役割という点でも賢く規制をかけていない。つまり、新しい産業ができたとき、誰がそこでの事業を許されるのか、こうした会社が誰のためへの業務を許されるのか、過ちが起こったときどうすればいいのか、といった法体系を作るということです。両方の面で賢明にならなくてはなりません。今のところ私たちはそういうことに抵抗しています。それではだめです。賢明な策とはいえません。」


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