CAFE PACIS

ユルゲンが「カフェで政治が行なわれているんだ」って言う。じゃあ、カフェで平和やるか。

ブッシュ政権のイジメで辞めていった人たち:その2

2005-10-28 14:55:12 | ニュース@海外

スーザン・ウッド/フランク・ダヴィドフ:ウッド氏は、食品医薬品局(FDA)の女性医療委員会の委員ならびに女性医療局の局長。ダヴィドフ氏は、Annals of Internal Medicine誌(米国医薬品年報) の名誉編集者およびFDAの市販薬(非処方箋)諮問委員会の国内薬品問題の専門家。ウッド氏は、ブッシュ政権の圧力により、「事後経口避妊薬(morning-after pill)」を入手し易くすべきかどうかをめぐる最終決定を再度延期するというFDAの決定に抗議して辞任。「プランB」と呼ばれるこの避妊薬の市販勧告は、すでに2003年12月、超党派の専門委員会により23対4で可決されていたのであった。同僚へのEメールで女性医療問題のFDAトップ幹部であったウッド氏は、「ここの専門家職員が、承認にむけ徹底して査定し推薦する、科学的・臨床的証拠が却下されるなか、これ以上職員として働くことはできません。」数日後、ダヴィドフ氏も同じ問題で辞任。辞表では「科学的、臨床的証拠ではなく、政治的影響のために、ここまで目に余る形でこんなに重要な決定を下しうる組織と関係しつづけることはこれ以上できません」と書いた。ウッズ氏2005年8月31日辞任、ダヴィドフ氏2005年9月辞任。

トーマス・E・ノヴォトニー:保健社会福祉省次官補および喫煙削減のための国際条約締結のトップ担当者。同氏は、ブッシュ政権幹部によれば、「協議と無関係の個人的理由から」、「降りた」とのこと。しかし、ワシントン・ポスト紙によると、「ノヴォトニー氏と話をした3人の人物は…彼が非公式に、ブッシュ政権が、間接喫煙やタバコの広告・マーケティングといった主要な問題でアメリカの立場を後退させる決定をしていたことに失望していた、と言っていた」。2001年8月1日、辞任。

ジョアン・ウィルソン:教育省リハビリ局(RSA)委員。ワシントン・ポストによれば、「同氏によるところ、同局の資金とスタッフを骨抜きにするというほとんど気づかれていない政権のやり方」ならびに盲人、聾者などの障害者の就職を促進する上で決定的な「プログラムを解体する試みに抗議して」辞任。2005年2月7日、ブッシュ政権は、すべてのRSA地域事務局の閉鎖と、スタッフ半減を発表。2005年2月8日、退職。

ジェイムズ・ザーン:ロバート・F・ケネディ2世がNation誌に寄せた記事によれば、ザーン氏は「全国的に認められた農務省研究部の微生物学者」である。ザーン氏は、「農務省の上司が、養豚産業の圧力に負けて、研究を発表しないよう命令した」と述べている。この研究は、「産業化された養豚場付近の空気中に疾病の原因となりえ、抗生物質への耐性をもつ細菌があることを確認したもの」で、「彼は、大規模養豚場が健康に及ぼす影響について情報を欲している地方の計画局や保健委員会に対しするはずであったかなりの講演を取りやめるよう圧力をかけられた」。結果、「ザーン氏は、政府に愛想をつかして辞めた。」2002年5月、辞任。

トニー・オペグラッド/ジャック・スパダーロ:2人は、「連邦測地線工学チーム」のメンバーであった。同チームは、「山頂の露天掘りで生じている有害汚水を含んだケンタッキー州の石炭懸濁池を押さえている防壁の崩壊可能性を調査するために組まれた」。環境保護局(EPA)によれば、これは、「米国東部の歴史で最大の環境問題」であった。チームの部長であったオペグラッド氏は「ブッシュ就任の日に首にされた…スパダーロ氏を除くチームのメンバー8人全員が、ごまかしの調査報告に同意の署名をした。スパダーロ氏は、他のメンバー同様、嫌がらせを受けたが署名をきっぱり拒否。2001年4月、チームを辞め、労働省の査察官に申し立てをおこなった…同氏は、休職とされたが、これは首切り前の処分である」。連邦職員として在職28年の記念日を迎える2ヶ月前、意見の内容で何年もいやがらせを受けてきた結果、スパダーロ氏は辞職。「闘いにつかれてしまった」と同氏。「この政権とは2001年の初めからたたかってきた。少し休みたいよ。」オペグラッド氏2001年1月20日解雇。スパダーロ氏2003年10月1日辞職。

テレサ・チャンバーズ:国立公園警察署長を辞任。公園警察の予算問題を報道と議会スタッフに話したことで、休職とされた。その後、CNNによると、「同氏の弁護士が(連邦職員を管理職の職権乱用から守るための独立機関である)メリット制保護委員会を通して即時復職願いを出した2時間半後」解雇された。「国民は、どの分野であれプロフェッショナルに対するこの種の口封じを心配すべきでしょう」とチャンバーズ氏は述べている。「国民として、その分野の専門家が声をあげたり、いまの公園職員が経験しているように、声を上げないことを相当心配すべきです。」2004年7月、解雇。

マーサ・ハーン:土地管理局の州局長。7年にわたりアイダホ州のほぼ4分の1に当たる1200万エーカーの管理に責任を持っていた。ブッシュ政権となって自分の権限が劇的に縮小されたことを知る。同政権が、採掘計画に対する公共の場での発言を阻止したり、従来の保護地区を環境破壊につながる事業が許される地域として開放してきたのを目撃。放牧権をめぐる意見の衝突があった後、ハーン氏は、愛するロッキー山脈西部から、「以前は存在しなかった、ニューヨーク市での仕事に」転属されるとの通知を受けた。「ショックです」。「いま精神的に参っています。まさに働き盛りだと思っていたところなんですよ。」ハーン氏は、非自発的転属か辞職のどちらかだと言われ、2002年3月6日に辞職。

アンドルー・エラー:トゥーサン・ウィークリー紙によるとエラー氏は、「魚類野生動物庁に勤めた17年の多くにおいて(フロリダの)豹保護を担当。しかし、豹たちの生息地に巨大空港をつくる計画がエラーの研究と一致せず、エラー氏は同調することも拒否したため、お払い箱となった」。「ブッシュ大統領再選の3日後に首になりました」とエラー氏。「豹が危険にさらされているかいないかについて、(魚類野生動物庁)幹部と意見が違っていたこと、彼らが自分たちの見解を裏付けるために間違った科学を利用していると指摘したことに対する明らかな報復でした。」2004年11月、解雇。

マイク・ドンベック: 23年勤めた林野部を退職。辞表のなかで、環境保護派のドンベック氏は「(ブッシュ)政権が林野部を別の方向に持っていきたいことが、はっきりと分かった」と書いた。2001年3月27日、辞職。

ジェイムズ・ファーニッシュ:保守派で、福音主義キリスト教徒で、2000年にはジョージ・W・ブッシュに投票した共和党員で、林野部の元副局長を務めた人(8つの政権にわたり30年間、林野部に勤務)。2002年、ブッシュ政権との政策上の意見の違いから辞職。「要するに(政権の)やり方が後退的だと理解した」と述べている。良心に従い、同氏は、後1年勤めれば退職金が最大になるのに辞職。そのため失った、余生ずっともらえるはずだった年間の年金は約1万ドル。2002年、辞職。

マイク・パーカー:2002年はじめ、陸軍工兵隊局長であったパーカー氏は、議会に対し、ブッシュによる予算削減は工兵隊に「悪影響」を及ぼすと証言。また、ブッシュ政権に対して「心温まる」感情は持っていないとも述べた。その直後、クリスチャン・サイエンス・モニター紙は、「同氏は、30分やるから辞めろ。でなければ首だ」と告げられた、と報道。ハリケーン・カトリーナとリタがもたらした惨事をみるなら、パーカー氏が行政管理予算局の元局長のミッチ・ダニエルズ氏と衝突していたことは、予言的である。パーカー氏は、あるとき、ブッシュ政権の予算権威者ダニエルズ氏に、「予算不足のため完全に腐食し崩れている」ミシシッピ運河の水門の鉄片を見せ、「ミッチ。水門がテロリストに爆破されるか腐食して崩れるか、そんなことはどっちでもいい。どっちでも結果は同じで、崩れさせるようなことをすれば、俺たちの責任だ」と言った、と回想している。「彼はまったく何も感じなかったよ。」2002年3月6日、辞職。

シルビア・K・ローレンス:環境保護局(EPA)に20年勤めたトップ幹部。同局では、ブッシュ政権のもと18ヶ月間、施行・順守保証局(OECA)の副局長も務めた。ローレンス氏は退職の際、「この政権が環境法の執行怠慢を続けるなか、もっと辞職が続くでしょう」、「この政権は、諸問題を膠着させ、調査を中止している。職員は引っ込んでろ、というあらん限りのシグナルを発していた」と述べた。2002年8月、退職。

ブルース・ボーラー:EPAの科学者。同氏によれば、辞職の理由は、「湿地は自然の腎臓にたとえられます。問題に真剣に取り組む科学者ならそう言います。が、(民間の)開発業者と(陸軍工兵隊)幹部は、湿地は、文字通り、汚染源だ、という彼らの意見を支持しろと要求した」から。2003年10月23日、辞職。

エリック・シェイファー:EPAの規制施行局局長を5年間務めたのを最後に、20年にわたり勤務したEPAを辞任。シェイファー氏は、ブッシュ政権がクリーン・エア法(大気汚染防止法)を施行していない問題を指摘する辞表を提出。「わずか数週間のあいだで、ブッシュ政権は、我々が長年かけて築き上げてきた環境保護対策をゼロにすることに成功しました。結果、これら原発は毎年、何百万トンもの不必要な汚染物質を撒き散らし続けます。傷に塩をすりこむつもりか、ホワイトハウスは、EPAの施行予算の削減もねらいました。自動車メーカー、製油産業、大手養豚場、製紙業といった、環境法に抵触する行為を行っていたそのほかの汚染源に対する処置としてすでに始動させていた対策の継続を困難にするものでした。ブッシュが環境などどうでもいいと思っていることがはっきりしました。環境保護法の執行にたいす敬意などそれ以下です。よって、昨年春、12年勤務したEPAを辞職しました。辞職理由は、大々的に公開した(クリスティン・トッド)ウィトマン長官あての手紙に書きました。」2002年2月27日、辞任。

ブルース・バッケイト:政府職員として30年の経歴をもつバッケイト氏は、ブッシュ政権の環境規制弱体化に失望し退職。NBCのストーン・フィリップ記者の「大気汚染に対する法を施行する上で最大の障害は何ですか?」との質問に、バッケイト氏はずばり「ブッシュ政権」と応えた。司法省環境法施行部の上級顧問を務め、EPAの大気汚染防止法施行部の部長を務めた人物がである。同氏は続けて「この政権は、大気汚染を減らすという国民の利害より、石炭燃料発電所の経済的利益を優先すると決めています」と述べた。2003年11月、辞任。

リック・ビオンディ:EPAに32年勤めたビオンディ氏は、同庁の大気汚染防止法施行部の副部長のポストを辞職。「以前のような自由裁量権はなくなり、ブッシュ政権は成果を挙げる上での仕事にどんどん介入してきました。問題がこれまでと比べかなり慎重に検討されるようになることを示唆することがありましたし、裁判を起こすには、正当性を裏付ける事由がずっと多く必要になっていました」と同氏は述べている。2004年12月、辞任。

マーティン・E・サリバン/リチャード・S・ラニアー/ゲイリー・ヴァイカン:ホワイトハウスの文化財諮問委員会メンバー。バグダッドのイラク遺跡博物館の略奪に抗議して辞任。委員会委員長のサリバン氏は辞表で、「悲劇が阻止されなかったのは、アメリカが行動を起こさなかったためである」と書き、ラニアー氏は「イラク侵略ならびに文化遺産に関する、政権の完全なる気配りと事前の考慮の欠如」を厳しく非難。2003年4月14日、辞任。

 さて、ハリケーン・カトリーナの後、連邦緊急事態管理局(EFMA)と同局を仕切っていた任命者に注目が集まり始めた。かつてFEMAに勤めていたプロの職員たちはどこにいるのであろう?2004年、FEMAに17年勤め、同局で国家公務員労組委員長であるプレザント・マン氏は、インディウィークにこう語っている。

 「去年から、基本的な計画を立ててきた人たちが本当にたくさん辞めています。機関の知識の多くが失われました。退職できる人は去ったし、その上、多くが他の省庁に転属しています。」

 この大量人材流出の主要原因は、FEMAの現状にたいする幻滅感だと言われていた。実際、米国公務員連合が2004年2月におこなった調査では、アンケートに答えた80%の現役職員が、ブッシュが作った国土安全保障省の管轄になって以来、FEMAは「以前と比べ貧弱になった」と応えていた。多かれ少なかれ、他の省庁もFEMA同様の目にあっている。アマンダ・グリスコム氏がグリスト・マガジンに寄せた記事によれば、環境的責任を求める公務員の会(Public Employees for Environmental Responsibility)のジェフ・ルーシュ事務局長は、ブッシュ政権になってから、省庁で働く科学者の転属が「異常に高い」割合で起こっていることに触れている。「不都合な答えを出せば、科学者としての自殺行為になる」と同氏は述べている。

 ここに挙げた人たちは、ブッシュ政権犠牲者の一部に過ぎない。この政権の戦争、予算、政策、計画の結果、キャリアを破壊され、中断され、マイナスの影響を受け、混乱に巻き込まれた政府職員の数を確定することは不可能である。どの政権であれ犠牲者はつきものである。しかし、待遇や政策に対する辞職理由、不満、怒りがここまで公開されるという点で、ブッシュ政権の成果は近年例を見ない。ここに挙げた犠牲者リストには、圧力を受け辞任したり退職した人たちの中でも最もよく知られている人たちが入っている(必ずしも、最大の被害を受けたという意味ではない)。おそらく、ブッシュ政権の下、すべてのレベルにおいてどれだけの政府職員が犠牲になっているか把握している人はいないであろう。ここに名が挙がった人たちは、数えられていない部隊の中でも私たちが知っているほんの一部に過ぎない。

〔この記事の構想をくれ、「任務を託して」くれたレベッカ・ソルニットに特にお礼を申し上げます。〕

ニック・タース:コロンビア大学の疫学部勤務。TomDispatch.com.の副編集長かつ調査担当。ロサンゼルス・タイムス、サンフランシスコ・クロニクル、ヴィレッジ・ボイスなどに寄稿。TomDispatchでは軍産複合体、国土安全保障問題などの記事を書いている。


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